クラフトビールとは?

小規模な独立した醸造所が製造するビールで、伝統的な手法を大切にする醸造所もあれば革新的な方法を用いて独自性と品質にこだわった醸造所もあるなか、現在ビール市場をにぎわしているビールが「クラフトビール(地ビール)」です。

このビールの特徴は大規模な商業醸造所とは異なり、個性的な味わい、多様なスタイル、地域性を反映した製品である点です。またクラフトビールは、使用される原材料にもこだわり、ユニークな風味やアロマを追求していることが特徴となっています。以下、現在人気の理由を3つ挙げましょう。

1.多様性と革新性:

クラフトビールは多様なスタイルと風味を提供しており、消費者は常に新しい体験を求めることが可能です。各醸造所は伝統的なスタイルを守りつつも、新しい材料や技術を取り入れることで独自のビールを創造しようと努めています。

2.地元産への関心の高まり:

地元の小規模ビジネスや地域経済への支援という考え方が広がっている中で、地域の醸造所やその製品に対する支持も増えています。地元で製造されるビールは、地域の特性や文化を反映している点で地域ぐるみで活性化を図っています。

3.品質への重視:

クラフトビールの製造者は、品質と独自性に重点を置いており、ファンとなる消費者もそれに共感し評価しています。細部にわたるこだわりや、手間をかけた製造プロセスは味わい深い数々のクラフトビールを生み出しています。

4.コミュニティとのつながり:

クラフトビールの醸造所はしばしばコミュニティの中心となり、イベントやビアガーデンなどを通じて地元住民との結びつきを強化。ファンとの絆を大切にした消費構造が実に魅力的です。

headlands brewing company
Smith Collection/Gado//Getty Images
カリフォルニア州ラファイエットのレストラン兼地ビール醸造所「Headlands Brewing(ヘッドランズ・ブリューイング)の地ビール製造設備。アメリカにおけるクラフトビールの基本は、このくらいの小規模な設備の中で製造しています。

これらの要因が相まって、クラフトビールは根強く支持されており、その人気は今もなお高まり続けています。

そもそものきっかけは、1994年4月に酒税法が一部改正され、ビールの製造免許を取得するための年間最低製造量が、それまでの2000キロリットル以上から、60キロリットル以上にまで大幅に緩和されました(発泡酒の製造免許は6キロリットル以上)。これにより、大手メーカーにしか許されていなかったビール製造が、各地の中小メーカーにも可能になり、日本全国で個性豊かな「地ビール」が誕生することになりました。

その後、一時のブームが沈静化したものの、2021年9月の朝日新聞*¹による記事によれば、2021年のクラフトビールの成長は前年比200とのこと。中でも大手ビール会社であるキリンビールがクラフトビール市場に参入した「スプリングバレー」は2021年の段階で100万ケース突破ということ。

*1:朝日新聞デジタルの記事を参照

大手がつくっても
クラフトビール?

ここでキリンビールは大手なのに、なんでクラフトビール?」と思うかもしれません。 なぜ「スプリングバレー」はクラフトビールなのか? その理由は、その製造プロセスとビールの特性にあります。通常、クラフトビールは小規模な醸造所でつくられ、独自のレシピや手法を用いることが多いです。が、キリンはスプリングバレーを通じて通常の大量生産ビールとは異なる、より個性的で多様な味わいのビールを提供することを目指しています。このブランドは、特定のクラフトビールの要素を取り入れつつ、キリンの資源と技術を活用しているというわけです。

beta tested pilsner
Smith Collection/Gado//Getty Images
金色に輝く「ピルスナー」のクラフトビール。

クラフトビールとは「明確な定義はない」とされ、その規模の小ささだけでなく、原材料の選定や醸造方法において独自性を追求する点が特徴となっています。キリンはスプリングバレーで、実験的な醸造技術や変わった原材料を使うことで、新しい味わいのビールを創出し、ビール愛好家に向けた新しい選択肢を提供しているというわけです。これによって大手ビール会社であっても、クラフトビールの定義に適合することが可能となっています。よってキリンビールの他、アサヒビールもサッポロビール、サントリービールも独自のクラフトビールを製造を開始します。

