[目次]

▽月収1千万円級のクリエイターも輩出しているOnlyfansとは?

▽Onlyfansではファンが日常的に応援したくなるアイドル的「推し」になることが重要

▽人気ラッパーのカーディ・Bやタイガ、ベラ・ソーンなど大物セレブリティも参入

▽弁護士など高給とされる層の「Onlyfans転職」も話題に

▽急成長の裏で参入を後悔するクリエイターもいます


月収1千万円級の
クリエイターも輩出している
Onlyfansとは?

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
SOUTH PARK (NOT SUITABLE FOR CHILDREN) | Teaser | Paramount+
SOUTH PARK (NOT SUITABLE FOR CHILDREN) | Teaser | Paramount+ thumnail
Watch onWatch on YouTube

「世界最古の事業は、今やもっとも稼げる業界のひとつ」 。タブロイド誌『NewYokrPost』がそう宣言したように、アメリカでは「セックスワークこそ女性が億万長者になれる夢の職業」とする論調が増えている。その理由は、ここ数年で人気が爆発した英国発の成人向けサブスクリプションサービスOnlyfans(オンリーファンズ)にある。月収1千万円級のクリエイターを輩出しているこのサイトは、ミーガン・ジー・スタリオン「Savage Remix (feat. Beyoncé)」やアニメ「サウスパーク」で言及されるほどの知名度を確立した。

Onlyfansとは、SNSに似た成人向けサブスクリプションサービスだ。18歳以上なら誰でも登録できるが、クリエイターの多くは女性として男性に向けて性的コンテンツを配信している。ファンと呼ばれるユーザーは、好みのクリエイターに月額を支払えば画像や動画を観ることができるし、チップを出してリクエストもできる。メッセージ機能を通したクリエイターとファンの交流も盛んだ。定番の人気コンテンツはペニス評価。男性ファンから送られた写真を観て、「長さは普通だけどケアがいきとどいていて綺麗だから10点中7点」といった具合にコメントしていくという。

人気が爆発したのはコロナ禍だった。対面サービスやスタジオ撮影ができなくなったセックスワーカーたちがこのリモートワークに殺到したのだ。自粛生活で退屈していた消費者側も、新しいサービスに飛びついた。英『Financial Times』によると、パンデミック危機後ユーザー数は2千万人から1億2千万人、サービス内の取引額は7倍の17億ポンド(約3千億円)にふくれあがった。

Onlyfansではファンが
日常的に応援したくなる
アイドル的「推し」に
なることが重要

instagramView full post on Instagram

「Onlyfansユーザーが求めているのは、雑誌やSNSで見かけた人と知りあう機会。私はインターネット・ガールフレンドのようなものなの」(Onlyfansクリエイター、ダニー・ハーウッド)

このサブスクのポイントは、従来のポルノビジネスとは需要が異なっていたことだ。今の時代、ただのポルノなら無料で手に入る。そのため、性的なコンテンツをあげるだけのOnlyfansクリエイターはすぐ解約されてしまう。女性クリエイター界隈で高額課金者の定番とされるのは、現実でデートに漕ぎつけない寡夫(かふ:妻と死別・離縁した後、再婚していない状態の男性)など、孤独を感じている欲求不満の男性だ。月額会員を維持したい場合、彼らが日常的に応援したくなるアイドル的「推し」になることが重要になる。

わかりやすい例はジェム・ウルフィーだろう。セクシーなエクササイズ動画で人気の彼女は元シェフの経験を活かし、一部の課金ファンにおすすめのトレーニングやレシピを提供している。2019年時点で、月額10ドルのフォロワー数は1万人。20%の手数料を引いて単純計算すると、月1千万円以上稼いでいることになる。

注目が集まった2019年ごろ、Onlyfansは「女性に力を与えるプラットフォーム」といったフェミニズム的文言で喧伝されていった。コロナ禍で生活危機に陥っていたセックスワーカーの人々を救済した側面が強かったためだ。くわえて、従来のポルノ業界の契約よりマージンが低かったし、門前払いされがちだった黒人やトランスジェンダーの人々も活躍できる環境だった。

人気ラッパーのカーディ・Bや
タイガ、ベラ・ソーンなど
大物セレブリティも参入

2020年ごろには、人気ラッパーのカーディ・Bやタイガなど、有名芸能人が参入していった。とくに話題を博したのは、登録後24時間で100万ドル(約1億4千万円)を稼ぎあげた元人気子役でディズニーチャンネル出身のベラ・ソーンだ。こうした話題も貢献し、Onlyfansのクリエイター数は爆発的に増加していった(その後、今までOnlyfansを盛り上げてきた古株のセックスワーカーたちからの反感を買いますが…)。

そうして話題の中心は、もともとセックスワーカーでなかったクリエイターへと移っていった。特に好まれたのは、苦境からの逆転ストーリーだ。例えば2021年、失職後に学費を稼ぐためOnlyfansをはじめた元医療従事者の喜びの声が、英『Guardian』に掲載された。「Onlyfansのおかげで、自信を持つことができました。人生を改善した自分を誇りに思っています。スラットシェイミング(性規範にそぐわない女性への中傷)はあとをたちませんが、2日で1カ月分の家賃を稼げる仕事なんて、ほかにあるでしょうか?」

