地方出身の私(筆者)が思うこと、それは…「地方は衰退していくのか? 壮大な自然と圧倒的な歴史を持ちながら、地方と都会の差は何? 勝ち目はないの?」。 

 …と、硬派な冒頭から始まりましたが、古今東西とわず優秀な人材、一級品は都に集まるものです。規模の大きさ、人口の多さは経済を支える基盤になり、この点では勝敗は見えています。「辛いけど否めない…」。

 特に日本の中央集権型の流れを塞き止めるは、非常に難しい現実。しかし、そんな人の多さという数に対抗できる手段、しのぐモノがあるとすれば「デザイン=美」の力となるでしょう。その証明を富山・岩瀬が見(魅)せてくれました。

 そして、もひとつ忘れてはいけないのが、人間の煩悩(ぼんのう)を刺激する「美味しい食材・旨いお酒」。これが、足を動かすいちばんの動機づけとなる人も多いことでしょう。
 

「優美と気品」の製造所

旅の案内人は、1893年(明治26年)から継ぐ蔵元「桝田酒造店」5代目社長、“美と贅”を知り尽くす桝田隆一郎さん。富山・岩瀬地区に美しいまち並みをと立ち回る、地元の名手(名酒)です。

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 “吟醸酒のパイオニア”とも称される蔵元。「磨いた酒米を蒸す → 麹(こうじ)を付ける → 発酵 → 搾(しぼ)る」という一連の工程を説明していただきました。創業当時のまま変わらない蔵内。「美味しいものを知らなければ美味しいお酒は造れない」という美味求眞をモットーに、富山の豊かな食材と調和し引き立てるお酒『満寿泉(ますいずみ)』を展開しています。

 お酒造りはまさに職人芸。1893年から培われた知識と経験が、口当たりの優しいエレガントな味わいを生むのでしょう。

 紳士服を愛したイギリスの政治家ウィンストン・チャーチルは、こう語っています。

「職人の技術や誇りは一朝一夕にできるものではない。長年かかって生み出されるのが気品である。私はその気品を買っているのである。」―Sir Winston Churchill

 このクラフツマンシップは、江戸初期から北前船の港町として栄えてきたここ富山・岩瀬の日本酒でも同じことが言えるでしょう。そう「気品が飲める」のです。

伝統 × 伝統 = 革新

 そんな富山・岩瀬で造られる日本酒『満寿泉』は、伝統を継承するだけでなく革新的な挑戦を続けるブランドでもあります。

 ローカル(限定的な地域や地方)で生まれながら、グローバル(地球規模で全世界的な)に展開するお酒でもあるのです。まさに、“グローカリゼーション”を体現しているモデル。お隣の県も見ておらず…、そして日本の首都である大都市を後目に、およそ8,888km離れた、スコットランドのキースに蒸留所を構える「シーバスリーガル」と手を組みました。

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Photograph / Tatsuya Ozawa
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「フィニッシュまで爽やかな味わい」

 カテゴリー、国を超えて絆が生まれ、『満寿泉』と「シーバスリーガル」がコラボレーションした特別な日本酒『リンク 8888』が誕生しました。

 このコラボレーションは、「シーバスリーガル」の原酒の熟成に12年以上使用したアメリカンオーク樽を、スコットランドから日本へ送り、それらの樽で特徴の異なる数種の『満寿泉』を熟成させるという試みでした。


■ブレンド

 日本酒『リンク 8888』では、数種類の異なる「シーバスリーガル」の樽、異なる酵母を使った精米歩合35%の純米大吟醸を中心としたブレンドによって日本酒が造り上げられています。主に山田穂を使った純米大吟醸、さらに山田錦純米大吟醸やワイン酵母を使用した原酒も使用しています。


■テイスティングノート

  • 外観: 清澄度が高く澄みきったクリアカラー。ほのかな黄色味。
  • 香り: ミルキーでクリーミーな風味が、スコッチウイスキーの微かなアロマにコーティング。
  • 味わい: 全体にハーブを思わせるフレッシュで蜂蜜のような甘いテイスト。

…オーク樽由来の微かなオークやバニラのアロマにコーティングされ、フレッシュでありながらミルキーでクリーミーな日本酒のミドルボディーの味わい。フィニッシュの味わいは落ちることなくラストまでフレッシュさが続き、キュッと上がって余韻が終わるのです。
 

富山湾の海の幸でお酒がすすむ名店4選

 さて、美味しいお酒の相棒にも、美味しい食材が欠かせませんね。富山湾でとれる新鮮で旨い海の幸にありつけるのですから、最強のコンビです。

 桝田さんが中心となって、廻船問屋が建ち並ぶエリアは、歴史ある建物をリノベーションし、魅力を発信するために、町おこしを行ってきた場所です。そんな、エリアにある行くべきお店を4つ、桝田さんに案内していただきました。

