2018年サッカーワールドカップロシア大会への出場権を逃し、失意のどん底にあえいでいたイタリア代表チーム。あれから3年が経ち、初夏を迎えたイタリアの首都ローマには、かつての頼りなく見えたアズーリ(イタリア代表の別名。イタリア語で空色の意味)の姿はありませんでした。

matteo pessina celebrates with lorenzo insigne
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 現地時間6月21日(月)に行われたサッカー欧州選手権(EURO2020)グループステージ グループAの最終戦。難敵ウェールズ代表を迎えたイタリア代表は、前半39分にマッテオ・ペッシーナが挙げた虎の子の1点を守り抜き、見事勝利。試合後、メディアの前に立ったロベルト・マンチーニ監督。その表情は消耗戦を終えた指揮官の表情と言うよりも、まるで、お気に入りのトラットリアでローマの郷土料理「パスタ・アッラ・グリーチャ」を食べたのち、満足気にお店を出たところメディアに遭遇したかのような雰囲気を漂わせていました。

 つまり…、パウダーブルーのシアサッカーのブレザーを肩に掛けた指揮官は、機知に富んでいると思えるほど落ち着き払っていてエレガント、そして爽やかで、タイドアップした姿(ブレザーを肩に掛けていたとは言え)は実に様になっていました。

 現代のサッカーチームの多くの監督とは異なり、蒸し暑いローマの夏の夜でもシャツ、ネクタイ、ブレザーに袖を通したマンチーニには確固たるスタイルがありました。

 
Claudio Villa//Getty Images

 この夜、相手のウェールズ代表チームのロバート・ペイジ監督は、黒いポリエステル製のトレーニングウェアを着ていました。その姿はまるで、ウェールズの首都カーディフにあるパワーリフティングジムの駐車場で、ジップロックの袋に入れた格安のプロテインを周囲の人に売り歩く男性のような格好でした…。「いいか、おめぇら! 来週の水曜までに、ジムに残るデッドリフト最重量記録をぶっ壊すぞ!」とでも言わんばかりです。 

 無論、マンチーニ監督のセンスは賞賛に値します。

 ですが、今回のEURO2020でイタリア代表チームのオフィシャルスーツのデザインを担当したのは、紳士服の大御所であるジョルジオ・アルマーニ氏です。80年代にグレーやネイビーのテーラリングで、パワードレッシングという概念の先駆けとなった1人です。

 そんなアルマーニ氏がデザインしたサマースーツは、1982年にイタリアをワールドカップ優勝の栄光に導いた名将、エンツォ・ベアルツォット氏の姿にインスピレーションを受け、そのイタリアサッカー界のレジェンドに敬意を込めてデザインされたものです。

 パウダーブルーの淡い色合いに仕上げられたブレザーは、夏場でも涼しげな軽量コットンシアサッカー素材を使用。ボトムにソフトなブラックトラウザーを合わせたスタイルは、「ベアルツォット氏が生前に見せたエレガントなたたずまいから着想を得た」と言います。

 
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1982年のFIFAワールドカップスペイン大会でのイタリア代表ベンチ。左端に座る往年のベアルツォット氏の姿をご覧ください。ペールブルーのシアサッカー地で仕立てられたアルマーニを全身にまとっていました。そして、パンツとローファーのコーディネートも、文句のつけようがありません。

 ジョルジオ・アルマーニ氏は次のようにコメントしています。

社会全体が再スタートを切ったこの時期に、EURO2020という重要な大会で代表チームにスーツを提供できるのは、この上ない名誉です。私が取り組んだのはスポーティーでオーセンティック、それでいてエレガントであるようなイメージの実現です。軽やかでありながら威厳と品格に満ちたスタイル。それこそ、今の時代に私たちが備えるべき精神性と共通するのだと感じています。

 真夏の大広場を歩けばマンチーニ同様、太陽の光を反射するような軽やかな色味をしたアンコンジャケットと、日焼けから脚を守ってくれる快適なトラウザー姿で着飾った男性の姿を目にすることもあるでしょう。

 ヨーロッパ大陸で暮らす男性たちは、夏でもスーツを着こなすことのノウハウとともにそこにある効果をよく理解しています。アルマーニが1982年のアズーリの公式ウェアにシアサッカーのスーツを採用したのも、そして2021年にイタリアが思い描く夏のスーツのプラトニックな理想像を現代風にアレンジしたのも、それが理由と言えるはずです。

 未曽有のコロナ禍にある現在の世の中。ショートパンツやトラックスーツ姿で部屋の中に閉じこもっていた月日は以前に比べ、少しずつではありますが減りつつあります。つまり、「しっかりと着飾る」スタイルが少しずつ戻りつつある現在、サマースーツを恐れる必要はないでしょう。まずは、アズーリを率いるマンチーニ監督のスタイルを参考にしてみてはいかがでしょうか。

 熱戦が繰り広げられているEURO2020。試合の行方はもちろんですが、うだるような暑さの中で、シアサッカーのブレザーをスマートに着こなす術を知る名将の姿も、目に焼きつけておきましょう。

【名将マンチーニの現役時代のスーパープレイも】

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Roberto Mancini - Striking Talent [Best goals]
Roberto Mancini - Striking Talent [Best goals] thumnail
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Source / Esquire UK
この翻訳は抄訳です。