人気バンド、ガービッジのフロントマンを務めるシャーリー・マンソンは2015年、英音楽メディア「NME」のインタビューでガービッジの1995年のヒット曲「Only Happy When it Rains」について、「90年代に勃興したグランジ(シアトル発祥のロックのジャンル)の空気をなんとなく取り入れていた」と振り返りました。
「当時、私たちが大いに感じていた『悲惨主義』を皮肉るようなものへと発展させたの…あのころは自虐的ユーモアという要素が間違いなく存在していたし、それは私たち誰もが、自らの『惨め』に近いものであったという事実にも気づいたから…」と、マンソンは語りました。
ガービッジの他にも、90年代は女性をフロントに据えるバンドが数多く出現し、グランジミュージックの男性的な陰鬱さをはねつけ始めたころでした。
90年代を舞台にした話題作『キャプテン・マーベル』の最大の面白さの一つは、当時の時代が持っていた精神を、単なるノスタルジーに終わらせず、そのまま甦らせることができた点です。
マーベル作品で初の女性ヒーローものであるこの作品は、ガービッジやTLC、ノーダウトといったバンドが、「男性ホルモンたっぷりでヘビー」な初期のトレンドに立ち向かっていった90年代という時代を、きちんと描き出すことに成功しているのです。
『キャプテン・マーベル』では、ここぞという重要シーンにガービッジなどのサウンドが登場します。
ブリー・ラーソン扮するキャロル・ダンバースの最後の戦闘シーンでは、ノー・ダウトの「Just a Girl」が流れ、90年代のオルタナティブロックをけん引したバンド、ナイン・インチ・ネイルズのロゴ入りシャツを着たキャロルが、悪者からバイクを盗んで逃げ去るシーンの後に「Only Happy When It Rains」が挿入される…、といった具合です。
マーベル映画にとっての音楽とは、壮大なオーケストラ音楽のようにアクションを補完する演出的な役割をはたすものでもあり、80年代を舞台にした映画『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』のサウンドトラックのように、付き添って鑑賞する親世代をも楽しくさせるような、オマケを提供するものでもあるのです。
『キャプテン・マーベル』は、サントラが単なるテーマ曲的な役割以上の意味を持っているという点では、初めての作品となるでしょう。そんな『キャプテン・マーベル』は、2019年3月15日(金)より全国公開予定です。
『キャプテン・マーベル』のサウンドトラックに収録されている、懐かしの曲たちを聴いてみてはいかがでしょうか:
Salt-N-Pepa – "Whatta Man"
Elastica – "Connection"
Garbage – "Only Happy When It Rains"
R.E.M. – "Crush With Eyeliner"
TLC – "Waterfalls"
Des'ree – "You Gotta Be"
Nirvana – "Come as You Are"
No Doubt – "Just a Girl"
R.E.M. – "Man on the Moon"
Hole – "Celebrity Skin"
From Esquire US
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です。