この記事をざっくり説明すると…

  • アメリカ運輸省道路交通安全局(NHTSA=National Highway Traffic Safety Administration)による、少量生産の自動車メーカーのための最終規定案が、年明け早々に公表されました。
  • まだ正式発表ではありませんが、認可が決定すれば往年の名車のレプリカがアメリカ国内で販売されることになります。
  • レプリカ車の販売については、自動車メーカー各社はNHTSA、アメリカ環境保護庁(EPA=Environmental Protection Agency)カリフォルニア州大気資源局(CARB=California Air Resources Board)の認可申請を行なうことで、年間325台を上限としてアメリカ国内での製造販売が認められることとなります。

 2021年1月15日、アメリカ輸送省道路交通安全局(=NHTSA=National Highway Traffic Safety Administration)は、新生デロリアン・モーター・カンパニー(DMC)などの企業による実走可能なレプリカ車の生産を認めるための102ページにわたる規定内容を完成させたことを発表しました。

 この新たな規定が施行されれば、LVVM(Low Volume Vehicle Manufacturers)と呼ばれる少量生産車メーカー各社は、年間325台までのレプリカ車の製造販売が認められることとなります。社名を残したまま全く新しい企業として生まれ変わったDMCもまた、「デロリアン」の愛称で親しまれている名車「DMC-12」の最新レプリカの製造を再開することができる、というわけです。

 映画『フォードvsフェラーリ』に登場した「Cobra(コブラ)」をつくったことでも知られるスーパーフォーマンス(Superformance)による、「コブラ(Cobra)」や「デイトナクーペ(Daytona coupe)」といった名車の完全レプリカの販売も可能となります。モーガン(Morgan)もすでに販売を待つばかりのヴィンテージカーの製造に着手し、認可のときを今や遅しと待ち構えています。この知らせには、日本のクルマ好きもきっとワクワクするに違いありません。

年間325台までのレプリカ製造が可能に

 この規定の対象となる各社にとっては、今回の新規定が連邦規則集に加えられるのを待つばかりというのが現状です。当初は、規定内容が完成したことを公表した一週間後には実現する…と期待されていました。ですが、折しもバイデン新政権が発足したことにより一時的な規制凍結がなされ、新たな体勢においてその細部が見直されることに…、そうして今に至っています。

 特殊部品市場協会(SEMA=Specialty Equipment Market Association)の連邦政府担当のスチュアート・ゴスウェイン上級役員によれば、「具体的に掛かる日数を明言することはできないが、そもそも何カ月も費やされるべき事案ではないでしょう」とのこと。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Superformance Drift Cobras at the SEMA 2015 Show
Superformance Drift Cobras at the SEMA 2015 Show thumnail
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 NHTSAは当初、連邦議会より2016年末までにこの規定をまとめるよう指示を受けていました。ですが、実際に118ページにおよぶ規定の草案が提出されたのは、2020年1月になってからのことでした。その後NHTSAは沈黙を通しています。アメリカのカーメディア「Car and Drivers」が11月に行った取材では、DMCとSEMAの両社ともが状況を正しく把握できていないとのことでした。新規定がいつ、どのように施行されるものなのか、全く不透明な状況が続いていたのです。

 今回どのような理由により、NHTSAがこの規定を進めることを決定したのか? その理由は明らかになっていません。しかし反論は、どこからもあがっていません。今回のリリースを受けて、SEMAのクリストファー・J・ケルスティング代表は次のように発言しています。「もはや障壁は存在しません。メーカー各社はこれから生産・販売に向けて雇用を整え、来たるべき日に備えていくことになるでしょう」

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DELOREAN MOTOR COMPANY

2021年5月にも名車のレプリカが登場?

