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SHOJIRO NAKABAYASHI

自己との対話——
何者でもない自分になる旅へ

一人になる時間…、自分と向き合う時間を見つけることを現代人は上手にできているでしょうか。

外国で出会う人々の中に、あなたの素性や地位を知る人などいないでしょう。また日本文化のような、隅から隅まで行き届いたサービスを期待できない場合もあります。試され、そして頼れるのは、あなたの持つ人間力のみ…。大人には今の自分と対峙する時間が必要なときがあります。ただ余暇を楽しむのではなく、一人旅で自分と対話し、含有量を増やす機会を得る旅だって、ときにはアリなのではないでしょうか。

異邦人の孤独感を感じながら、外国でも気高い人として過ごしたいという心意気を胸に一人旅へといきましょう。一番大切なのは「自分が自分でいること」で、自尊心なしに人生を歩むべきではない…のです。

フランス・ナント(Nantes)という街の魅力

創造性を高め、感性を刺激するアートとグルメの街「ナント(Nantes)」。フランスの西部、ロワール川河畔に位置し国内で6番目に大きい都市です。2004年に米誌「タイム」が選ぶ「欧州で最も住みやすい都市」で1位に選ばれただけでなく、仏誌「ル・ポワン(Le Point)」でも住みたい街ランキングで常に上位に選出されている人気の高い都市です。治安の良さだけでなく、取材日の週末(2022年6月11日)には大規模な「Gay Pride de Nantes 2022」が開催予定ということもあり、18世紀に建てられた劇場兼オペラハウス『Théâtre Graslin』には大きなレインボーフラッグが掲げられ、LGBTQ+にフレンドリーなダイバーシティという一面もみせています。

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パリからナントへのアクセスは? 》

  • 鉄道:パリ・モンパルナス駅から高速鉄道TGVで2時間。1日に23本の列車が運行。パリ・シャルル・ド・ゴール空港駅からの直通TGVは所要3時間。
  • 車:パリから4時間。
  • 飛行機:パリ=シャルル・ド・ゴール空港からナント・アトランティック国際空港まで1時間。フランスおよびヨーロッパの各都市を結ぶ便が運航。定期便が就航している都市は100以上。空港から市中心部まで15分。

さて、そんな知的包容力のあるナントという街は、「アートの都」という代名詞が当てはまるほど、街中が芸術という“夢”に囲まれています。なんと言っても、あの『月世界旅行』『八十日間世界一周』、『海底二万里』の作者ジュール・ヴェルヌが生まれた都市ですから…。大人も子ども無意識に芸術に触れ、その世界の中で日々を過ごしています。アートが平穏な街の日常に静かに溶け込んでいる、それが「ナント」という街の魅力と言っていいでしょう。

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そして、ナントに拠点を置くクリエーター集団『ラ・マシーン(La Machine)』によって旧造船所の広い土地を再利用して創作されたのが、遊園地!?とも言える大人も子どもも楽しめる『レ・マシーン・ド・リル(Les Machines de l’île)』です。もちろん、敷地内は入場無料。「海の世界のメリーゴーランド(Carrousel des mondes marins)」など…アトラクションなどに乗車するときのみ入場料を払う必要がありますが、外から眺めているだけでも十分にインパクトがあります。

中でも、ここの象徴とも言えるのが、高さは約12m、重量50トンほどもある機械仕掛けの“巨大な象”。実際に乗ることも可能で、鼻の先から水しぶきが上がります。クラシカルなナントの街並みを背景に横目には車が普通に走る道路…、その側をSFのような重厚感のある象のマシーンがゆっくり練り歩く姿とのコントラストがなんとも不思議な世界に誘ってくれます。

preview for Grand elephant|Les Machines de l’île

🏉

「選手時代はフランスに試合で2度きています。でも、一人できたことはまだありません。近い将来、一人旅をしたいと思っていますよ…」-- 大野 均さん

現役選手時代に、フランスには試合で2度訪問過去がある大野さん。今回のフランス旅を含めば3回目だという彼は、「ラグビーの遠征などで、これまで数多くの外国へ行ってはいます。とは言え、まだ人生で一人旅をしたことはないんです。これまで、ほとんどの時間をラグビーに捧げてきたからでしょうか…。現役を引退したので、近い将来は時間をつくって行きたいと思っています。いまは“大野 均”というチームのヘッドコーチでもあり現役選手でもあるので、自分の内面を多角的に考察しながら学んでいかなくては…って思っています。そんな自分には、一人旅が絶好の機会となるでしょうね」と、胸の内を明かしてくれました。

