スポーツウェアを取り入れたスタイルは、トレンドを通り越してスタンダードになりつつあります。あなたのワードローブにもひとつやふたつ、入っているのではないでしょうか? さまざまなタイプのモデルが市場に出回っている中で、突出して有名なアイテムがあります。

それが、「アディダス」のトラックスーツ『ベッケンバウアー』です。

スポーツウェアに詳しい人でなければ、この名前にピンとこないかもしれません。ですが、サイドにスリーストライプが入ったトラックスーツのボトムスと、それにマッチしたジップアップのジャケットを見れば、きっとすぐにわかるはずです。このトラックスーツは独特のヴィンテージスタイルを持っており、それが人気の理由となっています。

アドルフ・ダスラー(上の写真でサッカースパイクを手にする紳士。1973年9月に撮影)が1948年に設立したブランド「アディダス」は、もともとスポーツシューズを専門に扱っていました。が、1952年のヘルシンキオリンピックで西ドイツの選手全員が「アディダス」のシューズを履いて以来、人気を集めることになります。さらに1954年には、FIFAワールドカップ スイス大会で優勝した西ドイツの選手の多くが履いていたことから、「アディダス」の影響力はさらに増していきました。そして数年後、「アディダス」は自身のスポーツ界での成功を自覚したかのように、スポーツウェア発売へと踏み込むことを決意します。

そうして「アディダス」は、これまで密接な関係を築いてきたスポーツ「サッカー」と、さらなる深い関係を築いていくわけです。現代で言えば、あのクリスティアーノ・ロナウド的な存在である当時のスター、フランツ・ベッケンバウアー(現在76歳)と組むことにしたのです。

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「アディダス」のトラックスーツを着たフランツ・ベッケンバウアー。(1971年撮影)

すべてを勝ち取ってきたこの男は、「カイザー(皇帝)」と呼ばれていました。「アディダス」は彼のために赤いパンツとジッパー付きの白いジャケットで構成されたトラックスーツをつくります。そしてその後、そのパンツとジャケットの脇にある3本のストライプは、「アディダス」のトラックスーツのシンボルとなります。そうして1964年、ベッケンバウアーのトラックスーツはファッションの歴史に刻まれました。

快適でエレガントとも言えるこの服は、数十年後に競技場から音楽シーンでも注目を集めるようになります。

まず、80年代のラッパーたちがこのトラックスーツを愛用するようになったのです。スタイルを主張するのに十分な派手さと、ブレイクダンスをするのに丁度いい快適さを兼ね備えていたからです。そのおかげで現在のラップスター、USのスヌープ・ドッグやUKのストームジーらもベッケンバウアーのトラックスーツを着て街を歩き、そして、コンサートにも出演するようになったというわけです。

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1990年代になると、ブリットポップ・ムーブメント(イギリスのポピュラーミュージックの旋風)が起こり、オアシスのノエル・ギャラガーやブラーのデイモン・アルバーンを筆頭に、「アディダス」のトラックスーツがユニフォームとして再び脚光を浴びるようになります。

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その結果として、「アディダス」のトラックスーツはファッションアイコンとして確固たる地位を築き上げたわけです。今日でもティモシー・シャラメなどのセレブリティや、パリやミラノのストリートスタイルで最もスタイリッシュな男性たちのお気に入りの服となっています。

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「PRADA(プラダ)」や「BALENCIAGA(バレンシアガ)」の服と組み合わせれば、この服の千変万化の顔に加えて、ラグジュアリーな雰囲気を醸し出しています。

「アディダス」はその汎用性と人気に着目し、時折、復刻してはその名声を高めています。今シーズンはそのスタイルを再構築し、ヴィンテージの美学と伝統をそのままに、洗練された新しいモデルを発表しています。

キャンペーン画像では、白いソックスとローファーを組み合わせて、ベッケンバウアーのトラックスーツがかつてないほどトレンディになったことを、しっかりと確認することができるでしょう。

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Source / ESQUIRE ES
※この翻訳は抄訳です。