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辰巳JUNK選:第96回アカデミー賞(2024年)作品賞「これが獲る」私的Best3|『オッペンハイマー』『関心領域』『アメリカン・フィクション』

『ゴジラ-1.0』(日本公開中)が候補となった視覚効果部門を例に、アカデミー会員がプッシュしたくなる映画についてライターの辰巳JUNKが考察。

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『オッペンハイマー』『関心領域』『アメリカン・フィクション』pinterest

【第96回アカデミー賞(2024年)作品賞 候補 辰巳JUNK予想一覧】(本命◎、対抗〇、三番手評価▲、穴☆)

◎『オッペンハイマー』(2024年3月29日日本公開 / 公式サイト
〇『関心領域』(2024年5月24日日本公開/公式サイト
『アメリカン・フィクション』(Amazon Prime Video配信中
☆『落下の解剖学』(公開中 / 公式サイト
☆『哀れなるものたち』(公開中 / 公式サイト
『The Holdovers(原題)』(2024年6月21日日本公開)
『バービー』(U-Nextで配信中)
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(Apple TVにて配信中/ 公式サイト
『マエストロ:その音楽と愛と』(Netflixにて配信中
『パスト ライブス/再開』(2024年4月5日日本公開 /公式サイト

第96回アカデミー賞(2024年)主要部門全リストはこちら


ほか選者の予想はこちら

オスカーウォッチャー=Ms.メラニー選:第96回アカデミー賞作品賞「これが獲る」私的Best3

映画ジャーナリスト立田敦子選:第96回アカデミー賞作品賞「これが獲る」私的Best3

『ゴジラ-1.0』が視覚効果部門にノミネートされたことから考える、どんな作品がアカデミー会員に推されやすいのか?

godzilla
(C)TOHO CO., LTD

まずは、邦画『ゴジラ-1.0』(日本公開中)が候補となった視覚効果部門を例に、アカデミー賞の予想方法について以下の2つが大切だと考える。

なぜゴジラ最新作は「マイナス1.0」なのか?


①前哨戦の結果

アカデミー賞と有権者が重複する、先行アワードが指標となる。米視覚効果協会賞で5部門を席巻した渡辺謙出演のハリウッド映画『ザ・クリエイター/創造者』は、オスカーでも有力候補と推定できる。

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The Visual Effects of Godzilla Minus One
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②キャンペーンでのアピール力

メディアや会員向けイベントで、「投票したくなる候補」としてアピールしていく選挙運動。この面で『ゴジラ-1.0』は強力だ。ハリウッド標準だと、超低予算なのにスペクタクルを創造した熱い物語性がある。 山崎貴監督は、オスカー昼食会にゴジラ人形を持参するなどして注目を集め続けていった。

投票期間終了後、一人のオスカー会員が告白している。

「『ザ・クリエイター』に投票する気でいたんだ。でも、あそこまでの低予算であれだけのことが成し遂げられたと知って、『ゴジラ-1.0』を選ばざるをえなかった」

授賞式本番まで勝負はわからなそうだ。

作品賞予想1作品目=『オッペンハイマー』

映画『オッペンハイマー』(3月29日公開)
(C)Universal Pictures.

作品賞レースは『オッペンハイマー』(日本公開2024年3月29日)がぶっちぎりだ。主要前哨戦を一掃し、受賞がほぼ確実視されている。


第二次世界大戦下に原爆を開発した研究者を描く本作は、デリケートな題材、難解な内容にも関わらず『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)を超えて、史上最高の興行収入を達成した伝記映画となった。ハリウッドとしては、高尚ドラマの大ヒット自体が久しぶりだ。もし作品賞に輝けば『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(2003年)以来、20年ぶりの北米年間興行収入トップ5入り作品の受賞となる。

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Oppenheimer | Cinematography
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『オッペンハイマー』は革新的大作でもあった。65mmカメラ用のモノクロフィルムを新たに開発したり、IMAXカメラで地味な会話を撮影したりして、映画表現の新時代を示したのだ。

製作過程を共有するキャンペーン(※1)も、同業者から感謝されている。

※1 ユニバーサル公式に掲載されたビハインド・ザ・シーン。
撮影 https://www.youtube.com/watch?v=Dpo6QwdEkj0
音響 https://www.youtube.com/watch?v=FWgOPGK589Q
監督 https://www.youtube.com/watch?v=mG5rlu6LTO0

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【本予告】『オッペンハイマー』3月29日(金)、全国ロードショー
【本予告】『オッペンハイマー』3月29日(金)、全国ロードショー thumnail
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作品賞予想2作品目=『関心領域』

『関心領域』
© Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.

