予選3位のタイムで
初のフロントロウで決勝に

 2020年8月15、16日に開催された「第104回インディアナポリス500マイル」予選で、今回11度目の「インディ500」に挑んだ佐藤琢磨選手(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。すると、いきなりベストパフォーマスを叩き出します。

 予選1回目のアテンプトで刻んだ230.792 mph(時速371.424km)では9番手となり、「インディ500」を制した2017年以来となるファストナイン進出を果たします。続いてファストナイン組として8月16日(日)午後1時15分~2時15分に、「ファストナインシュートアウト」でポールポジションを懸けて争います。その結果は…3番手のスピードを記録し、ここで初のフロントロウを獲得することに。

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 そして決勝を2日後に控えた2020年8月21日(金)、インディアナポリス・モーター・スピードウェイは快晴。蒸し暑い夏とやや寒さの厳しい冬に特徴づけられる内陸型の気候。日本で言えば青森県あたりとなる、北緯39度46分に位置するこの地。気温も上がり過ぎないコンディションの中、今年の決勝に出場する33台がレース用セッティングの最終確認を行うために周回を重ねました。

 「インディ500」では伝統的に決勝の数日前に、レースに向けてキャブレターを調整する重要なプラクティスを行う日として、「カーブレションデイ」が設けられています。それを現在では、「カーブデイ」と略されて呼んでいます。

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 その「ガーブデイ」の2時間にわたる走行で、2017年の「インディ500」ウイナーである佐藤琢磨(Rahal Letterman Lanigan Racing)は4番手のタイム。決勝を目前にしたプラクティスでも意欲的にマシンセッティングをトライした佐藤選手は、そこで「スピードと安定感を両立させるマシンに仕上げることに成功した」と、自信に満ちたコメントも発しています。


決勝レースでは、日本人初のフロントロウでスタート!

 そして2020年8月23日(日)14時30分、世界三大レースの1つである「第104回インディアナポリス500マイル」がスタート。

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 予選で3番手の佐藤選手は、フロントロウのP3からスタート。 500マイル(約800km)を走る「インディ500」は、レース中のマシンアジャストも非常に重要になります。佐藤は決勝に向けて、次のようにコメントしていました。

「(チームのドライバー)3人はデブリーフを行ない、データを確認する予定です。チームのメンバーは素晴らしい仕事をしました。日曜日が待ちきれない気持ちです」

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 毎年5月に開催されていた伝統の一戦ですが、今季はコロナ禍の影響によって8月に開催延期となっていました。そうして無観客での開催となり、例年30万人以上のファンが埋め尽くしていたインディアナポリス・モータースピードウェイの観客席にはファンの姿は見えません。それでもレースをひと目見ようと、場外にファンが集っているシーンも見られました。

 ポールポジションは、マルコ・アンドレッティ選手(アンドレッティ・オートスポーツ)。祖父のマリオ・アンドレッティ氏が1969年に制しているだけに、その栄冠を獲得しようと、いつも以上に燃えていることは周知の通り。また、ポイントリーダーのスコット・ディクソン選手(チップ・ガナッシ)も2番手位置するだけに、500マイルすべてにわたって熱戦が繰り広げられることが予想できます。

104th indianapolis 500
Jonathan Ferrey//Getty Images

 そうして悪天候の予報もあったインディアナポリスでしたが、ドライコンディションでレースはスタート。まずトップに立ったのは、ディクソン選手。アンドレッティの背後につけて加速すると、一気に前へと躍り出ました。

 佐藤選手もすぐに、アンドレッティ選手を交わして2番手に浮上。アンドレッティ選手はその後、ライアン・ハンター-レイ選手(アンドレッティ・オートスポーツ)にも先行を許します。そして勢いに乗ったハンター-レイ選手は、佐藤選手も交わして一時は2番手へとアップします。

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 6周目、ジェームス・デイビソン選手(デイル・コイン)のマシンが炎上したことで、最初のイエローコーションが出されます。デイビソン選手のマシンは足回りにトラブルを抱え、右フロントのブレーキローターが過熱しての爆発。デイビソン選手はピットへと戻ろうとしましたが、火の手が上がったためマシンをコース内側に止めることになります。

 そして13周目にリスタート。トップ3の順位は変わりません。やがて25周目には、今後は8番手のマーカス・エリクソン選手(チップ・ガナッシ)が、ターン2で挙動を乱してのクラッシュ。ここで2度目のコーションが出されます。ピットレーンがオープンすると、最初のコーションでピットに入った7台がステイアウトし、それ以外のマシンがピットになだれ込むといった状況となりました。

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 佐藤選手はピットに入ったマシンの中で、ディクソン選手に次ぐ2番手でコースに合流し、チームワークでひとつポジションを上げたカタチになります。後ろには、アレクサンダー・ロッシ選手(アンドレッティ・オートスポーツ)が続きます。そうしてオリバー・アスキュー選手(アロー・マクラーレンSP)を先頭に、32周目にリスタート。ここで佐藤選手は、速度の遅いマシンの後ろに詰まってしまい、9番手から13番手までポジションを落とすことに…。

一時は13番手になるも
果敢に攻める佐藤選手

 45周目のこと、トップを快走していたパジェノー選手がピットインすると、アスキュー選手もこれに続きます。トップオフ組が次々にピットインし、ディクソン選手がトップに復帰するというカタチ。続いてロッシ選手、リナス・ヴィーケイ選手(エド・カーペンター)、ハンター-レイ選手、そうして佐藤選手というトップ5が形成されます。

