多くの方にとって、アルコールセックスは切っても切れない関係にあると言っていいでしょう。寝室に入る前にお酒の力を借りようとして、「結局、デートの段階で飲みすぎてしまった」というのは、よく聞く話です。しかし、振り返ってみてください。そのお酒は、本当に楽しい時間を過ごすために役立っているでしょうか? 実は、アルコールこそがセックスライフを妨げている…という可能性を感じていたりしていませんか?

 その疑問への解答を得るために私たちは、ウェリントン・ホスピタル(HCA Healthcare UKの一部)のコンサルタント泌尿器科医兼男性科医アシフ・ムニールさんと、プライベート・セラピー・クリニックの心理学者兼臨床ディレクターであるベッキー・スペルマン博士のお二人に、「セックスとアルコールの関係」について話をうかがってきました。


 「今夜は絶対にキメル!」と意気込んで、レストランで食事をします。そして、そこでお酒を飲んで互いにリラックし、さらにその後、河岸を変えて居酒屋やバーへ行っても飲み過ぎてしまう。その結果、酔いが自覚している以上に回ってしまい、肝心な時にキメルことができなかった…または泥酔状態となり、翌日目が覚めると隣にはデート相手が寝ているものの、前夜のことはまったく覚えていない…といった失敗をおかしてしまった経験はありませんか?

 なぜ多くの方が、このようにベッドルームで楽しむためのサポート役に、お酒に大きく依存してしまうのでしょうか?

 「その人の背景や過去の経験によって、セックスに対して不安を感じる人も少なくありません」と、スペルマン博士は言います。そして続けて、「特に過去、トラウマとなるような出来事を経験した人は、アルコールの力を借りてその不安を払拭(ふっしょく)したくなるものなのです。男性の中にはそれ自体のパフォーマンスに対し、不安を抱えている場合もあります。それをお酒を飲むことによって、仮の自信を身にまとおうとするわけです」、と言います。

 ですが、それこそが「うまくことが運ばなくなる」、最大の原因とも言えることをここで再確認しましょう。例えばテキーラの飲みすぎは、デートの夜を台無しにしたり記憶を朧(おぼろ)げにするだけでなく、あなたが考えている以上に、セックスライフ自体に大きな悪影響をおよぼす可能性もあるのですから…。

アルコールがセックスライフを
妨害する
可能性がある9つの理由

1. アルコール依存

 適度な量であれば、個人差はありますが大丈夫と言えます。1~2杯のお酒は、ことを円滑に運ばせる、全員にとってより楽しい経験にしてくれるでしょう。しかし、セックスをするたびに我を忘れるほど飲んでしまう場合はどうでしょう?

 デート前の緊張を和らげるため、欠かさずお酒を飲んでいるような方は、アルコール依存症になるリスクもあることを忘れずに。

 「セックスのたびに、アルコールに依存してしまうという方がいらっしゃいますが、不安や感情に対処するためにはアルコールに手を伸ばすよりもはるかに安全な方法があります」と、オンライン医師サービス「Doctor4U」のメディカルアドバイザーであるダニエル・シチ博士は言います。

 もしあなたが、新しい人に会うのが不安なら、お酒を飲む前にセラピーを受けたり、自尊心を高める方法を考えてみましょう。日本でも最近、心理カウンセリングに注目が集まっています。中には、オンラインによるカウンセリングも行っているところもあるので、そこに頼ってみるのもいいかもしれません。

2. 性欲の低下

 数杯のお酒を飲めば、リラックスしてスムーズにセックスへと運べる雰囲気がつくりやすくなるかもしれません。ですが長期間、度をこえた飲酒を続けてしまうと、男性・女性およびすべてのジェンダーの性欲を低下させる原因にもなります。

 「(大切な相手と)親密な時間を持ちたい」という欲求を失い、デート自体を完全にやめてしまった…という場合、それはあなたのアルコール消費量に関係している可能性があります。なので、お酒を控えてみたほうがいいかもしれません。

 「アルコールはそもそもは抑制剤なので、量が増えれば性欲を高めるのではなく、低下させる効果のほうが強くなります」とシチ博士。「アルコールは、性的興奮と性的機能に必要な血液循環、神経、呼吸に悪影響を与えます。特に性的機能にとっては、心臓と血液循環への影響が重要になってきますので…」とのこと。

 アルコールの作用に関しては、厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」に、「アルコールは少量なら気持ちをリラックスさせたり会話を増やしたりする効果がありますが、大量になると麻酔薬のような効果をもたらし、運動機能を麻痺させたり意識障害の原因になります…」と掲載されているので、チェックしてみてください。

3. 勃起不全

 外でお酒を楽しむこと好きな(ペニスを持った)男性の中には、「大事な性的瞬間にあそこが役に立たない」という経験をしたことがある人も少なくないでしょう。これを今までは緊張のせいにしてきたかもしれません。ですが実は、勃起不全はアルコールと関連性が高いと言われる性機能障害でもあります。なので、早めに対処しておかないと深刻化する可能性もあることが報告されています。

 ウェリントン病院の泌尿器科およびアンドロロジー(男性特有の生殖器系の問題と泌尿器系の問題に関連する医療専門分野)のコンサルタントであるアシフ・ムニール医師は、「アルコールは欲望を増加させるが、パフォーマンスを低下させる」と指摘します。これは実に、的を射た発言ではないでしょうか。

