「全世界で最も危機に瀕しているのは米国である…」と思っている方も少なくないでしょう。アメリカ人であればなおさら、この状況から目をそらすことは到底困難と言えます。

トランプ大統領は銃乱射事件が起こった地を訪れ、「ロックスターばりの歓迎を受けた」(ソーシャルメディア上の支持者の言葉です)かと思えば、現地の市長や上院議員と摩擦を起こします。その後トランプ陣営は、現地での動画にマイケル・ベイ映画の予告編音楽を加えた選挙PRビデオをつくりました。また、最近の米移民・税関捜査局(ICE)の一斉検挙では、さらに多くの親子が引き裂かれることになったのですから。

とは言え、世界的なレベルで見れば、アメリカばかりに目を向け続けるわけにはいきません。なぜならば、実は世界全体が歯止めがきかないほど悪化しているからです。このことは、多くの人が気づきながらも目を背けているとも言えるのです。

ですが…、移民や差別主義といった問題には様々な意見があることでしょう。ですがこのことは、私たちの誰もが同意できる1つの事実です。なぜなら、それは「人間には食料が必要」だからです。国連が2019年8月8日にリリースした新たな報告書によれば、地球全体が食料問題に直面しているとのことなのです。

以下は「ニューヨーク・タイムズ」紙からの引用になります。

国連は新たな報告書の中で、「世界の土地・水資源は前例のないレベルで乱用されており、これが気候変動と同時に起こることで、人間の食料供給能力に深刻な影響がもたらされる」と警告しています。世界52カ国の100人以上の専門家がまとめ、2019年8月8日にジュネーブでリリースしたこの報告書には、この脅威に対処するために残された手立てがますます減っていることも明かされています。この報告書をさらに読み込めば、「世界で5億人もの人々がすでに砂漠化が進行中の地域に住んでおり、地球の土壌は生成される10〜100倍の速さで失われている」と言います。 
 
そして気候変動が、これらの脅威をさらに悪化させるでしょう。洪水や干ばつ、暴風雨などの異常気象は、グローバルな食料供給を乱し、時間とともに縮小させる恐れがあります。すでに世界人口の10%以上が栄養不良の状態にあり、この報告書の一部の著者のインタビューの中では、食料不足が国境を超える移民の増加を招く可能性も警告しています。特に危険なシナリオは、「食料危機が複数の大陸で同時に起こる」というものです。

その数は「5億人」と記されています。これはかなり深刻な数字ではないでしょうか。ですが、この数字が砂漠化に苦しむ人々の数に過ぎないことを考慮すれば、食料危機の影響としては控えめな見積もりにも思えます。

洪水や暴風雨、干ばつは農家の暮らしを崩壊させ、その他の地域には食料不足をもたらすのです。このような事態は、すでに米国中西部でも見られているのです。

また、世界には食料として海産物に頼っている人々がおよそ30億人おり、2015年のある研究では、世界の海洋で大量絶滅が起こっている可能性が克明に記されていました。彼らは、海産物が不足したらどうなってしまうのでしょうか。

こういった現象は、科学者らが「地球史上6度目の大量絶滅」と呼ぶものの一環であり、野生生物は恐ろしい勢いで死に絶えています。そして、これらの影響が深刻なものとなれば、人々は生き残るために移住を余儀なくされることしょう。現在の米国が移民問題をどのように対処しているかを踏まえれば、それも「ノー・プロブレム(問題ない)」なのかもしれませんが...。そして同様の危機は、水についても起こっているのです。

Migrant Caravan Crosses Into Mexico
John Moore//Getty Images
米国が行っている移民キャラバン(移民の大移動)への対応は、完全に常軌を逸しています。今後は、気候変動に起因する将来の移民への対応は正しく、そしてスムーズに進めるべきなのです 。

気候変動については、もう1つニュースがあります。

気象メディア「インサイド・クライメイト・ニュース」によれば、現在のアラスカには、ほとんど海氷がないようなのです。 

米海洋大気庁(NOAA)の気候科学者であるカリン・グリーソン氏は、「海氷面積が史上最小となる中、アラスカの涼しい気候を保つ緩衝材が失われています」と語っています。さらに「これは気温に悪影響を与えます。海岸線近くに海氷がなければ、大陸の気温は通常よりもすぐに上昇する可能性があるためです」と説明を加えています。 
 