◇御料理 ふじ居
御料理 ふじ居

「富山湾の鰤を食ってから死ね!」

 「ナポリを見てから死ね」ではないですが…、富山湾でとれる脂の乗った鰤(ぶり)を食べずに、鰤は語れないことでしょう。

 金沢、京都で修業をしたオーナーシェフ藤井寛徳さんが、2011年に店を構えた「御料理 ふじ居」。2019年に風格ある日本庭園を眺める屋敷に移転オープンしました。

 氷見の寒鰤は見事な大きさ。さらに、富山・大長谷で仕留められ適切に処理された月輪熊(ツキノワグマ)を使った「熊鍋・氷見うどん」もインパクトがあり美味です。

《INFO》
富山県富山市東岩瀬町93
TEL 076-471-5555
営業時間 12:00~15:00、18:00~22:00
定休日:月曜、第3火曜
要予約
公式サイト

◇ピアット スズキ チンクエ
ピアット スズキ チンクエ

富山の地産地消で素材の旨みを堪能

 東京・麻布十番のミシュラン1つ星「ピアット スズキ」で修業した、鈴木五郎さんが富山でオープンしたお店。魚介類はほぼすべて富山産。地産地消の品々をイタリア料理に解釈し提案しています。ダイナミックな子羊と子ヤギのグリルや、甘みを堪能できるグリル野菜にあわせるのは、ワイン酵母で仕込んだ純米生酒がマッチすることでしょう。
 
《INFO》
富山県富山市東岩瀬町93
TEL 076-482-4014
営業時間 11:30~15:30(L.O. 14:00)、18:00~22:00(L.O.20:15)
定休日:月曜、第2・第4日曜
公式Facebook

◇GEJO
鮨店『GEJO』

2020年1月にオープンしたばかりの鮨店

 岩瀬の町の新たな息吹のひとつとして、2020年1月10日にオープンしたばかりの鮨店。この日は、富山湾の名物白エビとヒラメを堪能。ワイン樽で仕込んだという『満寿泉 純米大吟醸スペシャル』とのマリアージュが今日の気分です。

《INFO》
富山県富山市東岩瀬町180
TEL 076-471-8522
営業時間 12:00~15:00、18:00~22:00
不定休
公式サイト

◇カーヴ ユノキ
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1日1組限定! 特別に開かれるフレンチ

 富山の食文化を発信するべく、築100年の蔵(カーヴ)を改装した「カーヴ・ユノキ」。広々とした空間で、肩ひじ張らないリラックスした時間を過ごせます。シェフの柚木栄樹さんが提供してくださったのは、メジマグロとアオリイカの熾火(おきび)焼。『満寿泉』の純米大吟醸で乾杯です。
  
《INFO》
富山県富山市東岩瀬102 森家土蔵群二番
TEL 076-471-5556
営業時間 【水曜~日曜】ランチ 12:00~14:30(L.O.12:30)
     【火曜~日曜】ディナー 18:00~22:00
定休日:月曜日
公式サイト 
 

シンプルでエレガンスな町とダイナミックな先駆者

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Photograph / Tatsuya Ozawa

 欧米の“期待する日本の美”に迎合することなく、揺るぎない日本の伝統美が加味され富山・岩瀬地区の町づくり....。日本文化に精通する人の心にも打つ、絶妙な塩梅に長けている町なのです。 

 「単なる観光地にする気はありません。分かる方にだけ来ていただければ十分です」、そう語る桝田さん。残念ながら彼の願いはかなうことは難しいかもしれません。その理由は、遠くない将来、富山・岩瀬が世界中からお酒とグルメを求める練れ者たちが集まる、日本を代表する名所になるのも時間の問題だからです。
 
 上質でエレガンス…、美を追求する町。この豪快なリーダーは、宝物のありかを知っているのでしょう。なぜなら、桝田さんと話す町の人たちは自然と笑顔に包まれるのですから。

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●『リンク 8888』に関するお問い合わせ先
ペルノ・リカール・ジャパン
TEL 03-5802-2671

●満寿泉/桝田酒造店とは?
…1893年(明治26年)創業の富山を代表する蔵元。「美味しいものを知らなければ美味しいお酒は造れない」という美味求眞(びみきゅうしん)をモットーに、食材の宝庫である富山で豊かな食材と調和し引き立てる酒「満寿泉」を展開。世界的な品評会インターナショナル・ワイン・チャレンジのSAKE部門で金賞を獲得。更に国内では数多くの受賞歴を誇る、高品質な日本酒の代名詞です。「酒の味は時代と共に変化するもので、その時代の感性にあった酒がある」という思いから、伝統的な造りのみならず、多くの新たなチャレンジを行っています。2017年、ネスレ社のキットカットとタイアップした「キットカット満寿泉」が発売。海外においても高評価で、ジェトロと連携し、イタリア、台湾、シンガポール、オーストラリアなどへ輸出。
●シーバスリーガルとは?
Roof, Sky, Landmark, Building, Architecture, Church, Tree, Steeple, Chapel, House,
JOHN PAUL
…スコッチウイスキー「シーバスリーガル」は、1801年まで歴史を遡るシーバス・ブラザーズ社のフラッグシップ・ブランド。世界100ヵ国以上で愛飲されています。「シーバスリーガル」のキーモルトとなる豊かでまろやかなシングルモルトは、ストラスアイラ蒸留所で造られています。ここで生まれるモルトウイスキーは、スペイサイド特有のフルーティーでフローラルな香りと、樽熟成由来のナッティーでドライな味わいが特徴で、「シーバスリーガル」のリッチでまろやかな味わいに貢献しています。