ハイエンドな不動産を扱う米国のコナーグループのリーダー、ラリー・コナー氏は2021年1月に、スペースX社のカプセル型宇宙船「クルー ドラゴン」を使ったISSへの飛行ミッションに対し最初の乗客として名乗りを上げました。しかもそれだけでなく、2021年4月には世界で最も深い海溝と言われているマリアナ海溝の深淵を目指すことも決意したようです。

 このマリアナ海溝の最深部とされるチャレンジャー海淵の底(深さ1万912メートル)に人類が初めて到達に成功したのは、1960年のこと。スイス人技術者のジャック・ピカール氏が父親のオーギュスト・ピカール氏と一緒に設計したバチスカーフ(推進力を持ち深海を自由に動き回ることが可能な小型の深海探査艇)「トリエステ(Torieste)」号の耐圧殻(たいあつこく)の中にドン・ウォルシュ米海軍中尉(当時)と共に乗り込み、世界で初めてマリアナ海溝チャレンジャー海淵の海底に到達しました。

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Keystone//Getty Images
船に積まれようとしている「トリエステ」号。下部中央にある円形の部分が耐圧殻で、この狭い空間に二人は乗り込んでいました。

 コナー氏は宇宙に続いてEYOS ExpeditionsおよびCaladan Oceanicと提携して、マリアナ海溝の水面下にあるチャレンジャー海淵とシレナ海淵の探索に参加するとのこと。搭乗予定の深海探査艇「Limiting Factor(リミティング・ファクター)」は、2019年4月にヴィクター・ヴェスコヴォ氏が単独乗船し、世界で4人目のチャレンジャー海淵到達を果たしたときに使用されたものです。

 民間人を乗せたこの挑戦は、コナー氏が宇宙への旅を発表した後に誕生しました。海底探査チームはコナー氏の熱心な探査への情熱を感じており、今回の話をもちかけたそう。そして、任務の費用を負担してもらうかわりに、彼が指揮を執ることを承諾したということです。

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Mariana Trench: Record-breaking journey to the bottom of the ocean - BBC News
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 「過去2年間、彼らはマリアナ海溝で画期的な研究を行ってきました。継続したい意思に反して、この研究には莫大な資金が必要だったのです」と、コナー氏は話しています。「正直にお話すると、深海調査については何も知りませんでしたが、学べば学ぶほど、これらの人々は高度な専門家であり、安全に行けること、そして研究は非常に貴重な体験であることを確信できるようになりました」と続けて話します。

 一方、スペースXの「Ax-1(アクシアム)ミッション」のほうは…史上初となる民間人4人による国際宇宙ステーション(ISS)への滞在ミッションについて、コナー氏はこう話しています。

 「私たちはプロの宇宙飛行士の基準に従って、訓練を行っています。これは民間人にとって特別な機会であり、指示通り正しく行う必要があると思っています」とのこと。彼以外の搭乗予定者は、元NASA宇宙飛行士のマイケル・ロペス=アレグリア氏と元イスラエルの戦闘機パイロットであるエイタン・スティベ氏、カナダの投資家であるマーク・パシー氏の計4名。もちろん、2人の専門家がここでは主導します。

 ラリー・コナーは2021年4月現在、71歳です。彼を見ていると、年齢と情熱の熱さは比例しているようにうかがえます。同じ年のうちに宇宙へと旅立ち、次には海の底まで行くという前人未踏の冒険を連発した最初の人となるわけです。彼のこの驚くべき探求心と情熱は、決して「金持ちの道楽が…」と言ってヤジることで終わらすことのできないロマンがあります。そして、計り知れないほどの勇気さえ与えてくれるでしょう。

Source / ESQUIRE IT

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