私たちがアート(芸術)に触れる理由はどこにあるのでしょうか。インスピレーションを受けて、新たな自分に出会う…、または本来の自分を再認識する…、それを行うには、一人旅として「ナント」はうってつけの都市なのです。

ナント市内を流れるロワール川沿いエリアで、かつて造船業で栄えていた「ナント島」。北を流れるマドレーヌ川と南を流れるピルミル川という、2つのロワール川の分流に囲まれており、その川沿いに「La Cantine du Voyage」があります。文字通り“旅の食堂”。

大人の休息には、
大人の給食!?

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SHOJIRO NAKABAYASHI
「La Cantine du Voyage」Google MAP 公式サイト(英語)
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サスティナブルを意識したダイニングエリア、バーなどがあり食事を楽しむことができます。野菜やハーブなどは隣接する「野菜園」から提供されており、フレッシュで安全性が重視されています。

アートとグルメは、一直線上にあるほど親密な関係にあるとも言えます。食事へのこだわりからは、その人の心に宿る文化・伝統を察することができるでしょう。さらには、その選択にその人の哲学も読み取ることも…。(とは言え、一方でゴッホは何も付けないパンを食するのが習慣でしたし、ピカソも作品『貧しき食事』と同様、パンとワインのみの粗末な食事ばかりだったということも聞きますが、あしからず…)

さてここからは、大人におすすめできるナントの素敵なレストランをご紹介します。

前仏大統領も訪問、
アールヌーボー様式の
ブラッスリー

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la cigale
存在しない画像
スタッフ総出でサプライズのバースデーソングが歌われていました。

ベルエポック期…1895年に建設され、歴史的建造物にも指定されているおそらく世界で最も美しい!? ブラッスリー『La Cigale』。地元でも人気の飲食店です。

グラスラン広場の南側に位置し、建築家エミール・リボディエール(Émile Libaudière)によって設計され、さらに彫刻家エミール・ゴーシェ(Émile Gaucher)と、画家ジョルジュ・ルヴロー(Georges Levreau)によって装飾されたアールヌーボー様式の店内。フランソワ・オランド前仏大統領も2021年に訪れています。

『La Cigale』公式サイト(仏語)
Google MAP

ミシュラン1ツ星で
ナント島を一望

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restaurant l'atlantide 1874,レストラン・ラトランティッド1874
SHOJIRO NAKABAYASHI
写真右、シェフのジャン・イヴ・ゲオ氏(Jean-Yves Guého)

ロワール川を挟んで、ナント市街を一望できる高台エリア…サンタンヌの丘にあって隠れ家のようなミシュラン1ツ星『レストラン・ラトランティッド1874(Restaurant L'Atlantide 1874)』。

地元の海鮮や野菜にこだわり、お店の庭で育てているハーブ類を使用し、モダンに昇華。色鮮やかで見て楽しく、優しい口当たりです。

ミシュラン,lunch at  l’atlantide 1874 –maison guého

1962年生まれのシェフのジャン・イヴ・ゲオ氏は、幼少より叔母の小さなレストランの手伝いを好み、14歳から料理の道へ…。仏アルザス地方の名店、米国、香港で経験を積み、1990年にフランスに帰国し「パリ・オ・メリディアン・モンパルナス」のシェフとしてミシュラン1ツ星を獲得。さらに、自身の店を持ちたいとナントに『レストラン・ラトランティッド1874』を開店し、1999年に1ツ星を獲得しました。

『レストラン・ラトランティッド1874』公式サイト(仏語)
Google MAP

🏉

「実家が酪農家で、
そういえば…
昔はチーズも売ってたなぁ」
-- 大野 均さん

ご存知の人も多いかと思いますが、フランスでは「アペリティフ(夕食前の時間)」に、チーズとワインのペアリングを楽しむ時間があります。メイン料理の後にチーズを食することもありますが、ワインと同じようにチーズはフランス文化になくてはならない存在と言えるでしょう。

