ドナルド・トランプ氏の大統領就任以来、米国政治について良い話はほとんどありませんでした。しかし、そんな状況に一石を投じるちょっとした事件が、2017年9月11日の夜に起こっていました。

 共和党のテッド・クルーズ上院議員が、自らのTwitterアカウントで「@SexuallPosts」というユーザーのつぶやきを「いいね」したのだそうです。しかもそれは、アダルトサイト「リアリティ・キングス」が投稿した2分半の動画だったのでした。

 Twitterを使っている人はよくご存じの通り、「いいね」には様々な含みがあります。以前は「お気に入り」として知られていたこの機能は、ツイートに含まれるジョークやアイディアに対する「無言の承認」を指すこともあれば、Twitter上での会話を終わらせるときに「ピリオド」のようにも使われることがあり、さらにはつぶやきを「後で読む」ために「いいね」することもあるなど、1つのアクションにさまざまな意味が込められているのです。

 そしてクルーズ議員の大学時代のルームメイト、クレイグ・マジン氏の話を信じるなら、議員は間違いなく「後で見る」ために保存したのだといいます。

 マジン氏はこうツイートしています。

「テッド・クルーズ氏は、人々に自慰をする権利がないと考えています。僕は大学時代、彼のルームメイトでした。彼は考えを改めたのでしょう」
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 もちろん、アダルト動画が悪いというわけではありません。また、以前に「誇り高き怪鳥」と自称した男であれ(ミッチ・マコーネル、ポール・ライアンとともに最悪の3議員とも呼ばれている)、性行為をする二人の大人とこれをたまたま目撃した謎の女性が出てくるアダルト動画に「いいね」してしまったことを恥ずべきだというわけでもないのです。

 しかしそもそも、プライベートな事柄について、徒党を組んで「何が性的に適切」で「何が性的に不適切」かを指図するのは、民主党が共和党にやめるよう求めていたことであります。

 だからこそ、性的玩具や極めて個人的な行為である自慰の禁止などを主張したこともあるキリスト教保守派のテッド・クルーズ議員が、2分半のハードコアなアダルト動画をブックマークした点が滑稽になるのです。

 クルーズ議員のスタッフは、ウェブ上でこの話題に関するジョークが広がり、議員の名前がトレンド入りするまで、これをなんとかする度胸や思いやり、常識も持ち合わせていなかったようです。

 この出来事が起こったのは、人々が911の悲劇を振り返った一日の終わりだったのです。テッド・クルーズ議員はこの話題で、次々にひどいニュースに見舞われるアメリカにつかの間の休息を与えたとも言えるかもしれません。

 「@SexuallPosts」というアカウントを運営する匿名のオーナーは、本誌『エスクァイア』のTwitetr上での取材に対して、「テッド・クルーズ上院議員がこのアカウントのツイートにいいねしたのは素晴らしいことです。これは、誰もがアダルト動画を視聴しており、それが何も悪いことではないということを示しているのですから」と語っています。

「テッド・クルーズ上院議員は、ポルノの趣味も素晴らしいですね」(@SexuallPosts)

 最終的には、クルーズ議員のスタッフがこの「いいね」を削除しました。

 彼のシニア・コミュニケーション・アドバイザーは、この「いいね」が議員によるものではなく、このアカウントにアクセスできる他の人の手によるものであることを示唆しています。

 クルーズ議員のスタッフのひとり、キャサリン・フレイザー氏はこうツイートしています。「@tedcruzに投稿された不快なツイートはスタッフが削除し、Twitterに報告しました」と…。

 ヒラリー・クリントン氏に対するロシアのハッキング疑惑については一蹴した共和党ですが、どうやらハッカーや院外勢力にさらなる調査を行う価値があると信じているようです。

 追記:テッド・クルーズ上院議員自身が、今回のうかつな「いいね」に言及しています。今回のことは、スタッフがやったことだというのです。これさえもジョークにできればいいのですが。

Source / ESQUIRE US