アラームなしで午前4時に起きて、ランニングや筋トレをしてから朝のシャワータイム。お気に入りの匂いがする「diptyque(ディップティック)」のボディウォッシュジェルで丁寧に身体を洗って、ふかふかの「TENERITA(テネリータ)」のタオルで拭いたら、「HANRO(ハンロ)」の白いパンツをはいて、パリッとした白い「Charvet(シャルベ)」のシャツ、「Hermès(エルメス)」のシルクネクタイ、フランネルカシミアで仕立てた「Brioni(ブリオーニ)」のチャコールグレースーツを着ます。靴は「Crockett & Jones(クロケット&ジョーンズ)」の深い栗色のブローグシューズをチョイス。

 もちろん、丁寧に手入れが行き届いているものです。そうして、ポロックチェアに腰を下ろして、腕に巻きついた「PATEK PHILIPPE(パテック フィリップ)」の「ノーチラス」に目をやると、時計の針は7時。理想的な1日の始まりです…。

 しかし、わかっています。こんな映画の主人公のような朝を過ごしている人は、現実にはいません(もしかすると、0.01%くらいはいるかもしれませんが…)。実際の世界では、起きたら顔を洗って、とりあえずはパジャマから外に出られる程度の服に着替え、通常通り勤務しているでしょう。

 在宅ワークを始めたときに、「何を着ればいいんだ!?」と迷った人はそう少なくないはずです。まず、「快適でゆったりした服を着ましょう」ということはお伝えしておきます。

 会社で働いているときには、ある程度のルールに縛られています。人に見られるので、きれいなシャツにスマートなパンツ、汚れていない靴を履くなど…。ジャージや出身校の書かれたTシャツなどを着てオフィスに行けば、上司に呼び出されて「ここは会社だから、ルールを守りなさい」と叱られるでしょう。が、ポジティブに考えれば、在宅ワークのときにはあなたは何を着てもいいのです。

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Lions Gate Films

 こんなとき、ファッションの専門家は何を着ているのかを尋ねてみると、「専門家としての義務がなかったら、毎日の服装に関して全くの専門外になりますね」という人も…。

 他にも、多くのプロにも尋ねてみました。

 「スマートでリラックスできるパンツをはきます。息苦しかったり、だらしなく見えるものではなく、カジュアルな生地だけれどクラシックに見えるシルエットのものを選びますね。そして、極力シンプルな服装にします」 と英国のデザイナーであるオリバー・スペンサー氏は話します。

 また、「ブラウンズ・ファッション」のメンズバイヤーであるリー・ゴールドアップ氏は、「私は家で仕事をするとき、快適さが絶対です。ジョガーパンツやハーフパンツにパーカ、そういった感じです」と言います。「今欲しいのは、『Reigning Champ(レイニングチャンプ)』のトラックスーツのボトムと『Neighborhood x UGG』のスリッパです」と語ります。

 そして、「Drake's(ドレイクス)」や「GANT(ガント)」などに務めた後、フリーランサーとして2年間メンズウエアのイラストレーターをしているウェス・ロビンソン氏は、「着ていて幸せになるものを着るべき」だと言います。

 「あなたは今『マスターのいない男』であり、ツイードジャケットにキャンディーストライプシャツ、少し派手なネクタイ、ディアストーカーハットを被って仕事をしていても誰にも突っ込まれないのです。私はそういったことはしませんが(笑)、いつもは大量に持っている『Edmmond Studios(エドモンド スタジオ)』のチノパンツにストライプのラグビーシャツを選んでいます」

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Getty Images
ユニフォームを決めると楽になる?

 「家で仕事をしても、服装は変わりません」と話すのは、「エスクァイア」や「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙などでフリーランスのファッションフォトグラファーを務めるチャーリー・ゲイツ氏です。

 「私は家で仕事をする日も、いつものルーティーンを守りたいんです。そもそも私のいつもの服装は、とてもリラックスできるものばかりなのです。撮影があるときも、ヴィンテージTシャツに『ARKET(アーケット)』のゆったりしたパンツ、そしてカラフルな靴下のようなスタイルです」とのこと。

 メンズファッションシーンで活躍する人々に訊いた調査から、仕事のやり方やパンツの種類のチョイスにはさまざまなスタイルがあることがわかりました。ここで一貫しているのは、多くの人が在宅ワークの際は一連のルールを決めず、1日を過ごす上で快適な服装を求めているということです。

 とは言っても、クライドサービス「zoomミーティング」でのウェブ会議中、絶対に席から立ち上がれないようなジャージや短パン、もしくは下着のまま(2020年お年玉プレゼントをSNS上で公表したときのM氏のように)の人もいるようです。

 「在宅ワークでは、ドレスコードがありません。カジュアルなものが標準ですが、それがファッションをつまらなくさせているというわけではないのです」と、Exposure communications agencyの創業者兼CEOラオール・シャー氏は言います。

 「私は『Folk』、『Maharishi』、『Engineered Garments』、『Noah』などのブランドが好きです。驚くほど快適な生地を使用していて、重ね着が簡単。スタイリッシュなシルエット、そして、勇敢な色使いのアイテムが豊富で、どれを取ってもビデオ通話に適しています」とのこと。

 また、「最初の数日間は、パジャマを着て仕事をしても『楽しい!』と思えるかもしれません。ですが、仕事が好きで成果を残したいと思っている人ほど、カタチばかりにこだわってしまう方は多いでしょう。ですが、家で仕事をしているわけですから、リラックスして臨んだほうがいいではないでしょうか」と、ゲイツ氏は締めくくってくれました。

Source / ESQUIRE UK