SF作品ですので、想定した未来に発展した(または、しすぎた)状態を哲学することが定石ですので、(破綻した近未来を描く)ディストピア的な陰謀論を好むことは当たり前のことになります。そうして観客の心を揺さぶることが、映画の役目であり宿命とも言えるのですから…。
そして、「人間は世界を支配する謎のAIの電池に過ぎない」、「現在の人生は単なるシミュレーションである」といったアイデアによって、その最たる例となったのがこの映画『マトリックス』です。
キアヌ・リーブス演じるコンピューターハッカーのネオが、人類の新たな救世主となるこの映画は、インターネット時代の幕開けというこの上ないタイミングで公開され、聴衆に強烈な衝撃と不安、そして夢を与えました。
スタイリッシュで魅力的な演出、イーロン・マスクのような人物も、「事実かもしれない」と思える説得力ある前提条件、幾度となく他作品で模倣されてきたアクションシーン、21世紀の生命に関する予言などなど、単なるカルトの枠を超えた名作と断言できる作品です。