• 食糧安全保障は、私たち人類の手にかかっています。
  • 気候変動によってリンゴからステーキまで、すべての食べ物に影響が出ているのです。
  • 国連の新しい報告書によると、私たちが森林伐採をやめ、食生活を変えれば、状況を改善できるそうです。

 国連が発表した気候変動と土地利用に関する報告書で、「人類史上前例のない早さ」で土地の過剰利用(や開発)が進んでいることがわかりました。調査によると、土地資源や気候変動に対して私たちが態度を改めない限り、人類の食料供給に深刻な影響が出てくるということです。

 「世界の食料供給が直面している社会的かつ環境的な問題は、幅広く多面的なものだ」と、その報告書の第1章に書かれています。

 具体的な問題として挙げられているのは、「自然生態系の土地の管理化、急激な都市化、土地管理の激化による汚染および遺伝資源(現実の又は潜在的な価値を有する遺伝素材)へのアクセス」、そして「技術発展、人口増加と複数の生態系サービスに対する一人当たりの需要増加」です。

Oil refinery or chemical plant at Blue night sky
Witthaya Prasongsin//Getty Images

 2018年の研究では、100年前人類が作物を育てたり家畜を飼育するために使っていたのは、地表の約15%ほどだということが示されました。しかし、南極大陸の雪原を除いても、その数字は2018年時点ともなると77%にも増加しているのです。

 そして、もちろんこの変化にともなって、収穫量も大幅に増加しています。報告書の第5章の記述によると、1961年から「一人当たりの食料供給量は430%以上増加し、窒素肥料(約800%)と灌漑(かんがい)用の水源(100%以上)も増加している」のだそう。しかし、収穫量が増えたにも関わらず、気候変動は食料安全保障と呼ばれる人々が食料を入手できる可能性ですら、すでに脅かし始めているのです。

 52カ国から集まった100人以上の科学者によって、今回書き上げられたこの報告書では、工業型農業と個人農業の両方から分析を行っています。“温暖化と降水量の変化に関連”して、作物生産量が減少していることを発見したと言ったのち、以前の研究に言及しています。

 気候変動は害虫や病気にかかる作物増加の原因にもなり、とくにアメリカや中国、フランスが大きな被害を受けると予想されています。これらの結果、食料の価格は上昇して入手困難となり、したがって栄養価も下がることでしょう。

 例えばシリアルは、2050年までに29%も値上がりすると見られています。

 自然災害の増加も、2011年と2012年にタイを麻痺させた大洪水のように、国レベルの供給プロセスに影響を与える可能性があります。米の栄養価が下がり、肉の品質はさらに悪くなり、卵の殻はもっと脆くなるかもしれないのです。

 「複数の穀類産地が、不作になるリスクも増えています」と、NASAゴダード宇宙科学研究所の上級科学研究員で、報告書の筆頭著者の一人であるシンシア・ローゼンツワイグさんは「ニューヨーク・タイムズ」紙に話しています。「これらのことが、すべて同時に起きているのです」とも続けています。

 これは、一部の地域に限らず広範囲に渡る厳しい状況です。報告書に参加したチームは、「同じくらい広範囲に渡って人類も行動を変えていかなければいけない」と警鐘を鳴らします。

 生態学者で、IPCCの第2作業部会(影響・適応・脆弱性)の共同議長を務めるハンス=オットー・ポートナー氏は、『ネイチャー』誌にこう話しています。

 「何を食べろなどと、指示するつもりはありません。しかし、豊かな国の人々が肉を食べる量を減らし、政府がそれにインセンティブを与えてくれば、気候と人類のために有益になると思います」とのこと。

 食事を変えること、そして、「森林伐採のような近年加速する動きを止めることで、好ましい変化が訪れるだろう」という報告書にも書かれています。

High Angle View Of Forestry Machinery Amidst Trees In Forest
Christian Aslund / EyeEm//Getty Images

 「残念ながら、熱帯地方の森林伐採を止めなければならないという、深刻な必要性を理解していない国がいるのも事実です」とポートナー氏は、最近ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領がアマゾンの森林伐採を強化していくと決定したことについてほのめかしました。「政府の介入を強制することはできません。しかし、今回の報告書が世論に影響を与えてくれることを願っています」と、ポートナー氏は加えて話しています。

 木々が増え、肉の消費量が減れば、森林再生のための土地が開けるとも報告書は述べています。そのような大規模な変化が起きても、燃料や輸送による二酸化炭素排出の問題がまだまだ残っているので、それだけで気候変動を止めることができる…とは言えません。ですが、それでも実現できれば、人類の未来のための大きな第一歩を踏み出せたことになるのは間違いないでしょう。

From POPULAR MECHANICS
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。