このように味わいの個性を大切にし、多くは小規模の場でつくられるビール――それが「クラフトビール」「地ビール」と呼ばれ、日本各地のバラエティー豊かな名水や酵母の持つコク、そして、それぞれの醸造所が提案するこだわりを味わうことができるビールが増えてきたというわけです。そして大手ビール会社がつくる定番のビールの味わいでは飽き足ららない人々が、自分に合ったオリジナリティーあふれるビールを求めることによって、個性豊かな「クラフトビール」「地ビール」の人気が上昇中というわけです。

ビールには種類がある

ビールの種類としては「ピルスナー」「エール」「ホワイトビール」「ヴァイツェン」「ポーター」「スタウト」などとあり、主に醸造法、使用する酵母の種類、原材料、発酵温度、味の特徴などによって区分されています。

以下は主要なビールのカテゴリーとその特徴です。その辺りもご自身で研究しながら、飲み比べて自分好みを探してください。それも「クラフトビール」「地ビール」の醍醐味ですので…。

ピルスナー (Pilsner):

中世以降に始まり、19世紀以降には世界的な主流となった 下面発酵の「ラガー*²」の一種で明るい金色をしており、クリアな味わいが特徴となっています。チェコのピルゼン地方が起源でサーッとした清涼感があり、ホップの苦味が特徴的とされます。

エール(Ale):

上の「ラガー」が下面発酵に対して、こちらは上面発酵ビールで発酵温度が比較的高く(通常15~24℃)、フルーティーな味わいや香りが特徴となります。「エール」でも多様なスタイルがあり、特に一般的で比較的薄い色でフルーティな味わいやカラメルのような甘味がある「ペールエール」、もともとは長期の船旅に耐えられるよう強いホップとアルコール度数を持つようにつくられたゆえホップの苦味の強い「IPA(インディア・ペールエール)」、アルコール度数は比較的低めなので飲みやすいが苦みが際立つ「ビター」などが含まれます。

ホワイトビール (Witbier):

ベルギー原産のビールで麦芽の代わりに小麦を多く使用し、コリアンダーやオレンジピールなどのスパイスを加えることが一般的です。軽やかでフルーティー、スパイシーな味わいが楽しめます。

ヴァイツェン (Weizen)

Weizenとはドイツ語で、「小麦」を意味。つまり、ドイツ式の小麦ビールになります。酵母由来のバナナやクローブのような香りが特徴となっています。

ポーター (Porter):

イギリス発祥のダークエールで、焙煎(ばいせん)された麦芽を使用することによってコーヒーやチョコレートのような味わいがあります。色は通常、深い茶色から黒に近い色になります。

スタウト (Stout):

「ポーター」と似ていますが、さらに濃厚でビターな味わいが特徴です。代表的なものにアイルランドの「ギネス」があります。焦げたような苦味や焙煎感が強いものになります。

*2:Lager 名前はドイツ語の「lagern」に由来し、これは「保管する・貯蔵」を意味します。これは、ラガーが発酵後に低温で長期間熟成させる過程に由来するものとされています。上の「ピルスナー」の他、「ヘルズ」「ドルトムンダー」「ボックビール」など、さまざまなスタイルのラガーがあります。このあたりはご自身で探求してください。

発酵方法は「下面発酵」と呼ばれるもので、冷涼な環境でゆっくりと発酵させることが特徴。これにより、清潔で滑らかな口当たりが得られると言います。ラガーの名前はドイツ語の「lagern」に由来し、これは「保管する」を意味します。オリオンビール公式サイトを当該ページを参照


エスクァイアおすすめの
クラフトビール10選

そこで今回は、代表的な7種類の解説からおすすめのクラフトビールをご紹介します。

【田沢湖ビール】

秋田県の清らかな水源を使用し、クリスピーでドライな味わいが特徴のチェコスタイルピルスナーで、その爽やかなホップの風味ときめ細かな泡立ちが、地元の自然環境と職人技が融合した高品質なビールを楽しむことができます。

ラガーの一種で、より具体的に言えばピルスナータイプのビールの一つと考えることができる「ドルトムンダー」と呼ばれるスタイルでつくられます。これはピルスナーよりも少しモルトの風味が強く、アルコール度数も5°とやや高い特徴がありますがピルスナーと同様にラガースタイルに分類されます。このビールは、ピルスナーが持つ清涼感やキレのある味わいに、もう少しボディと甘みを加えたスタイルと言えるでしょう。ワールド・ビア・アワードの「ワールドベスト・ドルトムンダー(ドルトムンダー部門)」で2014年、2017年、2018年、2019年と世界一と評価されています。