 適度な飲酒であれば、心理的に築き上げた壁を低くするという抑制効果の軽減にもつながることでしょう。その結果、自信を持つことにもつながります。ですが、その量が増えていくにしたがって、代わりに「多くの場合、脳内の勃起中枢を妨げ、勃起して維持する能力を低下させる」と、ムニール医師は注意を促します。

 よって、一晩中勃起を持続させたい希望が強いのであれば、アルコールの摂取量に注意するか、ソフトドリンクを選択すべきでしょう。

4. 循環器系の不調と血行不良

 ここまで読んでくださった方は、「お酒が勃起の妨げとなる」ことを理解していただけたかと思います。ですが、アルコールが深刻な健康上の問題となる心血管疾患と循環不良を引き起こすこと原因となり、性的パフォーマンスも妨げられる可能性があることは、あまり知られていません。

 「アルコールの過剰摂取は、心血管疾患、2型糖尿病低テストステロンのリスクを増加させ、長期的な勃起不全につながる可能性があります」とシチ博士は言います。アルコールはペニスへの血流を減少させるため、男性(およびペニスがある人々)は飲酒後に勃起できないという一時的な問題を経験するのです」とのことです。

5. 膣の乾燥

 この問題は男性(およびペニスがある人々)だけでなく、女性(および外陰部がある人々)にも当てはまります。

 お酒を飲みすぎたときに、セックスが痛くて不快に感じたことはありませんか? 「女性および外陰部がある方にとって、アルコール摂取の物理的な影響として、腟の乾燥による潤滑の不足やオルガスムに達することができない…といった症状が挙げられます」とシチ博士は説明します。

 「アルコールは脱水状態を引き起こし、膣内の潤滑性を低下させ、セックスを不快で苦痛なものにしてしまう可能性があります」と、博士は続けて言います。お酒を飲んだ状態でセックスする場合は、痛みなく楽しめるよう潤滑剤を使用することをおすすめします。もし、それでもお酒を飲みたい場合は、お酒と水を交互に飲むことで緩和される場合もあります。このようにすればお金も節約できますし、オルガズムに達する可能性も高まるので、一石二鳥だと思いませんか?

6. セックスの楽しみが軽減される

 寝室に向かう前には、「必ずベロベロに酔っぱらわなければできない」と思っている方は、セックス(とあなた自身)にとって大きな損をしていることになります。シラフでのセックスは、最も親密で楽しい時間の過ごし方の1つであり、過小評価してはいけません。

 「少量のアルコールには抑制を軽減させる効果があるかもしれませんが、あまりにも多くの量を飲みすぎると覚醒状態となり、その瞬間をパートナーと分かち合えないことによって、貴重な経験と喜びを台無しにしてしまう可能性を高めます」と、スペルマン博士は説明しています。

7. 精巣の容積の減少

 慢性的なアルコール過剰摂取に悩む男性(およびペニスのある人々)に残念なお知らせです。肝疾患、中でも肝硬変の男性患者(特にアルコール依存症患者)では(生化学的機序は十分には解明されていなませんが)、しばしば性腺機能低下症(精巣萎縮、勃起障害、精子形成能低下を含む)がみられるという報告があります。「これにより、テストステロンのレベルが低下し、性欲と勃起機能の両方に悪影響を与えます」と、ムニール医師は説明します。

 飲酒習慣が「危険なレベルに向かっているかもしれない」と思う場合は、アルコール依存症があなたの人生とセクシーな時間に害を与える前に、専門家に助けを求めてください。

8. 体重増加

 ビール腹とたるんだ胸については、みなさん詳しいでしょう。しかし、肥満がテストステロンに悪影響を与え、性欲に大惨事をもたらすことはご存知でしたか?

 ムニール医師は、「アルコール摂取が原因ともなる、体脂肪の多い男性(およびペニスのある人々)は、血清テストステロンが低い傾向があります」と説明しています。繰り返しになりますが、これは性欲の減退や勃起不全につながる可能性もあります。

 疑わしい場合は、飲酒量を減らしてみましょう。健康的なライフスタイルをおくることは、セックスライフだけでなく健康全体のために重要なことなのです。

9. 判断力の低下

 飲酒は物理的なダメージの他にも、非常に深刻な間接的影響をもたらす可能性があります。「アルコールで経験する抑制の低下によって、コンドームなどの保護具の使用を忘れ、性感染症計画外妊娠につながる可能性もあります」と、ダニエル・シチ博士は言います。「あるいは、アルコールの影響で判断力が低下するため、保護具を使用する必要がないと感じるかもしれません」とのこと。

 シラフでしっかり意識を持つことは、より安全なセックスにもつながるというわけです。

セックスのためにアルコールに依存していませんか?
セルフチェックしてみましょう。

 スペルマン博士によると、「寝室への自信を高めるための第一ステップとして、セックスの前に頼みの綱と思っていたアルコールが、実は悪影響となっていることをきちんと理解することが大切だ」と言います。

  • あまりにも多くのアルコール量を飲みすぎると覚醒状態になり、細かな変化や感度に完全に意識を向けることができません。
  • 飲み過ぎることで、その体験を十分に楽しんだり、十分な情報にもとづいた正確な判断ができません。
  • シラフのときとアルコールを摂取したときは異なる行動をとることがあり、経験を最大限に生かすことができず、後悔や自信の喪失にもつながります。

 最低限、これらのポイントを理解しておきつつ、シラフでのセックスがどのように感じられるか試してみてください。もし、アルコールなしで性行為をするということに恐怖を感じた場合、あなたは問題を抱えているかもしれません。それは、助けが必要であることのサインと言えるでしょう。

Source / Netdoctor UK
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。