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第95回アカデミー賞授賞式ベストシーン&事件簿12

オスカーは毎年ハプニングがつきもの。アカデミー賞2023、事件は現場で起きていました。

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ハリソン・フォード, キー・ホイ・クァン, harrison ford, ke huy quan
ABC//Getty Images

アジア系アメリカ人のコインランドリー経営者夫婦が超人となり、マルチバースで悪の化身となった娘と闘う『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞を含む7部門を制し、歴史的な回となった第95回アカデミー賞。

オスカー授賞式はハプニングが毎年話題になるもの、今年は同じくらい感動的シーンであふれていました。そこで、選りすぐりのベストハプニング&感動シーンをお届けします。

1

キー・ホイ・クァン、ブレンダン・フレイザー一家にフォトボム

95th annual academy awards press room
Rodin Eckenroth//Getty Images

助演男優賞受賞者が、主演男優賞ウィナーの記念撮影にフォトボムを仕掛けた瞬間が「かわいい!」と話題。

フレイザーは前妻との間にもうけた3人の子どものうち、リーランド・フランシス、ホールデン・フレッチャー、そして現在のパートナー、ジャンヌ・ムーアと一家そろって撮影。そこにいたずらを仕掛けたのがクァン。

この2人、1992年制作『原始のマン』で共演してからの仲。ともに味わったハリウッドで大きな挫折、傷ついた経験を考えると感慨深い一瞬です。

2

キー・ホイ・クァンの受賞にプレゼンターが先に涙

95th annual academy awards press room
Mike Coppola//Getty Images

助演男優賞・女優賞のプレゼンターは2022年度の受賞者のアリアナ・デボーズ(右)とトロイ・コッツァー(左)。デボーズは助演男優賞の封筒を開いた途端、涙声になってキー・ホイ・クァンの名前を読み上げました。

『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)で、デボーズはLGBTQの一員であることを公表する有色人種女性として、初のオスカーを手にした人物。ろう者俳優として初めて助演男優賞を獲得したトロイ・コッツァーと3人が並ぶ様子は、より開かれた映画産業の未来を予感させるものでした。

3

盛大すぎるハッピーバースデー

the 95th annual academy awards show
Rich Polk//Getty Images

短編実写映画賞を受賞したのは、『An Irish Goodbye』。監督のひとり、トム・バークレーが「この賞、実は本日2番目に大切なことなんです。なぜなら、今日は彼の誕生日だからです」と、マイクの横に呼び寄せたのは、作品の主人公兄弟のひとりを演じたダウン症のある俳優ジェームズ・マーティン。イギリスのテレビネットワーク「itv」によれば、この作品に起用される数カ月前までアイルランドのスターバックスで働いていたとのこと。

「彼は豹柄のスーツジャケットを着て、ここハリウッドに参上したわけですが、私たちは残りの時間を使ってジェームズのためにぜひハッピーバースデーを歌いたいと思います」と促すと、ハリウッドのAリストセレブたちが一斉にお祝いする状態に。

登壇した4人は、この後、舞台裏で号泣するシーンがカメラに収められています。

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4

プーチンに狙われたナワリヌイ氏の妻、世界に向けて訴える

95th academy awards show
Myung J. Chun//Getty Images

長編ドキュメンタリー賞を獲得したのは、『ナワリヌイ』。長年プーチン政権内の腐敗を暴いてきたロシアの弁護士アレクセイ・ナワリヌイ氏を追いかけた作品です。

登壇したのは妻のユリア・ナワルナヤ(Yulia Nvalnaya)さん、娘のダーシャ(Dasha)さん、息子のザハール(Zahar)さん。
「私の夫は真実を語って投獄されました。そして、民主主義を守って投獄されています」と、プーチンの独裁政権によって不当逮捕されもっとも厳しい独房に入れられているという状況を世界に向けて訴え、最後に「心を強くもって、マイ・ラブ」と夫に向けてメッセージを発しました。

5

世界を席巻する“ナートゥ・ナートゥ”生ダンス

the 95th annual academy awards show
Rich Polk//Getty Images

日本でも大旋風を巻き起こし、作品賞候補にもなったインド映画『RRR』。インド独立に影響を与えた実在の人物2人を主人公に、歌とダンスと筋肉と森の動物たちが入り乱れるさすがのトリウッド映画といった出来栄え。リピート鑑賞する人が続出している作品中でとりわけクセになるとSNSが盛り上がっているのが、「ナートゥをご存じか?」のセリフで始まる“ナートゥ・ナートゥ”のダンス。

とにかく激しすぎると評判のダンスが、なんとオスカーの壇上で再現されました。生中継で披露されたその圧巻の集団舞踊の後、レディー・ガガやリアーナを抑え、インド映画史上初、そしてテルグ語で歌われる曲として初めてアカデミー歌曲賞を獲得しました。

そして、背景に再現された劇中そっくりの屋敷…。ウクライナにある邸宅で、ロシアの侵攻が開始される前だったからこそ撮影が可能になったものだそうです。 
 
[訂正:2023.3.18]『RRR』はテルグ語作品。「ボリウッド映画」ではなく「トリウッド映画」でした。訂正しお詫びいたします。

6

マララさん、くだらない質問に困惑

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Jimmy Kimmel, ‘Cocaine Bear’ make Malala Yousafzai uncomfortable at 2023 Oscars | New York Post
Jimmy Kimmel, ‘Cocaine Bear’ make Malala Yousafzai uncomfortable at 2023 Oscars | New York Post thumnail
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短編ドキュメンタリー賞の候補作、『Stranger at the Gate(原題)』に製作総指揮という形で関わっているマララ・ユスフザイさん。

