[目次]

▼ ある1枚の画像に写っていたものとは?

▼ 「これが現実だ」とは信じられない瞬間だった

▼ アメリア・イアハート失踪の真相は?

▼ アメリア・イアハートとは?

▼ アメリア・イアハートの最期は?

1月30日のこと、ネットの波に乗っているとあるニュースにたどり着きます。それは「National Geographic」。記事の見出しを明確なニュアンスを確認したくてさっそくDeepL翻訳で変換…

Has Amelia Earhart’s plane really been found? 6 key things to know

アメリア・イアハートの飛行機は
本当に発見されたのか?

…ということ。これに注目したのは、エスクァイア日本版ばかりではないはずでしょう。次第に「BBC」、「The New York Times」と「USA Today*⁴」まで、さらに「時事通信*⁵」、「Le Figaro*⁶」、「ABC*⁷」と、世界各国の主要メディアもその内容の記事を公開していきます――そしてもちろん、「POPULAR MECHANICS」も。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Have researchers actually found Amelia Earhart’s long-lost plane? | BBC News
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そんなわけで、アメリア・イアハートの失踪に関する最新の更新情報をお届けします。


ある1枚の画像に
写っていたものとは?

アメリア・イアハートは、ついに発見されたのでしょうか?

世界一周飛行中に消息を絶った有名なパイロット、イアハートの飛行機は86年間、世界中で探され続けてきました。そして、このたび海洋考古学者たちはついに、「その飛行機が眠る場所を特定した」と発表。彼らはそれを強く信じています。

今回のアメリア・イアハートの調査プロジェクトは、元アメリカ空軍の情報将校であるトニー・ロメオ氏*⁸が率いる深海探査企業「ディープ・シー・ビジョン(DSV)*⁹」とともに、ロバート・バラード氏*¹⁰率いる「ナショナル ジオグラフィック協会*¹¹」および海洋探査会社「Ocean Exploration Trust*¹²」のチームとで共同調査となりました。

最新鋭の自律型無人潜水機(AUV)*¹³を使って、海底5200平方マイル(約1万3500平方キロメートル)以上にわたって探査したところ、「伝説のアメリカ人女性飛行士が搭乗していたロッキード 10-E エレクトラ機の可能性のある物体を発見した」と発プレスリリースで発表*¹⁴すると同時に、説得力あるソナー画像をまず公開しました。

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今回の発見が事実であれば――イアハートと彼女の航法士(ナビゲーター)フレッド・ヌーナン*¹⁵が、世界一周飛行という野心的な挑戦中に行方不明になるという――歴史上最も古い謎の失踪劇のひとつに、終止符が打たれることになります。

1937年7月2日、この果敢な世界一周飛行の後半で二人はパプアニューギニアを飛び立ちました。そして、こつ然と姿を消した二人はもう2度と帰ることはありませんでした。

DSVの創設者トニー・ロメオ氏は米公共ラジオNPRのインタビュー*¹⁶で、「この画像が飛行機ではないと否定できなければ、アメリアが乗っていた飛行機でもないとも言い切れるものでもない」と語っています。

元米空軍諜報部員であったロメオ氏は16人のチーム体制で、最新型の無人潜水機「Kongsberg Discovery HUGIN 6000」*¹⁷を用いて調査に臨みました。チームは90日間にわたり、イアハートの着陸予定地点の西にある太平洋を丹念にスキャンしました。各ソナー潜水はほぼ48時間に及び、数テラバイトのデータが蓄積したそうです。

「これが現実だ」とは
信じられない瞬間だった
飛行機の図
Courtesy Deep Sea Vision

そして収集した画像を丁寧に確認していたところ、1枚の画像につき当たりました。ロメオ氏はこのときの出来事を「まるで現実とは思えないような瞬間であった」と表現しています。そしてこの発見を、「イアハートの飛行機が燃料不足によってハウランド島に到達できなかった」という説を裏づけるものと考えています。

そして、「この画像には、アメリア・イアハートの搭乗機の“独特な双尾翼と縮尺を表す輪郭”が写っています」と主張します。

アメリア・イアハートの搭乗機に関するソナー
Courtesy Deep Sea Vision

ですが、画像だけでは決定的な証拠にはならないでしょう。

ロメオ氏は、「ソナー画像に写った物体の形状はロッキード 10-E エレクトラ機に酷似しており、発見場所は『日付変更線説*¹⁸』と一致している」と述べます。

この「日付変更線説」というのは、元NASA職員で自家用操縦士のリズ・スミス氏*¹⁹が唱えたものです。「フレッド・ヌーナンが17時間飛行した後、日付変更線を越える際に本来行うべき手順(7月3日から7月2日に日付を修正する)を行わなかった。そのため、航法上60マイル(約97キロメートル)の誤差が生じ、DSVが説明するようにヌーナンとイアハートはハウランド島を見つけられなかった」という説になります。