Onlyfansアカウントが職場で見つかって退職危機に見舞われる教職、医療従事者の報道も相次いだ。その多くは、本業の給与では生活がまかなえない状況にあった女性たちだ。一般的に不況になると、セックスワーカーが増加すると言われている。例えば「Financial Times」の分析によると、2020年英国のエスコート業の新規参入者数は前年比3倍となった。セックスワークにまつわる議論や意見はさまざまだが、一方で明確な問題は、パンデミック危機やインフレによって生活苦に陥る人々が増えた経済状況だろう。

弁護士など高給とされる層の
「Onlyfans転職」も話題に

高給とされる層の「Onlyfans転職」も話題を呼んだ。例えば、人気クリエイターのジャスミン・ジャファーは元弁護士だ。法曹としての年収分である約1千万円をOnlyfansではひと月で稼ぐことができたため、法律事務所を辞めたとのこと。セックスワークへの偏見打破を掲げる彼女は、さまざまなメディアで発信を続けている。

「私にとってセックスワークは(困窮によって仕方なく選ぶような)最後の手段ではなく、(なにかを達成するための)最初の手段です。一生続けられる高給の仕事に就いていましたが、自由と幸福を求めて選択したのです」。実際、OnlyfansによってFIRE(早期退職)を目指す人々も出てきているようだ。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

「偏見なき新世代」を訴える若者もいる。かつて産婦人科医志望のピザ屋店員だったエイブリー・リーは、(フロリダで企業としてOnlyfansに取り組んでいる)ブライス・アダムスの陣営からの勧誘を受け、そのチームの一員となった20歳。2023年には恋人とのセックス配信を中心に、月1千万円ほど稼いだとのこと。Z世代の彼女にとって、Onlyfansのクリエイターは、子どものころから慣れ親しんできたYouTuberとあまり変わりがないようだ。

「(インフルエンサーとしてのOnlyfansビジネスは)私たちの世代にとっては普通なんですよ。TikTokには、フォロワー獲得のために最低限の服しか着てない女の子たちがたくさんいます。そこからお金を稼ぐために、さらに一歩を踏み出してはダメなんですか?」

急成長の裏で参入を
後悔するクリエイターもいます

賛否両論のOnlyfansは間違いなく、アダルトエンターテイメント業参入を検討する欧米女性たちを増やした。当然、負の面も生じている。特に問題視されているのは、若者に人気のTikTokがセックスワークの入り口になってしまっていることだ。Onlyfansクリエイターたちは新規ファンを獲得するため、ほかの主要SNSで宣伝活動を行うことが多い。その結果、英語圏のTikTokではセクシーな動画をあげていない投稿者に対して、「Onlyfansをはじめて」という懇願が殺到する環境になってしまったのだ。こうした反応によって初めてサービスの存在を知り、参入してみる若者の存在も報告されている。

後悔する告白もされている。『Business Insider』に取材されたある女性は、18歳になってすぐOnlyfansに登録した。もともとSNS水着姿を載せていたりしたから自然な流れに思えたし、著名クリエイターが唱える「女性として力と責任が持てる」という言い分を信じていたようだ。実際、月2万ドル(約280万円)ほど稼げたが、メッセージ交流を含めた労働負担は大きかったし、ファンからのリクエストも過激化していったため、精神的に追いつめられていったと言う。

くわえて、ヌードを公表するリスクを理解できていなかった。ペイウォール制(対価を支払ったユーザーのみアクセスできるようにすること)だとしても、一度アップした性的コンテンツは外部に拡散されうる。つまり、従来のポルノと同じく、当人が削除を求めても永遠にインターネットに残ってしまうリスクが存在するのだ。

対面式の性的サービスが復活したロックダウン後にも、Onlyfansの勢いは止まらなかった。2023年、同サービスがクリエイターに支払った報酬は55億ドル(約7千億円)にものぼる。今や、「唯一成功した大型ギグエコノミー(フリーランスなどの立場で、単発もしくは短期の仕事を請け負う働き方)とまで評されるほどの存在だ。

もちろん、景気のいい話ばかりではない。多くのインフルエンサー業界と同じように、Onlyfansにも格差が存在する。オンラインマーケティング分析サイト『Followchain』の推定にすぎないが、チップを除外したサブスク料金ベースだと、全体収益の7割を上位10%のクリエイターが占めている。

消費者側の「推し」幻想も崩壊していっている。産業化が進み、そのカラクリが明かされていっているためだ。米『New York Times』の報道によると、あるエージェント会社は東欧、ロシアの女性たちにOnlyfans用の写真や映像を制作させている。ページ運営を行っているのはモデルのふりをした会社側で、金払いのよい客の特定やファンを夢中にさせるメッセージ術など、ことこまかにマニュアル化しているという。

ただ、そんな嘘だらけのビジネスにも、ある程度の真実が存在するようだ。リークされた書類によれば、前述した人気のペニス評価に関しては“正直に”採点しなければいけない(凌辱<りょうじょく>フェチは除く)。