アメリカの海兵隊員が、モスクへのテロを画策したことで起こる驚きの展開を追ったもの。少女時代にテロの標的にされ、一命をとりとめたことで知られるノーベル平和賞受賞者に、ジミー・キンメルが「ハリー・スタイルズはクリス・パインに唾を吐いたと思いますか?」と質問。彼女は困惑した顔で、「私は平和に関してのみ話します(I only talk about peace)」と回答しました。

どこまでが脚本にあったことかは不明ですが、2023年、会場の空気が明らかに一瞬冷やりとした瞬間でした。

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7

レディー・ガガ、ほぼノーメイクで熱唱

hollywood, california march 12 lady gaga l performs onstage during the 95th annual academy awards at dolby theatre on march 12, 2023 in hollywood, california photo by kevin wintergetty images
Kevin Winter//Getty Images

『ジョーカー』続編の撮影中で、「十分なパフォーマンスができない」と『トップガン マーヴェリック』で歌曲賞候補となりながら、登壇しないことがアカデミー賞プロデューサーのグレン・ワイスにより伝えられていたレディー・ガガ。ところが本番で突如、生歌を披露。しかも、レッドカーペットでしっかりとつくり込んでいたヘアメイクを(もちろんドレスも)取り去り、ほぼノーメイクかつTシャツとデニムといういで立ちで臨みました。楽器も極シンプルな構成で、歌唱スキルを見せつけてくれました。

8

ミシェル・ヨー、オスカー史上初、アジア系主演女優賞受賞者に

95th annual academy awards press room
Rodin Eckenroth//Getty Images

1936年にノミネートされたマール・オベロンから87年の時を経て、ようやくアジア系オスカー主演女優が誕生しました。

彼女はまた、マール・オベロンが当時マイノリティ人種であることを隠していたことを考えると、実質的には唯一のアジア系主演女優賞候補と言えます。

「今夜これを観ている私のような(アジア系の)少年少女たちにとって、これは希望と可能性の灯台です」というスピーチ通り、厚い「ガラスの天井」を打ち破るのに長すぎる時間がかかりました。そしてこの日、マレーシア出身のミシェル・ヨーが米国のアジア系移民として、俳優になることを目指す子どもたちに大いなる指針を与えてくれたのです。

9

主演女優賞スピーチ後の多様性を象徴する降壇シーン

95th annual academy awards show
Kevin Winter//Getty Images

ミシェル・ヨーの主演女優賞を発表したプレゼンターは、2022年の受賞者で貧困白人家庭出身のジェシカ・チャステインと、有色人種女優として自認する初の同賞受賞者となったハル・ベリー。3人の異なる人種の女優が肩を組み、そろって降壇する姿に胸アツ…。

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10

またもオスカーに嫌われたミシェル・ウィリアムズ

95th annual academy awards arrivals
Jeff Kravitz//Getty Images

一度も受賞しないままノミネートだけ重ねた記録は、グレン・クローズとピーター・オトゥールが持つ8回が最高。2023年、4位タイとなる5回を残念ながら記録してしまったのが、ミシェル・ウリアムズ。同じ名前を持つミシェル・ヨーが、初ノミネートで初受賞した姿を見つめる彼女の若干寂しそうな顔がカメラに抜かれてしまいました。

11

”反トランス”に「NO」

ダニエルズ
Gilbert Flores//Getty Images

監督賞を獲得した、新たなクィア映画でもある『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダニエルズ。ダニエル・シャイナート(右)は受賞スピーチで、「両親に感謝します。不快なホラームービーや変態コメディ映画をつくっても、子どもの頃にドラァグな衣装を着ても、決して私の創造力をつぶさなかった。それらは、誰も傷つけないのですから…」と語りました。

これは現在アメリカ全土で勢力を伸ばし、政治やメディアの問題にも発展しているトランスフォビア(トランス嫌悪)やLGBTQグルーミング陰謀論(※)について語っているのは明らか。トランスジェンダー、特に女性に移行することを望む男性がトイレなどに入ることを許せば、女装した男性による犯罪が増えるという主張がもっともらしく、トランスジェンダーの人々を公共施設から排除する差別につながっている事態に対し、明確にNOを突きつけたものと言えるでしょう。
 
※ LGBTQ活動家はクィアな子どもたちをサポートするふりをして、性的に懐柔(grooming)しようとする性的虐待者たちであるとする陰謀論。

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『インディー・ジョーンズ』の2人、アカデミー賞での邂逅

キー・ホイ・クァン, ハリソン・フォード, harrison ford, ke huy quan
ABC//Getty Images

作品賞のプレゼンターはハリソン・フォード。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が受賞したことで、壇上でのハリソン・フォードとキー・ホイ・クァンの抱擁が実現しました。Aリストスターと初仕事に臨む子役という形で出会った『インディー・ジョーンズ 魔宮の伝説』(1984)の撮影から、およそ40年の2ショットに世界中のSNSが沸きました。

アカデミー賞

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