製造元:田沢湖ビール(秋田県仙北市)

田沢湖ビール ピルスナー 330ml×6本セット

ピルスナー 330ml×6本セット

田沢湖ビール ピルスナー 330ml×6本セット

¥3,575
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種類:ピルスナー(ドルトムンダー)


【インドの青鬼】
クラフトビールの火付け役である「よなよなエール」の中でも人気のビールです。最初飲むときは驚くかもしれませんが、慣れればクセになることでしょう。ガツン!とくる苦味とフルーティーな香りに酔いしれる人多数。

スーパーで売られている缶ビールを薄く感じるビール通に、これはおすすめの商品です。リピーターも多い「クラフトビール」の雄です。

製造元:ヤッホーブルーイング(長野県佐久市)

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ヤッホー・ブルーイング クラフトビール インドの青鬼 350ml 24本 2ケース

クラフトビール インドの青鬼 350ml 24本 2ケース
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ヤッホー・ブルーイング クラフトビール インドの青鬼 350ml 24本 2ケース

¥14,182

種類:エール(中でもホップの使用量が多いIPA<インディア・ペールエール>)


TOKYO CRAFT】

ビール、ウイスキーで有名な大手のサントリーも個性豊かな「クラフトビール」をつくっています。このTOKYO CRAFTは、サントリーのビール製造の原点である東京武蔵野ブルワリーで醸造家たちが、こだわりを追求して生まれたビールです。

ポップの香りの良さと全体のバランスが整った、飲みやすさが特徴です。あまりお酒が強くない方でも飲みやすいと思います。

製造元:サントリー(東京都府中市)

サントリー 東京クラフト (TOKYO CRAFT) ペールエール 350ml

東京クラフト (TOKYO CRAFT) ペールエール 350ml

サントリー 東京クラフト (TOKYO CRAFT) ペールエール 350ml

種類:エール(ペールエール)


【キャプテンクロウ・エクストラペールエール】
ワールドビアアワード2017<Bitter 4% – 5%>部門にて、世界一を受賞した日本を代表するクラフトビールと言っていいでしょう。

通常の倍以上のホップを使っているので、驚きの苦味と香りを体感できます。ビールの苦味がお好きな人はぜひこちらを。

製造元:オラホビール(長野県東御市)

オラホビール キャプテンクロウ・エクストラペールエール 350ml×24本入

キャプテンクロウ・エクストラペールエール 350ml×24本入

オラホビール キャプテンクロウ・エクストラペールエール 350ml×24本入

¥8,210

種類:エール(ペールエール)


【銀河高原小麦のビール】

銀河高原ビールの中でも、定番のビールがこちら。小麦麦芽を利用した、南ドイツ伝統の「ヴァイツェン」という製造方法をアレンジした製法でつくられています。小麦麦芽を利用することで、味がまろやかで泡もちが良いことが特徴。

2017年アジアビアカップ(ヴァイスビア部門)で金賞を獲得した、堂々とした味わいをお試しください。

製造元:銀河高原ビール(岩手県西和賀町)

銀河高原ビール 小麦のビール 350ml x 24本

小麦のビール  350ml x 24本

銀河高原ビール 小麦のビール 350ml x 24本

¥6,715

種類:ヴァイツェン


【スプリングバレー 豊潤

そもそも「スプリングバレー」とは、1870年に日本のビールの礎を築いた横浜の醸造所「スプリングバレー・ブルワリー」に由来します。その志を受け継ぐキリンビールが、ただひたすらにおいしさを追求した渾身(こんしん)のクラフトビールブランドがこちらです。

その中でも豊かなモルトの甘みと繊細なホップの香りが調和し、クリーミーな泡立ちとコクのある味わいが特徴のビールがこの「豊潤」。商品名に付帯する「496」とは、キリンビールの醸造家が理想のビールを追求して行った498回の試作の中で、496番目の試作品であったことに由来しており、その過程で完成度の高いビールが生まれたそうです。

SPRING VALLEY 豊潤〈496〉 350ml x 24本

豊潤〈496〉 350ml x 24本

SPRING VALLEY 豊潤〈496〉 350ml x 24本

¥6,336

種類:エール(アメリカンエール)


【インペリアルチョコレートスタウト】

香ばしいナッツやチョコレート、コーヒーのような香りが特徴の黒系のビールを指す「スタウトビール」の中でもおすすめがこちらです。そもそもコクが強いことがスタウトビールの特徴ですが、こちらの商品はそれをさらにチョコレートの風味も加わえ、濃厚な味わいに仕上がったビールに仕上がっています。