今回のフランス旅で、幾度なくチーズを食するタイミングのあった大野さんは、あるときこんな話をしてくれました。「(福島県郡山市出身の)実家は、農業と酪農を営んでいまして…。そう言えば、うちもチーズも作ってはそれを町で売っていました。人気で売り切れていましたね…。発酵をやめるタイミングや練る長さなど、悩みながらこだわってつくっていたのを思い出します。だから、味わい深いですね。日本でも日常的に接するものでも、こうして旅先で触れると改めて自分の中の記憶の奥から引き出してくれるんですね…。旅先の空気感とか波長っていうのが、普段使っていない脳の働きを活性化してくれるんでしょうか(笑)。なつかしいな…」と、思い出を語ってくれました。

そう、不思議なことに旅の途中には、異文化・異国の環境に身を置きながらもふと、そこで触れたモノ・コト・ヒトが呼び水となって、自分のルーツ・故郷の思い出がよみがえる場面がよくあるものです。初めて来た土地なのに、どこかノスタルジーを覚え感傷的になってしまったこと、今までありませんでしたか? 自分のこれまでの歩みを、まさに見つめ直す機会としても機能するのが、一人旅の醍醐味でもあります。

地元ラグビーファンも集う、
スタジアム内のレストラン

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mirco bergamasco
SHOJIRO NAKABAYASHI
写真右、イタリア元ラグビー選手で、現在はナントのラグビークラブ「スタッド・ナンテ」でコーチを務めるミルコ・ベルガマスコ監督(Mirco Bergamasco)。
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la terrasse du stade

地元ラグビークラブ「スタッド・ナンテ」のスタジアム、「スタッド・パスカル・ラポルト」の敷地内に併設されているレストラン『ラ・テラス・デュ・スタッド(La Terrasse du Stade)』です。カジュアルな雰囲気でとても入りやすく、店内でもテラスでも食事が楽しめます。

giffard menthe pastille
1885年にフランス・アンジェで創業したリキュールメーカー「ジファール」のミントが香る『マント・パスティーユ』。上品な爽快感でホワイトミントが口元をクリアにしてくれるので食後酒としておすすめ。
存在しない画像

ナントの中心部にある1600席のスタジアム「スタッド・パスカル・ラポルト」。地元チームの愛称は、ナントにゆかりのある動物「象(Les éléphants)」です。

『ラ・テラス・デュ・スタッド』公式サイト(仏語)
Google MAP

ここで、2023年10月8日にナントで対戦予定の“日本 vs アルゼンチン”を観戦しようと考えている日本のラグビーファンの皆さんには注意が必要です。ナント地元ラグビークラブのスタジアムは、「スタッド・パスカル・ラポルト」ですが、RWC2023フランス大会でのスタジアムは「スタッド・ド・ラ・ボージョワール」です。

vs アルゼンチン戦の会場は
「スタッド・ド・ラ・ボージョワール」

stade de la beaujoire
stade de la beaujoire

集客数3万5322席のスタジアム「スタッド・ド・ラ・ボージョワール(STADE DE LA BEAUJOIRE)」は、サッカークラブチーム「FCナント」のホームスタジアムとしても知られていますが、現在はRWC2023フランス大会に向けて工事中です。RWC2023フランス大会の観戦はこちらですので、お間違いなく!!

「スタッド・ド・ラ・ボージョワール」Google MAP

🏉

案内人:
大野 均 Hitoshi Oono
1978年5月6日生まれ。福島県郡山市出身。身長は192cm。高校までは野球部に所属するも、日本大学工学部へ進学するとラグビーに熱中。大学卒業後に東芝府中ラグビー部(現・東芝ブレイブルーパス東京)に入団。やがて頭角を現し、2004年に日本代表初選出。さらに2007年、2011年、2015年と3大会のワールドカップに出場。国際試合出場歴の98キャップとなり、歴代最多を誇る。ジャパンラグビートップリーグでは170試合に出場し、ベストフィフティーンには9度選出。2009-2010シーズントップリーグではMVP受賞。そして2020年に現役を引退し、現在は東芝ブレイブルーパス東京のアンバサダーを務める。そんな彼の座右の銘は、「灰になってもまだ燃える」。


《取材協力》フランス観光開発機構ナント観光局、エールフランス航空記事はこちら