クリス・ロックは
あの平手打ち事件に関して
ステージ上で触れていた…

現地時間2022年3月27日のアカデミー賞授賞式で、突然ステージに上がったウィル・スミスに、プレゼンターとして賞を授与するべくスピーチしていた顔を(平手で)殴られて以来、ロックはこの話題に関して長いこと沈黙を守っています。そんな人気コメディアンである彼は、ステージツアー“エゴ・デス・ワールド・ツアー”(2022年4月2日~同年11月20日の予定)で全国を回っていますが、そこで観客に向け、あの平手打ち事件に関してわずかですが口にしていたようです

それは2022年8月28日日曜日の夜、アリゾナ州フェニックスでの公演でのこと…。「ロックが、2023年のアカデミー賞の司会を依頼されたが断った」と観客に向けて語ったと、地元紙「アリゾナ・リパブリック」が報じています。

さらに、「アカデミー賞に復帰することは、犯罪現場を再び訪れるようなものだ…」と続けて語ったというロック。さらに某企業のスーパーボウルのCM出演のオファーも受けたものの、「これもすぐに“ノー、サンキュー”と断った」と言っています。さらにロックはスミスの平手打ちに関して、「確かに痛かった」「彼は僕より大きいんだ」「ネバダ州(※1)は俺とウィル・スミスの喧嘩を認めないだろうね」と、ジョークを飛ばしたそうです。

なぜ今になって? と疑問が湧きますが、「このロックのコメントは、“奇妙だ”と評判になっているウィル・スミスによる例の謝罪ビデオを受けてのものだ」、と考えられています。

2022年7月下旬にスミスは、自身のYouTubeチャンネルで「クリスに連絡を取ったが、彼から返ってきたメッセージの内容は『まだ話す準備ができていない、話す準備ができたら連絡を取る』というものだった。だからクリス、君に謝るよ」「私の行いは、決して受け入れられるものではありませんでした」などと発言しています。

世界が注目した
スミス謝罪後のロックの動向

すると世界は、これに対するクリスの反応に注目します。その同日の夜、アトランタのフォックスシアターでの公演中にこの事件について言及したことに関して、セレブ情報を発信する週刊誌『ピープル』のウェブ版が報じています。

彼はステージ上で、「みんな『自分のほうが被害者だ』って主張したくなるものさ…でも、誰もが『自分は被害者だ』って主張したなら、誰も本当の被害者の声を聴くことはなくなるんだろうね」「シュグ・スミス(※2)に引っ叩かれた次の日だって、僕は仕事に出かけたよ。僕には子どもも(複数)いるからね…」とトーク。この発言は、観客からの声を受けての言葉とはいえ、スミスへの反論の続きだったとしか思えません。

さらにのちの同ツアーでは、「言葉で痛さを感じてしまう人は、顔を殴られたことがないんだろうね」とも発言しています。

※1 ウィル・スミスがモハメド・アリを演じアカデミー主演男優賞候補となった『ALI アリ』(2001年)にかけた発言。1980年、引退したアリが復帰することを認めたのがネバダ州アスレチック・コミッション。
※2 ストリートギャングのブラッズ出身で、敵対レーベルへの暴行や2パックやノトーリアス・B.I.G.の殺害事件への関与などなど黒い噂は絶えない人物シュグ・ナイト(デス・ロウ・レコード創設者)とウィル・スミスの名を重ね合わせたと思われます。ちなみにシュグ・ナイトは、1996年にマイク・タイソンの試合観戦後、何者かに銃撃された負傷し、さらに2005年にも銃撃され瀕死の重傷を負います。そして2015年1月には、ひき逃げ死亡事故を起こして殺人容疑で逮捕され、現在は収監中。

ウィル・スミス
Myung Chun//Getty Images

子どもも見ている時間帯の生放送中のカメラ前で、リアルな暴力シーンを見せてしまったことは許せることではありません。あの事件でウィル・スミスは今後10年間、アカデミー会員資格ははく奪され、彼自身が企画していたいくつもの映画製作もキャンセルされました。一方で「CNN」などのメディアは、「妻ジェイダの容姿をいじるジョークを放ったクリス・ロック側も、擁護されるべきではない」という論説も出ています。ロックがあのジョークを今後どう処理するのか……。あの事件の終わりは、まだまだ見えそうにありません。