◇「筋肉増強サプリ」って副作用がある?

 市販されているサプリメントには、自然な筋肉増強に役立つことを謳う様々な粉末や錠剤があります。しかし、新たな研究によれば、こういったサプリで筋肉がついたとしても、健康な肝臓を失う可能性があると指摘しています。

 この研究では、処方箋なしで購入できる筋肉増強用サプリの摂取によって黄疸(おうだん=皮膚や眼球の黄染)や腹痛などの肝障害の症状が発生した男性が対象となりました。このうち4分の3近くの男性が、これらの症状での入院を余儀なくされたと言います。

 医学誌『Alimentary Pharmacology and Therapeutics』に掲載されたこの研究では、 サプリや処方薬、市販薬に関連する肝障害を見分けるためのプログラム「薬物性肝障害ネットワーク」に登録された44人の男性を標本調査。これらの男性の肝障害は血液検査で発見されたもので、胆汁の蓄積など肝臓の健康のさまざまな指標から判断されました。

 これらの男性全員が逞しい肉体を手に入れるためにサプリを摂取したことを認めており、サプリのテストでは多くの製品にラベルに記載されていない「アナボリックステロイド」が含まれていたことが明らかになっています。

 このような合成ステロイドは、男性ホルモンの「テストステロン」を模倣したものですが、それに関する研究も多く、それを辿れば…肝障害やがん性腫瘍、若ハゲや睾丸の萎縮などの好ましくない副作用があることが多く示されているのです。

 このプログラムに登録されたあらゆる男性が黄疸を報告しており、今回の研究の対象者の多くに過度のかゆみや腹痛、吐き気などの他の症状が現れています。「人間にとって肝臓は最大の臓器であり、正常であればわれわれが生きるための500以上もの機能をはたしている」ということをしっかりと心に刻んでおくべきでしょう。

 今回の研究では、多くのサプリのラベルが不正確であったことが明らかになりました。例えば、ある研究対象者が摂取していた「ファクターD」というサプリのラベルには、「アナボリックステロイド」類の記載は一切ありませんでした。

 がしかし、実際このサプリには、3種類の「アナボリックステロイド(テトラヒドロコルチコステロン、スタノゾロール、メチルドロスタノロン)」とともに、特定できない別のステロイドが含まれていたことがテストによって明らかになっているのです…。

では、これらのステロイドはどのくらい体に悪いのでしょうか?

 「スタノゾロール」は米国で規制物質に分類されており、世界アンチ・ドーピング機関の禁止リストにも含まれています。

 貧血など特定の症状を持つ男性向けに、医師が「アナボリックホルモン」を処方することもありますが、これらの物質は一般的な男性には推奨されていません。しかし、それでも一部の男性は、筋肉増強のために医学的な監督もなしに「アナボリックステロイド」に頼ってしまうのです。

 ロサンゼルスの南カリフォルニア大学の医学博士で、今回の研究の筆頭著者であるアンドリュー・シュトルツ氏は、規制されていない物質を購入する前に医師に相談するよう強くすすめています。

 「患者は医療供給者に対して、何らかの栄養サプリを摂取しているかどうかを知らせる必要があり、違法薬物や米麻薬取締局が規制するアナボリックステロイドを含む可能性がある筋肉増強サプリには、特に用心すべきです」とシュトルツ博士は言います。

 「クレアチン(筋肉収縮のためのエネルギー貯蔵の役割をする物質で、肝臓で合成され血中に入り、大部分は筋肉に一部分は神経に分布する)」など、一部のサプリは確かに筋肉をつけるために役立つ可能性があります。

 しかしながら今回の研究では、サプリ業界が無法状態であることを改めて意識するためのいいきっかけとなるでしょう。つまりわれわれは、こういったサプリ類に何が入っているかは知る由もないのです。

 ここで再確認してください。サプリなしでも、筋肉をつけることは間違いなく可能なのです。必要なのは「十分なタンパク質とカロリーの摂取、そして充実した睡眠」なのです。

Source / Men’s Health
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。