「Do you know “Naatu”（ナートゥをご存じか）？」
このセリフの翻訳がtwitterトレンドに上がるほど日本でも大ヒットし、米アカデミー賞作品賞にもノミネート。さらにリアーナやレディー・ガガを抑え、同歌曲賞を獲得したインド映画『RRR』。この作品で英国の悪の化身スコット・バクストン総督を演じたレイ・スティーヴンソンが亡くなったことが、2023年5月22日付で「BBC」をはじめとする複数のメディアにより報道されました。
この4月に『スターウォーズ』のスピンオフ作品『Ahsoka（原題）』のイベントに出席し元気な姿を見せたばかりのスティーヴンソンでしたが、59歳の誕生日を4日後に控えた日に彼は亡くなったと発表されています。
米国を拠点に広報エージェントとなっている「Viewpoint」はこの報道を認めながらも、日本時間2023年5月23日正午時点では死因などの詳細は明らかではないということ。同「BBC」などが伝えるところによれば、亡くなったのは米伊合作の新作映画撮影中であったとされています。
イタリアの「ラ・レプッブリカ」紙や「ハリウッド・リポーター」によれば、イタリア・イスキア島でアクション映画『Cassino in Ischia』の撮影中に突然体調を崩し、入院。入院後にさらに容体が悪化したのち亡くなったということ。
北アイルランド出身の正統派俳優
彼はジョシュ・オコナー、ナオミ・ハリス、そしてオスカー女優尾リヴィア・コールマンらを輩出した、ブリストル・オールド・ヴィック演劇学校出身。いくつかのテレビ作品に出演したのち、トマス・ハーディ原作の文芸テレビ映画『帰郷／荒れ地に燃える恋』（1994）でキャサリン・ゼタ・ジョーンズの相手役に抜擢されました。
HBO『ROME』で世界的認知が広がる
2004年にはキーラ・ナイトレイ、クライヴ・オーウェン主演の『キング・アーサー』で円卓の騎士のひとりダゴネットを演じました。その後、彼の名を一躍世界的なものにしたのが、2005年のHBO歴史大作『ROME［ローマ］』。ここでティトゥス・プッロ役を手にし、トビアス・メンジーズ（『ザ・クラウン』のチャールズ役）、キアラン・ハインズ（『ベルファスト』で米アカデミー助演女優賞候補）らと肩を並べる存在感を見せました。
『マイティ・ソー 』シリーズ、『パニッシャーウォーゾーン』などで活躍
マーベル作『パニッシャーウォーゾーン』（2008）でタイトルロール（作品名と同じ名前および愛称をもつ役）を演じると、『マイティ・ソー』シリーズではヴォルスタッグ役で日本の浅野忠信氏らと共演。ポール・W・S・アンダーソン監督『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』（2011）ではポルトス役、『ダイバージェント』（2014）、『G.I.ジョー バック2リベンジ』（2013）では悪役コブラの一員としてイ・ビョンホンと共演。リュック・ベッソン製作『トランスポーター イグニション』（2015）では主人公の父親役などなど、いわゆるファンタジー系のブロックバスター作品において、脇を固める俳優として多数の仕事をこなしてきました。
『RRR』の悪役で再認識進む
そして2023年のアワードシーズンに『RRR』で再注目。インド独立の英雄をもとにしたファンタジー映画で、宗主国大英帝国の悪の化身を憎々しく演じ存在感を見せつけてくれました。その後も出演作は続き、それまで声の出演であった『スターウォーズ』シリーズのスピンオフ実写『Ahsoka』の撮影を控えていたところでした…。冥福を祈ります。
映画『RRR』の公式ツイッターには、「チーム全員にとって、あまりにショッキングな出来事です。レイ・スティーヴンソン、安らかに眠ってください。『サー・スコット』、あなたはいつまでも私たちの心の中に居続けます」というキャプションとともに投稿されています。
