[目次]

▼ 猫様の大好物「ちゅ~る」製造元で入社辞退続出との衝撃報道

▼ 想像以上のボロ家、新入社員にあまりにもむごい仕打ち

▼ ちゅ~る愛好者の嘆きと憤り、世間が思っているより深い!

▼ 「ちゅ~るちゅ~る」はもう歌えない、絶対的な神話に陰りが……

※2024年4月20日に「ダイヤモンド・オンライン」に掲載された、武藤弘樹氏(フリーライター)による記事の転載になります。


猫様の大好物「ちゅ~る」製造元で
入社辞退続出との衝撃報道

猫の関係者なら誰もが一度はお世話になったことがあるだろう「CIAO(チャオ)ちゅ~る」という猫のおやつがある(犬用もある)。

スティック型の袋を軽く握ってやるとペースト状の中身が先端からニュウーと出てくる。皿に全部出して猫様に「召し上がれ」と供してもいいが、人間がちゅ~るを手に持って小出しにし、先端からどんどん出てくるちゅ~るを猫が舌を一生懸命動かして舐める…というあげ方もある。

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その猫様の様子はちゅ~る以外でなかなか見られるものではなく、何より猫様とコミュニケーションを取れている感じが芳しい。

そしてこのちゅ~るは、何か神秘的な、この世のものならざる成分でも入っているのかというくらい、猫様を魅了する。猫様たちの好みは千差万別であり、またその好き嫌いの程度が激しい。自分がおいしくないと思う食べ物はどれだけ空腹だろうと決して食べようとしない筋金入りな生き物であるところの猫様は、しかしちゅ~るだとかなりの確率でほぼ確実にお気に召されて、ちゅ~るへの欲に突き動かされた結果、常軌を逸した挙動を示す猫様も珍しくない。

そのちゅ~るを製造しているいなば食品が、目下大炎上している。

『週刊文春』が最初に記事にした「ボロ家ハラスメント」と呼ばれる報道がその主だった原因であり、これによれば「一般職採用新入社員19人のうち17人が入社辞退」という異例の事態となったそうである。

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動揺を余儀なくされているのは、全国の猫関係者である。ちゅ~るの汎用性たるや凄まじく、日々のおやつとしてのみならず、保護猫・地域猫の警戒心を緩和するツール、食事の難しい猫の栄養補給、どこかに隠れた家猫をおびき出すエサなどに使えるものであったからだ。

筆者の家でも粉状のサプリをちゅ~るに混ぜて毎日1本供している。もはや猫様の生活になくてはならない存在である。

いなば食品の炎上とちゅ~るの品質は無関係ではあるのだが、炎上の内容がちょっとゴリッとした異物感ある感触を伴っていて、猫関係者としては看過するのが難しかった。

想像以上のボロ家
新入社員にあまりにもむごい仕打ち

報じられている「ボロ家ハラスメント」とはどういうものか。要約すると、「真新しい社員寮を社宅としてあてがわれると聞かされていた新入社員たちが、実際に案内されたのは雨漏りする古い一軒家数棟で、そこで数人ずつに分かれて共同生活をするように指示された――」というのである。

こう、文章だけで説明を見ると「ふんふんなるほど。ひどいことをするものだ。それは許せないだろうな」と思われるのだが、文春がアップしている実際の部屋の様子の画像を見ると、一歩進んだ同情や憤りを感じることになろう。

画像が伝えているのは、想像を上回るボロい家であり、新生活に向けての緊張と期待を胸に新築社宅を想像していた新入社員への仕打ちとしては、あまりにもむごい。

また、入社直前に募集要項から約3万円低い給与額を提示された(22.6万円→19.645万円)とも報じられており、こういった経緯から多くの新卒が入社辞退に至ったとのことである。

報じられている内容がどこまで事実かはしかと見極める必要があるが、「ボロ家」の件については、いなば食品が「由比のシェアハウス報道について」という釈明文を公式サイトに載せている。「ご指摘の点につき、誠意をもって改修に全力を挙げております」とあり、少なくとも報道の一部を事実と認めていることは間違いなさそうである。