大逆転の奇跡を起こしうるのは、最もオスカーらしくない実験作『関心領域』(日本公開2024年5月24日)かもしれない。

裕福な家族の生活を映したこのドイツ語映画は、画だけなら地味なファミリードラマなのだが、どこからか異様な轟音や叫び声が響きつづける…音の出どころは、アウシュビッツ収容所。

その真隣で暮らす主人公一家はナチスなのだ。

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5/24公開『関心領域』予告編
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終演後、立てなくなる観客を続出させた『関心領域』が提示するのは、大量殺戮(さつりく)を「なんでもないもの」として扱う「普通の人々」の存在である。

このグロテスクな主題が国際状況と重ねられていったことは言うまでもない。監督とプロデューサーは、アワードやメディアで中東諸国の犠牲に対する西側の共感欠如について訴えていった。

ジェニファー・ローレンス とスティーブン・スピルバーグ(2012年)
Kevin Winter//Getty Images

『関心領域』はレース終盤に支持を固めていった。英国アカデミー賞では、強豪をおさえて三部門を獲得。英国作品賞と非英語映画賞にくわえ、『オッペンハイマー』をくだすかたちで音響賞に輝いた。

ハリウッドでも、スティーブン・スピルバーグやジェニファー・ローレンス(※2) が支援する熱意が形成されている。

英国アカデミー会員はこうも言い切る。「授賞式の結果がどうなろうと、今年の勝者は『関心領域』だ。語り継がれていくのはこの映画だ」

※2 ジェニファー・ローレンスは、プライベート試写を開催。スティーブン・スピルバーグは『The Hollywood Reporter』のインタビューで、「『シンドラーのリスト』以来、最高のホロコースト映画」と言及。

作品賞予想3作品目=『アメリカン・フィクション』

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AMERICAN FICTION | Official Trailer
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『アメリカン・フィクション』(Amazon Prime Video配信中)は、黒人作家が冗談で書いた「白人が喜びがちな軽薄な黒人の話」が大ヒットしてしまうコメディ。

業界人から共感される「クリエイターのつらい現状」が巧みに描かれているため、脚色部門で『オッペンハイマー』『バービー』を破る可能性がある。

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【総評】この10年で最高のラインナップ

『落下の解剖学』
© LESFILMSPELLEAS_LESFILMSDEPIERRE

なによりめでたいのは、第96回アカデミー賞作品賞が「この10年で最高のラインナップ」と絶賛されていることだ。パンデミック危機後のフィルム・ルネサンスを反映するように個性豊かな作品がそろっている。

フランス映画『落下の解剖学』(日本公開中)は、夫が不審死した小説家の裁判を通じて、断片的な情報で断罪しようとする現代社会の問題が浮きぼりになっていく脚本賞の有力候補であり、メイン部門のダークホースだ。

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第80回ヴェネチア国際映画祭最高賞、金獅子賞受賞!『哀れなるものたち』予告編│2024年1月26日(金)公開!
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エマ・ストーンが「大人の身体をした子ども」役に挑戦したR指定ヒット『哀れなるものたち』(日本公開中)は、ゴシック調スチームパンクな世界観が魅力で、主演女優賞のほか、美術賞や衣装デザイン賞でも注目を集めている。

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THE HOLDOVERS - Official Trailer [HD] - In Select Theaters October 27, Everywhere November 10
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助演女優賞を確実視される『The Holdovers(原題)』(日本公開2024年6月21日)は、古き良きヒューマンドラマで、長く愛されることになるであろうクリスマス映画だ。

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Kate McKinnon, America Ferrera & Ryan Gosling Help Jimmy Kimmel Get to the Oscars
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日本時間2024年3月11日(月)開催の授賞式も豪華になるだろう。アカデミー賞のプロモーション動画(※7)に出演したのは、社会現象となった『バービー』のキャストたちと司会を務めるジミー・キンメル。

内容はキンメルがバービーランドの中で迷ってしまい、変てこバービー(ケイト・マッキノン)の家にたどり着くストーリー仕立て。各候補作でエマ・ストーンやレオナルド・ディカプリオ、マット・デイモンが演じたキャラクターも姿を見せていく。

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Billie Eilish - What Was I Made For? (Official Music Video)
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授賞式では、歌曲賞候補すべての歌唱パフォーマンスも決定している。受賞最有力となっているのは、ビリー・アイリッシュと兄フィニアスによる映画『バービー』挿入歌「What Was I Made For?」。対抗馬は同じく『バービー』にて鮮烈な印象を残したライアン・ゴズリングとマーク・ロンソンの「I'm Just Ken」だ。

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Barbie Music Video - Just Ken (2023)
Barbie Music Video - Just Ken (2023) thumnail
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さらなるラインナップは、映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』よりスコット・ジョージとオセージ・シンガーズの「Wahzhazhe(A Song For My People)」、映画『フレーミングホット!チートス物語』よりベッキー・Gの「The Fire Inside」、ドキュメンタリー『アメリカン・シンフォニー』よりジョン・バティステとダン・ウィルソンの「It Never Went Away」。

いよいよ日本時間2024年3月11日(月)に迫るアカデミー賞。予習してもしなくても、楽しめることは間違いない。

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Text / Tatsumi Junk
Edit / Minako Shitara

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