DSVによれば、「このミスが原因で、イアハートの搭乗機は海に墜落したのではないか?」と説明しています。DSVがこの仕事を引き受けるまで、リズ・スミスによる仮説で説明されている地域とシナリオは検証されていませんでした。ロメオ氏は声明の中で次のように述べています。

「私たちは常に、『(イアハートが)飛行機を海に不時着させるためにあらゆる試みを行っただろう』と考えてきました。私たちはアメリカの偉大なる謎の物語に、終止符を打つつもりです」
アメリア・イアハートとヌーナン
Bettmann//Getty Images
イアハートとヌーナン

DSVによれば、米スミソニアン国立航空宇宙博物館の航空部門学芸員ドロシー・コクラン氏*²⁰がこの発見の検証を行っており、同氏は声明で次のようにと述べています。

「私たちはDSVの最初の画像に非常に関心を持っており、ハウランド島付近で続けられているアメリア・イアハート搭乗機の探索において、新たに調査する価値があると考えています」

DSVは2024年下期に画像が撮影された地域を調査し、憶測や陰謀論などが飛び交うこのシーンに新たな見方を提示したいということです。

アメリア・イアハート
失踪の真相は?

「Biography」の記事*²¹のあるように、1937年にアメリア・イアハートの謎に包まれた最後の飛行は世界中の人々の想像をかきたてました。イアハートとヌーナンは6週間、約2万マイルの飛行を続けましたが、ホノルルの南西約1700マイル(約2736キロメートル)に位置するハウランド島に着陸することは果たせませんでした。

このハウランド島というのは面積がわずか2.5平方マイル(約6.5平方キロメートル)であり、イアハートの乗った飛行機が広大な海の中でこれを見つけるのは困難だったのではないか? と考えられています。なぜ彼女の飛行機は、この島に着陸しなかったのか? この島ではなく、どこに飛んで行ったのか? ということについて、具体的な証拠はありません。決定的な証拠がないことから、イアハートとヌーナン、そして彼らが乗った飛行機の運命については多くの説が生まれました。

一般的に広く受け入れられている説は、イアハートとヌーナンの搭乗機が太平洋で燃料切れとなり、墜落したという説です。もう一つの有力な説は、二人がハウランド島の南東350海里(約648キロメートル)にあるガードナー島(現ニクマロロ島)を囲む環礁上に不時着したというもの。2人が行方不明になった直後に、この島から発信された無線遭難信号があったことが、この説の根拠となっています。

さらに恐ろしいことに、信憑性は低いものの、イアハートはこの島に生息していた巨大なヤシガニに食べられて最期を迎えたとも言われています。

非営利団体である国際歴史航空機回収グループ*²²もまた、「2009年に撮影された水中写真に、海底に沈むイアハート搭乗機のエンジンカウルが写っている」と主張しています。しかし、この写真が取られた場所に関する正確な情報がないため、この場所を特定し検証することは困難でしょう。

アメリア・イアハートの失踪に対する関心が今でも尽きないのは、彼女の歴史的な飛行の結末が未解決のままになっているからだけでなく、彼女がパイオニア精神にあふれた人物だったからと言えます。イアハートは単なるパイロットではなく、冒険と勇気、そして航空分野で女性が成し遂げた偉業を象徴する人物なのです。

アメリア・イアハート
Bettmann//Getty Images

アメリア・イアハート
とは?

米カンザス州生まれのアメリア・イアハートは1922年、鮮やかな黄色の「キナー・エアスター」複葉機、愛称「The Canary」号で女性飛行士として最高飛行高度1万4000フィート(約4276メートル)を達成したことで名を知られ始めます。1923年にはパイロット免許を取得し、女性としては16番目に国際航空連盟から免許を得たパイロットとなりました。経済的な問題から一時は飛行活動から離れていましたが、1927年に再び飛行に復帰しています。

マサチューセッツ州に住むようになったイアハートは、女性初の大西洋横断飛行というチャンスに飛びつきます。パイロットのウィルマー・ビル・シュトゥルツ*²³が率いた1928年の太平洋横断飛行には同乗者として参加しただけでしたが、その後、そのときの体験を記録した著書でイアハートは一躍脚光を浴びることになりました。

こうして名声を得た後、イアハートは単独飛行挑戦に乗り出しました。彼女は1932年、ニューファンドランドから北アイルランドまで約15時間の飛行に成功し、女性初の大西洋単独横断飛行者として歴史に名を刻みます。その後、彼女は世界に名をとどろかせる飛行記録を次々と打ち立て、その中でも最も画期的な「史上初の赤道上世界一周飛行を成功させる」という野心的な目標を持つに至ったのでしょう。

オークランドからハワイへの飛行区間で、ロッキード 10-E エレクトラ機が破損するという最初の不運に見舞われ、同機は修理のためにカリフォルニアに戻ることになります。このことで刻一刻と変わる天候や世界的な風の影響から計画の変更を余儀なくされ、オークランドから東回りのルートに変更します。そうして太平洋上を飛行することはその行程の最初であり、最後にもなったのです。

アメリア・イアハートの
最期は?

