「ロエベ」の2022秋冬メンズ ランウェイコレクションは、ひとつの変容された現実世界を表現しています。見かけ通りのものは何もないということを示し、この仮定を逆光によって照らし出します…。

コレクションは、アーティストのジョー ・ マクシャとエドガー ・ モサによるサイトスペシフィック(特定の場所に帰属する性質)なるインスタレーション「Flags, Paris 2022」を中心とした迷宮のようなセットで発表されました。

約4000本のリボンを個別にカットされた「顔のない」87枚の旗(2.5 × 3.5m)は、6.5mのアルミニウムの旗竿に取りつけられ、モデルや観客の動きに合わせて反応します。これらの“意味を剥ぎ取られた旗”は、見る者に内省を促す役割を担います。可視光線から選ばれた13色がランダムに配置され、それぞれの旗がユニークに輝きます。

クリエイティブ ディレクターのジョナサン ・ アンダーソンは、直接的に季節を示すものを排除し、そういった象徴やわかりやすい参照元が重要ではない独自の一時的な空間にあえて入り込む、ストレートで簡潔かつ無駄なく編まれたビジョンを提示します。

身体は到着点であると同時に出発点であり、トロンプルイユ(trompe-l'oeil=だまし絵)の作品では縮小された裸が再現され、アンダーウェアやベースレイヤーの要素が外部の自己として表出されているわけです。

縮小され凍結された新たなシルエットが、胴体と脚の近くに配置されています。フープとワイヤーが動作の途中の動きをフレームに収め、まるでパフォーマンス中の身体が凍りついたかのよう。ナンセンスなドレスは、電車の中に突き出て肉体と出会います。LEDやライトがコートを照らし、そのウエストラインやトラウザーズの側面、靴のかたちがあらわになる様は、まるで身体から直接に光が放たれているかのようです。

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男性の典型的なスタイルに、捻(ねじ)れが加わたスタイルも…。ボクサーパンツとブリーフ、コート、ジーンジャケット、シャギーファー、モヘアのプルオーバー、マッキントッシュ。転置によって別の次元がもたらされ、コートやバッグの表面には穴が無の空間を刻み、逆光に照らされたシェルはランダムに手でつかまれています。油脂加工されたレザーのコートは、挑発的なほどに透き通っていて、キッチュなブリーフがトップスの下からのぞいています。コートでは、シャーリングのライニングが前進することを促しているようです。

バッグにはナパレザーに穴を開けた「キュービィ」や高さのある長方形の「アマソナ」など、大容量のトートバッグタイプがそろいます。「フラメンコクラッチ」は貝殻で装飾され、ソフトなブーツへと生まれ変わりました。そしてLEDが、ラバーブーツを照らします。スクエアトゥのローファーのモチーフには、さくらんぼがあしらわれています。

変容された不完全性を照らし出すことによって、別の種類のリアリティが描かれています。これは身体を第一に置き、そこから考察することによってリセットを示すコレクションです。