ポルシェ「カイエン」は同社初のSUVとして、2002年に誕生しました。世界的名声を持つスポーツカーメーカーのポルシェがつくるSUVだけに、当時、自動車業界ならずとも話題が沸騰。そのデビューから瞬く間にスターダムへと駆け上ります。

車名の「Cayenne(カイエン)」は赤唐辛子の一種に由来し、当時CEOだったDr.ヴェンデリン・ヴィーデキング氏いわく、「カイエンはスパイシーさ、冒険、生きる喜びと同義語である」と表現。また、“新しいカタチのスポーツカー”と意義づけ、「日常の景色が変わるSUVが『カイエン』である」と発表しました。

ポルシェ カイエン
Porsche
ポルシェ カイエン
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デビューからおよそ20年の歴史があり、現行型で3代目となる「カイエン」ですが、今もその人気に陰りは見えません。「カイエン」の2022年のセールスは9万5604台を記録し、ポルシェブランドの中で1位を獲得。これに続く2位は弟分にあたる「Macan(マカン)」も8万6724台という数字なので、依然としてポルシェSUVの人気の高さを証明していると言えるでしょう。

ポルシェ史上、最大級の広範な製品アップグレード

さて、そんな背景を持つ現行型カイエンは2017年に発表され、翌2018年より本格的ローンチが始まりました。そして今回、約5年の歳月を経てついに新型が日本上陸。正確を期せばマイナーチェンジモデルとなるのですが、「ポルシェ史上、最大級の広範な製品アップグレード」を行ったというその進化の内容を見ていきましょう。

一目、見た印象はボンネットやフェンダーアーチのプレスラインが少し変わったかな? という感じですが、最も目を奪われるのはそのインテリアです。もしも現行型オーナーが新型に触れたら…。目まいがしそうなほどに個性的な風景に映るかもしれません。

ポルシェ カイエン
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圧巻なのは、同社のフル電動スポーツカー「‎Taycan(タイカン)」の要素を取り入れたという、曲面フリースタンディングデザインを採用したディスプレイモニターでダッシュボード全体に伸びています。従来は中央のモニターで操作していたエアコンやオーディオビジュアルも、助手席前のモニター(パッセンジャーディスプレイ ※オプション設定)で操作することが可能です。

無論、ポルシェ自身が新しいカタチのスポーツカーと謳(うた)うだけに、ドライバーズファーストな進化も見逃せません。完全にデジタル化されたコックピットは曲面ディスプレイの採用により、目の前のメーターパネルのフードカバーが不必要に。

表示内容は装備内容によりさまざまですが、スピードメーターやレブカウンター、ナビゲーションなどのコネクトメニュー、3D表示の安全運転支援システムなど最大7種類も用意されています。また、さすがポルシェといわざるを得ないのが、「911」系から脈々と続く5連メーターパネルデザインを表示させる“クラシックモード”の採用でしょう。とにかく、それが実にニクイ演出なのです。

ポルシェ カイエン
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電動化モデル「Eハイブリッド」も

デジタル時代とは言え、レバー式からスイッチ式に変更されたギアセレクター(メーターパネルとセンターディスプレイの間に位置)にも注目です。デジタル時代だけにタッチディスプレイで操作させることも可能なはずですが、触感を伴う操作で安全性に配慮したデジタルとアナログの融合が、実にポルシェらしい熟慮された結論だと思います。

パワートレインも大きく変わりました。ガソリン車はエントリーモデルとなる「カイエン」に搭載される3LのV6ターボエンジンのパワーが向上し、最高出力353ps(+13ps)、最大トルク500Nm(+50Nm)を発生。また、「カイエンS」は従来型V6エンジンから4LのV8ツインターボへ変更。最高出力474ps、最大トルク600Nmを発生します。

電動化モデルの「Eハイブリッド」は、バッテリー容量を17.9kWhから25.9kWhに拡大することでEVモードの走行距離を最長90kmまで伸ばしています(※WLTPモード)。組み合わされるガソリンエンジンは3LのV6で、システム最高出力470ps、システム最大トルク650Nmを発生。ちなみに0-100km/hで比較すると、「Eハイブリッド」が4.9秒でラインナップ中最速となります。

なお、新型「カイエン」のボディタイプは従来通り、利便性の高い「カイエン」とスポーツフォルムの「カイエンクーペ」が用意されています。どちらを選ぼうともパーソナル性の高いポルシェのSUVであることに変わりはありません。

ポルシェ カイエン
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