イアハートとヌーナンはその後、マイアミを経由して、中南米、大西洋、アフリカ、インド洋を横断するルートの飛行を開始、予定行程約2万9000マイル(約46671キロメートル)のうち約2万2000マイル(約35406キロメートル)の飛行を終えてニューギニアに到着しました。

ハウランド島までの2556マイル(約4113キロメートル)の行程は、常にトラブルと背中合わせでした。長さ6500フィート(約2キロメートル)、幅1600フィート(約488メートル)、海抜は20フィート(約6.1メートル)弱の平らな島は、雲と見分けがつかないことも多かったのです。イアハートとヌーナンは、ハウランド島沖で米沿岸警備隊の監視船「イタスカ*²⁴」号に待機してもらうなど、不測の事態に備えてさまざまな計画を立て、自信を持っていました。

アメリア・イアハートとヌーナン
Topical Press Agency//Getty Images

しかし、彼らの計画は万全ではありませんでした。燃料を余分に搭載するため、必須の無線機器を他のものに換えていましたが、ハイオク燃料が手に入らなかったため同機の航続距離は制限されました。さらに、曇天で天測航法の信頼性が損なわれ、イアハートとヌーナンはハウランド島の位置が正しく示されていない古い地図に頼らざるを得なくなっていたかもしれません。また、飛行機の無線アンテナが損傷していた可能性もありました。

さらにイアハートとイタスカ号乗組員との間に誤解があり、両者は結局、現場で連絡を取り合うことができなかったとされています。イアハートと連絡が取れないことが明らかになると、大規模な捜索活動が開始。航空機66機と船舶9隻を使用し、400万ドルの費用をかけて捜索が行われたそうですが、実際には何も発見されませんでした。

著名な航空、航法の専門家の多くは、「イアハートとヌーナンが着陸地点を探している間に機体の燃料がなくなって墜落し、二人は海で死亡した」と見ており、計画性の実行力に問題があったとの見方をしています。

しかし、まだ確かなことは何もわかっておらず、アメリア・イアハートの最後の冒険飛行の謎は未解決のままです。もしDSVの海洋探検家らが今回、パズルの最も重要なピースと言える行方不明のイアハートの飛行機を本当に発見したのであれば、このことが待望の突破口となり、航空界最大の謎のひとつがとうとう明らかになるのかもしれません。

[脚注]
*1:National Geographic
1888年創刊の科学・教育団体「ナショナル ジオグラフィック協会」が発行する、世界中の自然・文化・歴史・科学などを美しい写真と迫力のある映像で伝える世界最高峰の雑誌。現在ではテレビ映像からウェブサイトにまで拡大している。2024年1月30日公開のウェブ記事を参照

*2:BBC 1927年設立の英国の公共放送。テレビ、ラジオ、インターネットを通じて、ニュース・ドキュメンタリー・ドラマ・音楽・教育など、幅広い分野の番組を世界中に提供する。2024年2月1日公開のウェブ記事を参照

*3:The New York Times 1851年創刊のアメリカの日刊新聞で、正確な報道とすぐれた論評で知られる通称「記録の新聞」とも呼ばれている。2024年1月30日公開のウェブ記事を参照

*4:USA Today 1982年創刊のアメリカの全国紙で、カラー写真や簡潔な文章を多用し、読みやすい紙面づくりで知られている。アメリカでの主要新聞の人気ランクとして、2023年12月の調査によれば発行部数は約140万部で1位、ウェブサイト閲覧数は1位がNew York Timesで2位がThe Wall Street Journal、それに次いで3位がUSA Todayです。2024年1月30日公開のウェブ記事を参照

*5:時事通信 1945年創立の日本の民間通信社であり、国内外60カ所を超える拠点から政治・経済・社会などさまざまな分野のニュースを新聞、テレビ、インターネットなどに配信しています。2024年1月31日公開のウェブ記事を参照

*6:Le Figaro 1826年創刊のフランスの日刊新聞で、政治・経済・文化など幅広い分野のニュースを掲載する、フランス国内で最も影響力のある新聞の一つ。2024年1月31日公開のウェブ記事を参照

