「Louis Vuitton(ルイ・ヴィトン)」のメンズ アーティスティック・ディレクターであり、ミラノでスタートさせた「Off-White(オフホワイト)」の創設者であるVirgil Abloh(ヴァージル・アブロー)は2020年7月10日、「黒人、アフリカ系アメリカ人、またはアフリカの血をひく学生」に向けた奨学金ファンドに、計100万ドル(約1億700万円)を集めたことを発表しました。

 アブローは彼自身による寄付金と合わせて、「ルイ・ヴィトン」、Evian(エヴィアン)、New Guards Group(ニューガーズグループ)、その親会社のFarfetch(ファーフェッチ)など他の企業の協力を得て、「Virgil Abloh™ Post-Modern Scholarship Fund(ヴァージル・アブロー ポスト・モダン奨学金ファンド)」を発足。この慈善団体は、83年の歴史を持つファッション奨学金ファンド(Fashion Scholarship Fund)と長期的なパートナーシップを締結しました。

 ヴァージル・アブローは、フランスのラグジュアリーメゾンを率いる唯一の黒人の血をひくデザイナーになります。また、2019年には歌手のリアーナが、LVMH(LVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)との提携でファッションブランド「FENTY(フェンティ)」を設立に参画しているので、リアーナとヴァージルのみということになります。ファッション業界に多様性がもたらされれば、デザインは最高レベルまで引き上げられることでしょう。

 ヴァージルはこの件に関して、Vogue.comに対してこう話しています。

 「私は現在39歳です。黒人デザイナーとしての道を模索しながら、ようやくここ(デザイナーという地位)まで到達できました。このように変化をもたらすことができる立場になるまで、多くの歳月を費やしてきたのです…」とのこと。

 フランスをはじめとするヨーロッパだけでなく、アメリカのファッション業界でも問題があります。多くのアメリカンブランドが黒人デザイナーを起用していますが、2018年時点でニューヨークファッションウィークに参加できた黒人デザイナーは、わずか10%未満だったのです。

 「世界には、さまざまな人種が存在します。ですが、私の学んだキャンパスは多様性に富んでいるとは言い難い状況でした。ファッション業界で活躍する黒人を増やすために、黒人学生に特化した財団を設立することが重要だと考えました」と、アブローは話しています。

2020 21秋冬の「オフホワイト」メンズウエアショーの舞台裏でモデルをチェックするヴァージル・アブロー
Getty Images
2020-21秋冬の「オフホワイト」メンズウエアショーの舞台裏でモデルをチェックする、ヴァージル・アブロー

 2020年はアブローにとっても挫折の多い年と言えるでしょう…、いろいろと行動が注目されていました。2020年2月にはエビアンと提携し、18歳から35歳までのデザイナーに5万ユーロ(約600万円)の助成金を提供。これは持続可能な取り組みのために活用されます。さらに彼は、メンバーのわずか3%しか黒人のいないアメリカのファッションデザイナー協会評議会の理事会を含め、ファッション業界の多様性を促進するためにいくつかの委員会にも参加しています。

 #BlackLivesMatter に関するSNSのコメントで、6月初めに非難された際にアブローは、彼が所有する未発売の「Off-White(オフホワイト)」のスニーカーを競売にかけ、その収益となった18万5000ドルを英国の反人種差別団体に寄付しています。

 「私は情熱的なデザイナー兼アーティストです」「人前で話すこと、特に急速に変化するトピックについていくことが得意ではありません。私自身表彰台向きの人間ではありませんが、体型的な変化をもたらすための表彰台を設計しようと考えました」と、アブローはウェブメディアの「FastCompany」に話しています。

 この奨学金の詳細は、2020年夏後半に発表されるとのことです。

Source / TOWN&COUNTRY