添加物は使わずに、麦芽だけでチョコレートの味わいを出しているとてもリッチな味テイストはぜひ一度試してみる価値があります。チョコレートと聞くと甘そうなイメージとなりますが、しっかりとビールのほのかな苦みとしっかりしたコクを残しているので、まるで高カカオのビターチョコレートを味わっている感覚になるでしょう。

デザインも非常でスタイリッシュなので、特別な記念日のディナー用に飲むといいでしょう。味わいもとてもリッチなので…。スタイルはスタウトの中でも特に濃厚でフルボディなビールスタイルである「インぺリルスタウト」。このビアスタイルは18世紀末にイギリスで開発され、ロシアの皇帝室への輸出を目的としていたため「インペリアル」と名づけられたそうです。

製造元:サンクトガーレン(神奈川県厚木市)

サンクトガーレン インペリアルチョコレートスタウト 12本専用BOX入

インペリアルチョコレートスタウト 12本専用BOX入

サンクトガーレン インペリアルチョコレートスタウト 12本専用BOX入

¥9,587

種類:スタウト(インぺリアルスタウト)


【志賀高原ビール ポーター】

長野県の自然豊かな環境で造られるクラフトビールで、その「ポーター」は深い焦げた麦芽の風味と程よいホップの苦味が特徴的で、コーヒーやダークチョコレートのようなリッチな味わいが楽しめます。

この醸造所のビールは、使用する新鮮な水と厳選された原材料が、各ビールの個性と質の高さを保証しています。

製造元:志賀高原ビール(長野県下高井郡山ノ内町)

志賀高原ビール ポーター 瓶 330ml/24本

ポーター 瓶 330ml/24本

志賀高原ビール ポーター 瓶 330ml/24本

¥11,180

種類:ポーター


【COEDO 瑠璃-Ruri】

伝統的な日本の美学と最先端の醸造技術を組み合わせて、独自性と品質を追求することで知られているCOEDOのビールは、日本国内外で多くの賞を受賞しており、その美しい色彩と味わいが特徴的です。

中でもこの「瑠璃-Ruri」は、特に人気のあるピルスナースタイルのビール。このビールの魅力は、そのクリアできれいなゴールデンカラーと、クリスピーでドライな味わいにあります。瑠璃はホップの爽やかな香りと苦味がバランス良く、軽やかながらも味の深みを感じさせる一杯です。特に、食事とのペアリングの幅が広く、さまざまな料理を引き立ててくれるでしょう。

製造元:COEDO(埼玉県川越市)

COEDO 瑠璃-Ruri 350ml×24本

瑠璃-Ruri  350ml×24本

COEDO 瑠璃-Ruri 350ml×24本

¥6,827

種類:ピルスナー


【横浜ビール アルト】

横浜ビールのアルトは、豊かなカラメルの風味とモルトの甘みが特徴的で、繊細なホップの苦味がバランス良く調和しており、ドイツの伝統的な醸造法に基づいたクリアで滑らかな口当たりが楽しめるビールです。

名前の「アルト」とは、ドイツのデュッセルドルフ地域を中心に製造される伝統的なビールスタイル「アルト(Altbier)」から。アルトとはドイツ語で「古い」という意味で、この名前は古いスタイルの醸造法、つまり上面発酵(エールタイプの醸造法)を指しますが、アルトビールはその後低温で熟成される点が特徴となっています。この低温熟成は通常ラガービールの特徴であるため、アルトビールはエールとラガーの特性を併せ持つユニークなビールと言えます。

製造元:横浜ビール(神奈川県横浜市)

横浜ビール アルト 330ml (6本セット)

アルト 330ml (6本セット)

横浜ビール アルト 330ml (6本セット)

¥4,300

種類:エール(アルト)


この中からいくつか種類を用意して、みんなで味の違いを楽しむなんていうのも最高です。それぞれのクラフトビールが持つ味の違いを、ぜひ飲み比べて楽しんでみてください。ちなみに4月23日には「クラフトビールの日」です。これは1516年4月23日に、ドイツで「ビールとは一体何か」を世界最初に定めた『ビール純粋令』が施行されたのが由来だそうです。

ぜひこの日は、クラフトビールパーティを!