この釈明文の説明は少しわかりにくいのだが、諸事情によって不手際があったが、どうやら現在、新卒者はHPで紹介されているキレイな社宅に案内されていると読める。

【参考】由比のシェアハウス報道について
https://www.inaba-foods.jp/topics/detail/1068

なお、この釈明文を巡ってもひと悶着あって、当初掲載されていた文には、2月に亡くなった副社長に不手際の責任をかぶせるようなトーンがあったため、さらなる炎上を招いた。現在アップされているのは、この部分が書き直された釈明文である。

また、募集要項と入社前に提示された給与金額が異なっていた件については、『NEWSポストセブン』の取材にいなば食品が答える形で、「新入社員の一般職の方が事実誤認をされたのでは」という内容の説明をしている。

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これには入社辞退をした新入社員にもさらなる反論があるようで、詳しいことはそちらの記事を参照されたい。

【参考】
いなば食品、入社辞退者が憤る内定後の『一般職採用です』告知「ボロ家」よりも許せなかったこと「待遇わからず」「想定していた働き方と全然違う」(2024年4月17日/NEWSポストセブン)
https://www.news-postseven.com/archives/20240417_1956977.html?DETAIL

なおその後、社長自らが入社辞退をした人たちの元を直接訪れて謝罪してまわっているとのことである。

ちゅ~る愛好者の嘆きと憤り
世間が思っているより深い!

猫関係者にとって、ちゅ~るは給餌などに便利な商品であることはすでに説明したが、ちゅ~るの恩恵はこれに留まらない。猫と人との距離を近づけてくれる架け橋でさえあったのだ。

だからこそ多くの飼い主たちは、これを開発・提供してくれているいなば食品に感謝や尊敬の念を覚えていたのである。

さらに、ちゅ~るのCMソング付PVもよかった。メロディーがかわいくキャッチーで、様々な猫がそれぞれちゅ~るを舐めて楽しんでいる様子が次々と映されて、視聴する人をハッピーな気分にさせてくれた。

「ちゅ~るちゅ~る」は
もう歌えない
絶対的な神話に陰りが……

筆者も子をあやす際によくそのPVとともに「ちゅ~るちゅ~る」と歌ったものである。すなわちちゅ~るは、猫関係者に一目置かれるひとつのブランドとして確立していたのである。

しかし、報じられている内容が事実だとすれば、今回の件についての対応は不誠実としかいいようがない。

かくして全国の飼い主たちは、SNSで以下のような内容の感想を漏らしている。

「うちの猫には悪いけど、もうちゅ~るは買えない」

「そんなひどい企業にお金を使いたくない。ちゅ~る後発の類似商品にもいいものはたくさんある」

「推しが不祥事を起こしたときのファンの気持ちがわかった」

「いい加減なことをする会社なら、ちゅ~るの製造もいい加減に行われているのではないか」

テンションや気持ちの強さはそれぞれだが、ショックを受けている点は共通している。

「それでもちゅ~るを買う」という声の割合が極端に少なく感じられるのは、それだけ猫様に対してピュアな気持ちで向き合いたいと思っている飼い主が多いということであろうか。愛猫の口に入れるものには万全の配慮を施したく思うのが、飼い主の心理である。

とはいえ、SNSに気持ちを表明したいと思うほど本件に心動かされていない層は、今後もちゅ~るを買うことをためらわないかもしれない。

lazy fat cat sleeping on the couch
Lulamej//Getty Images
※写真はイメージです。

筆者個人は、おそらく今後もちゅ~るを買うが、筆者の中の「ちゅ~る神話」とでもいうべき絶対的な信頼感には陰りが生じてしまったので、他の類似商品をときおり試すくらいはしそうな気がしている。

「被害者」と言っていいであろう、今回いなば食品に翻弄された内定者には同情するばかりだが、いちちゅ~るファンとしては好きだったものをこうしたネガティブな理由で応援できなくなることは単純に悲しい。

いつか再びちゅ~るの歌を楽しい気分で歌える日を迎えられるよう、いなば食品には改善を期待したいところである。

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