「プーマ(PUMA)」は、カーレースという高速の世界と少なからぬ縁があるスポーツブランドですが、ここでまたギアをさらに上げようとしています。「FIAフォーミュラ・ワン(F1)」第5戦マイアミGP開催直前の5月4日(木)、プーマがF1のオフィシャルサプライヤーになることが発表されました。そして2024年からは、F1全10チームのファンウェアを独占販売する予定となっています。
GP会場に登場したプーマの最高経営責任者(CEO)であるアルネ・フロイント氏は、「プーマとモータースポーツの世界との関わりは40年、F1は20年になります」と語り始めます。
実際、同社は80年代半ばから耐火性のあるオーバーオールやドライビングシューズなど幅広い商品を製造。現在では、フェラーリやアルファ ロメオなど参戦するチームのウェアを手掛けていますが、それにとどまらず今回直近のGPが行われたサーキットで、さらなる進化を明らかにしたのです。
フロイントCEOは、レース会場でのグッズ販売を独占的に行う子会社「stichd」のニナ・ニックスCEO、F1のステファノ・ドメニカリCEOとともにパネルディスカッションに登壇。プーマの長年のモータースポーツとの関わりについて語りました。
「こうしたオーセンティシティ(真正性)とクレディビリティ(信頼性)は当然ながら一朝一夕に築けるものではなく、何十年もかかって築かれるものです。当社にはまさにその実績があります」
一方、ドメニカリCEOは、「私たちは、合理性と情緒性の両面からのアプローチで仕事をしています」と話したうえで次のように述べました。
「合理的な面とは、カバーオールの軽量化や通気性の改善などであり、情緒的な面は、F1に求められるふさわしいデザインと熱量を持っていること。私たちが共有したいのは、この熱量なのです」
さらにニックスCEOは、次のようにコメントしています。
「F1は大きく変化しており、ファンウェアはもはや単なるウェアではなくなっています。今やF1はライフスタイルブランドであり、あらゆるF1参戦チームが、素晴らしいストーリーを前面に出し、ファンと共有しようとしています」
その後行われた、プーマが打ち出した「F1およびモータースポーツ全体の文化をディスラプト(創造的破壊。古くからの慣例を破壊によることによるイノベーション)する計画」をテーマとしたパネルディスカッションでは、プーマのグローバル・チーフ・ブランド・オフィサーであるアダム・ペトリック氏をモデレーターに迎え、登壇したファッションおよびカルチャー分野の著名人2人もニックスCEOの発言を裏づけるようなコメントを発しました。
例えば、10年以上前からプーマと独創的なコラボレーションを行っているエンターテインメント企業ロック・ネイションのエモリー・ジョーンズ氏は次のように語っています。
「世界には人種や年齢などの属性にかかわらず、あらゆる人々を結びつける3つのユニバーサルな言語があります。それは音楽であり、スポーツであり、ファッションなのです。
F1はレガシーという面で、世界的な宝飾ブランドの『ティファニー』に匹敵する存在だと思います。よって今私たちは、ディスラプションによってブランドとしての次の25年のさらなる発展と、将来のさらなるアイデンティティの確立を目指しているのです」
さらにテレビ司会者であり、自身もレーシングドライバーであるナオミ・シフ氏は、未来を見据えて次のように発言しました。
「長い間、表現という面でF1は不毛な場でした。レーシングドライバーはサーキット場でレーシングギアを身に着けているため、ドライバーが自身のスタイルを表現できる手段はヘルメットしかなく、その人の個性やスタイルが見えてきませんでした。
最近ではバスケットボール界のように、サーキットにもレーシングドライバーのキャットウォークが登場し、表現の場ができています。これは、とても素晴らしいことだと思います」
ここで肝心なことは、ドライバーのこだわりや表現が、彼らのファンである多くのF1視聴者(2022年の実績では15億人とのこと)にも実感されるように伝えることです。プーマのF1ウェアはレース会場で購入できるのはもちろん、2024年2月からはプーマのウェブサイトでも発売される予定です。
関係するブランドがそれぞれの真価を発揮することで、真のクロスオーバーを生み出すという狙いは、プーマのドライビングシューズ「スピードキャット」が1980年代初頭にストリートスタイルのマストハブアイテムになったことを彷彿とさせます。
「私の21歳の息子は、今回の発表の前から『スピードキャット』を履いています」と話すのは、プーマのウィメンズバスケットボールコレクションのクリエイティブディレクターで、90年代のヒップホップカルチャーに深く根差したクリエイターの先駆けであるジューン・アンブローズ氏です。
彼女は、「彼が『スピードキャット』を求めた動因(ドライブ)は何だったのでしょうか? 別に、言葉のもじりではありませんが…」と話しました。その答えは、アンブローズ氏のこれまでのキャリアと同じように、モータースポーツの影響力にあるようです。
「私たちはモータースポーツのカルチャーからインスピレーションを得て、ミュージックビデオの中に取り入れていました」と言うアンブローズ氏。現在、F1人気のブームとプーマとのパートナーシップにより、F1の文化を大衆に伝えるチャンスが到来しています。
「消費者がオーセンティックかつ自然にF1の世界観を身近に感じられる商品をつくることができれば、そのパズルが解けるような気がします」と、同氏は続けて語りました。
source / ESQUIRE US
Translation / Keiko Tanaka
※この翻訳は抄訳です