米雪氷データセンター(NSIDC)によれば、北極海の海氷面積は2019年7月、融解シーズンが早く始まった結果として、史上最小を記録しました。北極圏全体の海氷量は、1979年〜2018年の平均に比べておよそ47%少なくなっているのです。 
 
アラスカでは現在、海氷が海岸からおよそ約240kmも離れた場所にあります。このような現象はつい最近になるまで起こっていませんでした。これまでは9月以前に、このような状態になることはなかったのです。

これは長期的な気候要因に加え、2019年7月に北極圏を通過した熱波などの短期的な異常気象により引き起こされているようです。アラスカ州アンカレッジでは、例年7月の気温は13〜17度ほどですが、今年は米国独立記念日の7月4日に32度を記録しています。

また、北極圏では山火事も相次いでおり、これは異常な事態としか言いようがありません。さらにグリーンランドでは、1日で125億トンもの氷が融解(固体が液体に変化すること)しています。以下は、その翌日における現地の様子です。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
ローリエ・ギャレット氏のツイート内容: 
溶け出した氷河が轟音を立てて橋の下をカンゲルルススアークに向かって流れています。グリーンランドは今日22度となり、デンマーク当局によれば、昨日1日で120億トンの氷が融解したそうです。  

米国科学アカデミーの役員を務めるジェレミー・マティス氏は2019年6月、ニュースサイト「Mashable(マッシャブル)」に「(気候変動の)変化のレベルがあまりにも大きいので、伝えることができません」と語っています。

また、「われわれが目の当たりにしている変化の規模を表現する形容詞が、もはや足りなくなってきたのです」と、マティス氏は続けてコメントしているのです。

気候変動は、もはや永久凍土をも揺るがしているのです。大量の炭素を含む永久凍土は、融解によってこれらを大気中に放出します。そして大気中の炭素は、熱を閉じ込めるため温暖化問題を悪化させてしまうのです(「インサイド・クライメイト・ニュース」では、「北極圏の永久凍土には、現在の大気中に存在する量の倍の炭素が含まれている」とする科学者の見積もりが紹介されています)。

これこそ、フィードバックループ(フィードバックを繰り返すことで、結果が増幅されていくこと)と呼ばれる現象です。

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Barcroft Media//Getty Images
人類の影響で地球温暖化が進み、この過程でホッキョクグマの生息地を破壊されてきたことはご存知の通りです。

このようなフィードバックループには、さまざまなものがあります。

海氷(通常は白く、太陽光を反射します)が溶けて表面に黒っぽい水たまりができ、この水たまりがより多くの熱を吸収してしまう現象もその1つです。

この水が温められると氷の融解速度はさらに早まり、表面の水たまりはさらに広がっていきます。こうしたフィードバックループによってホッキョクグマの生息地を破壊され、北極の生態系を乱してきたのです。そして誰もが、そんなことを気にすることもなかったのです。

そしてこのことは、当然ながら海面上昇ももたらし、最終的には人類の都市や海岸地域に水が押し寄せることになるでしょう。こうして人々は移住を余儀なくされ、移住先の地域に社会的・政治的不安をもたらす結果となるわけです。まさに我々人類こそ、このループ上の中心にいるのです。

いずれにしても次の米大統領選に向けては、トランプ大統領の移民政策や明らかな人種差別主義だけでなく、これらすべての問題を考慮すべきなのです。地球は急速に不安定になりつつあり、現代人の生活や文明の土台として揺らぎつつあります。

私たちはこのような現状に基づいて、そのとき、決断をすべきなのです。

共和党はこの危機に対し、何の解決案も提示していません。それどころか、気候変動の存在を否定したり、「何もできることはない」と主張したり、化石燃料業界の収益に打撃を与える可能性がある行動は避けてきました。ですので、それだけの理由からでも政権を追われるべきなのです。

この問題に対して、大規模な取り組む計画を持っている政治家はいるのでしょうか?

人類史上最も先の見えない、凄まじく酷い時代において、そこで人々を導いていくに必要な資質を持っている人物はいるのでしょうか?

この夏、多くのアメリカ人はこのことについてよく考えてみるべきでしょう。そしてそれ以上に、気候変動についてわれわれは真剣に向き合うべきなのです。

Source / Esquire US
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。