 最終的な草案においては、SEMAおよびレプリカ車メーカーとの間で課題とされていた知的財産権をめぐる調整や処理について、裁判所に一任する点についてなどが検討されています。

 車両の寸法に最大10%の誤差を認める点などにも合意がなされており、オリジナルと寸分違わずにレプリカ車を再現しなければならない必要もなくなりました。現状においては、エンジンについてはEPAの承認を受けた物しか使用が許可されません。が、ライトや窓ガラスの素材、またシートベルトに関する規制などは、オリジナル・モデルが生産された時点において有効とされていた連邦自動車基準に基づくことで合意に至っています。

 SEMAのゴスウェイン氏によると、LVVM各社はNHTSA、EPAに事前登録を行う必要があり、カリフォルニア州内でのレプリカ車を販売する際はCARBにも製品登録の必要があるとのことです。

 NHTSAに製品情報およびオリジナル車両とレプリカ車両の写真を提出した後、90日以内の審査を受ける必要がありますが、問題がなければそのまま生産ラインを稼働することが可能です。つまり早ければ2021年の5月には、アメリカ国内の公道を走る新たなレプリカ車を目にするかもしれません。

 ただし「DMC-12」については、その限りではありません。同社のジェイムズ・エスピー副社長によれば、パワートレインの完成および必要な資金調達の目途が立つまで、各連邦機関およびカリフォルニア州に対し申請を行う予定がないとのことです。4年前に設計されたエンジンでは、「2024年の排出ガス規制を満たさない可能性がある」というのがその理由となります。

 「すぐに使い物にならなくなるエンジンを採用することは避けたい」と慎重な姿勢を取っており、また電気自動車化の可能性も視野に入れている模様です。「5年前には想定する必要すらありませんでしたが、現時点における諸条件を改めて、全て検討し直す必要があるでしょう」と、エスピー氏は語っています。

 同社は新規定に対応すべく、英国内に置くエンジニアリング部門と計画の見直しと確認をした上で、エンジンメーカーなど関連各社との協議を行い、申請準備を整えることとしています。そして500万ドル(約5億2423万円)から1000万ドル(約10億4845万円)の資金調達を行い、生産に踏み切る予定であるとエスピー氏は述べています。

今も熱望される「デロリアン」復活

 NHTSAによる手続きが完了した今、次はSEMAによるレプリカ車のパワートレインの査定に力が注がれることになると指摘したした上で、SEMAのゴスウェイン氏は次のように述べています。「LVVM各社がエンジンメーカーに発注を行なうか、もしくは大手自動車メーカーと提携を結べるよう、環境を整える必要があります」

 OMEやエンジンメーカーの協力を取り付けられない場合、レプリカ車メーカーが独自でEPAの基準を満たすエンジンの開発を強いられる事態も考えられるため、SEMAはその対策を整えようとしています。つまり、レプリカエンジンの製造および供給体制の環境を構築し、多様な車種にできる限りの対応が可能となる環境づくりを目指しているのです。

 その一例として、ゴスウェイン氏の次の発言をご紹介します。

 「GMはLS3エンジンの製造認可を2012年に受けていますが、現在ではすでに失効しています。その認可を改めて更新することにより、CARBの承認を得ることが可能になるのです」

 このような状況にあってDMCは、2021年の大きな計画を打ち出しています。1月21日には、初代「DMC-12」の完成から40周年という節目を迎えたところ。あの魅惑的なガルウィングの「DMC-12」がまた私たちの手の届く存在となることを、エスピー氏が明言したのです。今なお同車の復活を待ち望む人々からの熱烈なメッセージが届いており、中には手付金の支払いに関する相談などもあるとのこと。

 「われわれのブランドには、まだ大きな魅力があることを確信しています」と、エスピーは胸を張ります。「問い合わせは数多く届いており、部品メーカーや投資家、その他の協力者を募り、協議を進める準備はできています。生産体制が整うまで1年もしくは1年半という時間は必要ない…と、私たちは考えています」と、エスピー氏は続けてコメントしてくれました。

Source / CAR AND DRIVER
Translate / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。