トウモロコシ畑で野球を ― 映画『フィールド・オブ・ドリームス』を再現
多くの人が一度は「実際に観ることができたら…」と願ったであろう試合が、ときを超えて現実になりました。
If you build it, he will come.(それをつくれば、彼はやってくる)
現地時間8月12日(木)、アイオワ州ダイアーズビルにあるトウモロコシ畑の中につくられた仮設の野球場で、なんとメジャーリーグの公式戦がナイトゲームで行われました。「トウモロコシ畑」に「野球場」と来れば、ピンとくる人も少なくないでしょう。そう、映画『フィールド・オブ・ドリームス』の世界です。
この映画は1989年に全米で公開(日本公開は1990年3月)された、ケビン・コスナーが監督・主演を務めた人気作。野球を題材に夢と希望を描き、アカデミー賞の作品賞・脚色賞・作曲賞にノミネートされるなど、大ヒットを記録しました。劇中に登場する“それをつくれば、彼はやってくる”というセリフも印象的でした。
映画の世界を再現した今回の取り組みは、2019年8月8日(現地時間)アメリカ大リーグ機構(MLB: Major League Baseball)によって発表されていたものです。当初は2020年の開催が予定されていましたが、コロナウイルスの影響で1年間延期された末にようやく開催された全米注目の一戦でした。
Is this heaven?(ここは天国なのかな?)
対戦カードは映画で描かれた試合同様、シカゴ・ホワイトソックス対ニューヨーク・ヤンキースの一戦。試合開始前にはケビン・コスナー氏が登場し、「ここは天国なのかな?」と有名なセリフで、この日スタンドを埋めた約8000人の観客に呼びかけました。その後、映画のシーンさながら、選手たちがトウモロコシ畑の中からフィールドに登場。映画の世界を具(つぶさ)に再現してくれました。
試合は合計8本のホームランが、トウモロコシ畑に飛び込む熱戦に…。9回裏にティム・アンダーソン選手のサヨナラホームランが飛び出し、ホワイトソックスが9対8で勝利。映画顔負けのドラマチックな幕切れとなりました。
アメリカのFOXコーポレーション傘下のスポーツメディア部門・FOXスポーツによると、この試合のテレビとネット視聴の合計は約590万3000人に達し、「2006年以降のレギュラーシーズンで最多となった」と発表しました。また、MLBが球場建設に投じた金額は約500万ドル(約5億5000万円)とも報じられ、入場チケットは転売サイトで平均1400~1500ドル(約15万4000~約16万5000円)の値が付くほどの人気だったとのことです。
記事の冒頭にある“それをつくれば、彼はやってくる”をもじって、“野球場をつくれば、金もやって来た”と揶揄する声もあるようです…。しかしながら、「不正投球問題(ボールに異物を付着させることで球の回転数を上げ、投球の球速アップを図る不正行為の疑い)」や、2020年に球界を揺るがしたヒューストン・アストロズが「サインを不正に盗んだとされる問題」など、暗いニュースが立ち込めていたMLBにとっては、久しぶりに野球そのものの魅力が詰まったポジティブな出来事だったと言えるかもしれません。
なお、MLBのロブ・マンフレッドコミッショナーは今回同様の「フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム」を、2022年シーズン8月に開催することを発表しています。どのチームが参加するのかは、まだ明らかになっていません。