 すると59周目、2度目のピットストップが近づくところで仕掛ける佐藤選手。ハンター-レイ選手を交わし、4番手へと浮上。次に61周を過ぎたところで、次々と各車2度目のピットストップをしていく中、3番手につけていたヴィーケイ選手がピットインでクルーに接触するという事故も起きます。

 この段階で8番手の佐藤選手でしたが、これを機に次々とオーバーテイクを重ねていきます。72周目にはロッシ選手をオーバーテイクし、5番手に浮上。するとアスキュー選手やパジェノー選手などのトップオフ組がピットへと入り、佐藤選手は再び2番手となります。しかしながらトラフィックの中を走っていた佐藤選手やロッシ選手に対し、ディクソン選手は10秒以上のリードを築いていたのでした…。

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 ところが85周目、ダルトン・ケレット選手(A.J.フォイト)がクラッシュ。3度目のコーションとなります。ここでディクソン選手のリードタイムは、一気になくなります。そしてこのコーション中、まず上位陣がピットイン。トップオフ組は一旦ステイアウトしましたが、結局3周後にピットインし全車のタイヤ、燃料の状況がほぼそろったカタチになります。

 93周目にグリーンフラッグ(コースクリアを意味します)が振られますが、コナー・デイリー選手(エド・カーペンター)とアスキュー選手が最終コーナーでいきなりスピン。この2台がピットレーン入り口で絡むようにクラッシュして、すぐに再度コーションが出されるのでした。

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 リスタートは101周目、するとロッシ選手がターン1で佐藤選手のイン側へ飛び込んでオーバーテイク。ロッシ選手はディクソン選手めがけて猛追。102周目にはディクソン選手をも交わしてトップに立ちます。しかしながら106周目、ディクソン選手がスルリと抜き返します。その間、佐藤選手はパトリシオ・オワード選手(アロー・マクラーレンSP)にも抜かれ4番手になりますが、すぐにポジションを取り戻して3番手へと踊り出ます。前にいるのは2台のみ。

 122周目にはアレックス・パロウ選手(デイル・コイン・レーシング with チームゴウ)がクラッシュし、5回目のコーションとなります。このコーションで全車がピットインしますが、佐藤選手のマシンにピットアウトしたロッシ選手のマシンが接触…。その後ロッシ選手には、アンセーフリリースのペナルティが出され、隊列の最後尾の22番手まで後退することになります。またアロンソ選手は、ギヤがスタック。このタイムロスが大きかったのでした。

 そして132周目にリスタート。佐藤選手はチームメイトであるグレアム・レイホール選手に抜かれ、実質上3番手に後退するのですが、すぐに佐藤選手はレイホール選手を交わして前へ出ます。そうして少しずつ、ディクソン選手との差を縮めていきます。しかし、今度はロッシ選手がクラッシュ。144周目には6度目のコーションが出されることになります。ロッシ選手のマシンからはオイルこぼれ、その処理が長引き、リスタートは155周目に。後ろのレイホール選手が佐藤選手に襲いかかるも、佐藤選手は巧みにブロックして2番手をキープします。

 そうしてこの日、ストレートでの伸びは光る佐藤選手は、ついに157周目でディクソン選手を捉えます。ここで、このレース初のトップに躍り出た佐藤選手。しかしながらディクソン選手も、すぐ背後を追走し続ける状況。燃費を節約しながら、ピットインのタイミングをうかがう戦略です。

佐藤選手、
ストレートの伸びに曇りなし

 やがて168周目、アンドレッティ選手がピットインしたのをきっかけに、各車が最後のピットストップへと向かいます。佐藤選手は169周目に、ディクソン選手は170周目に、ピットインを行います。このピットストップ戦では、ディクソン選手を率いるチップ・ガナッシ・レーシングに軍配が上がります。ディクソン選手は佐藤選手よりも先にコース復帰。しかし、この日の佐藤選手のスピードに曇りなし…173周目のターン1で、ディクソン選手をオーバーテイクすると、またもトップに躍り出るのでした!

 そして、試合巧者の佐藤選手が実力を発揮。周回遅れをうまく利用して、ディクソン選手との差を1秒に広げていきます。しかしながらディクソン選手も、そう簡単に離されません。佐藤選手にテール・トゥー・ノーズでプレッシャーをかけてきます。

 ディクソン選手は何度か、佐藤選手に並びかけます。ですがこの日、佐藤選手のストレートでの伸びは段違い…。息詰まる接近戦を繰り広げながらも、残り8周のところで佐藤選手の前に現れた3台の周回遅れをうまくコントールする強者佐藤選手。これで残り5周の時点で、ディクソン選手に対して1.1秒のギャップを築くことに成功します。

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 するとその直後、スペンサー・ピゴット選手(Citrone Buhl Autosport with RLL)が大クラッシュ。ピットレーン入り口のバリアに衝突した衝撃は大きく、ピゴット選手は意識あるものの担架で救出されます。これで7度目のコーションが出されると、レースはそのままイエローチェッカーとなります。

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 そうして佐藤選手が2017年に続き、「インディ500」での2勝目を達成したのでした…。

104th indianapolis 500
Jonathan Ferrey//Getty Images
「第104回インディアナポリス500マイル」で優勝を果たし、恒例の「Winners Drink Milk!」ののち、残ったミルクを自らの頭に注ぐ佐藤琢磨選手。

おめでとうございます、佐藤選手‼

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