*7:ABC (Australian Broadcasting Corporation)  オーストラリアの公共放送局で、テレビ、ラジオ、インターネットなどを通じて、ニュース・ドラマ・ドキュメンタリーなど、さまざまなコンテンツをオーストラリア国内外に提供。2024年1月31日公開のウェブ記事を参照

*8:Tony Romeo 海洋探査会社 Ocean Exploration Trust (OET) のROV(Remotely Operated Vehicle=遠隔操作型無人探査機)を操縦する専門家として所属し、Deep Sea VisionのCEOでもある。

*9:Deep Sea Vision カナダのノバスコシア州に拠点を置く海洋調査会社。海洋ソナー技術と人工知能(AI)を組み合わせた独自の技術を用いて、海底地形や海底物体の詳細な3Dモデルを作成。公式サイトを参照

*10:Robert D. Ballard 海洋探査の第一人者として幅広い活動範囲と影響力、そして深い尊敬を得ている。 ナショナル ジオグラフィック協会の協会専属探検家であり、*12の海洋探査会社「Ocean Exploration Trust」の創設者兼会長でもある。

*11:National Geographic Society(NGS) 世界最大の非営利科学団体であり、1888年に設立されて以来、科学、探検、保全活動の推進に貢献している。公式サイトを参照

*12:Ocean Exploration Trust(OET)2008年に設立され、ROV(遠隔操作型無人探査機)やAUV(自律型無人潜水機)などの無人探査機を用いた深海探査、歴史的な沈没船の調査、海洋教育などを通じて、海洋への理解を深め、海洋資源の持続可能な利用を促進している。公式サイトを参照

*13:Autonomous Underwater Vehicle 「自律型無人潜水機」の意。人間による操作なしに、あらかじめプログラムされた指令に従って自律的に航行できる水中ロボット。長距離航行が可能で、高精度なセンサーによる詳細な調査を行う。

*14:世界最大のプレスリリース配信会社「PR Newswire」によるプレスリリースを参照

*15:Fred Noonan(1893年4月4日生~1937年7月2日失踪、1938年6月20日死亡宣告)アメリカの飛行ナビゲーターであり船長、航空界のパイオニア。1930年代に太平洋を横断する多くの民間航空路線を開拓する。アメリア・イアハートの最後の飛行にナビゲーターとして同行し、共に消息を絶った。ヒストリーチャンネルの当該ウェブページを参照

*16:NPRはかつてNational Public Radio(ナショナル・パブリック・ラジオ)と呼ばれていた、アメリカ全土で放送されている非営利の公共ラジオ放送局。ニュース、音楽、文化、科学など幅広い番組を放送している。そこで公開された当該インタビューページを参照

*17:Kongsberg Discovery HUGIN 6000 水深 6000 メートル (2万フィート) まで運用できる自律型無人潜水機 (AUV)。公式サイトを参照

*18:The Date Line Theory イアハートとナビゲーターのヌーナンが1937年7月2日に世界一周飛行中に消息を絶った原因について、日付変更線を越えて飛行中に燃料不足に陥り、島に不時着したという説。ブログ形式のページですが、参照として

*19:Liz Smith NASAのジェット推進研究所(JPL)で航空宇宙技術者として働き、火星探査車キュリオシティやヘリコプター・インジェニュイティの開発に携わった。その後、海洋探査家に。具体的な仕事内容としては、海洋探査のためのロボットや潜水艦の開発、海洋環境の調査、海洋生物の研究などを行っている。Ocean Exploration Trust内のプロフィールページを参照

*20:Dorothy Cochrane スミソニアン協会の航空部学芸員であり、航空宇宙や科学技術に関連する活動。国立航空宇宙博物館公式サイト内の当該ページを参照

*21:「Biography」で2020年6月16日に公開した記事「The Mysterious Final Flight of Amelia Earhart」を参照

*22:The International Group for Historic Aircraft Recovery(TIGHAR)歴史的な航空機の調査、発掘、保存を行う非営利団体。公式サイトを参照

*23:Wilmer “Bill” Stultz 1928年6月18日にイアハートと共に、初のニューヨーク―ハバナノンストップ飛行—— 初の女性大西洋横断飛行 に貢献する。1929年に初の南米大陸周回飛行を計画し、7月1日に南米への飛行中に飛行機事故で亡くなる。

*24:Itasca アメリカ沿岸警備隊の監視船「イタスカ」は、1937年にアメリア・イアハートとフレデリック・ヌーナンが消息を絶った際に捜索に参加した船として有名。沿岸警備隊サイト内の当該ページを参照

Translation / Keiko Tanaka
Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Popular Mechanics