記事のポイント

  • 菌が発見された後、専門家は「メキシコのミイラ展示が人体に健康被害を及ぼす可能性がある」と発表しました。
  • この展示は過去にアメリカにも巡回したことがあり、最近ではメキシコシティで開催された観光フェアにも登場していました。
  • メキシコ国立人類学歴史学研究所は、潜在的なリスクに警鐘を鳴らしています。

危険な菌がミイラで
増殖しているかもしれない

メキシコには、観に行こうか悩むべきミイラ集団が存在しています。そちのミイラたちはメキシコシティで展示されるなど、日常的に国内で巡回展を開催していますが、メキシコの多くの人はそのミイラたちを「安全な存在」と思っているわけではありません。

映画とは違って、実際にミイラたちが生き返ることはありません(…のはずです)。その代わり、ここでは予期せぬ生命体が問題を引き起こしています。その生命体というのが“菌類”です。

メキシコ国立人類学歴史学研究所は、巡回展示中に菌が発生したことをきっかけにミイラの扱い方や一般公開の方法が懸念されていると多数のメディアにコメント。2009年には、「The Accidental Mummies of Guanajuato(グアナファトの偶然のミイラたち)」と題した巡回展がアメリカで開催されました。

ですが、2023年4~6月にはAP通信など各メディアを通じて、「メキシコ政府の専門家は、1800年代のミイラの巡回展示が一般市民に健康被害をもたらす可能性がある」と懸念が述べられました。そこに展示されているミイラたちは、有名なメキシコ・グアナファト州の乾燥したミネラル豊富な土壌の地下墓地に埋められた際、意図せずミイラ化されたものたち。一部のミイラにはまだ髪の毛があり、革のようなになった皮膚と衣服も残っています。そんなミイラたちの中の1体から、「真菌が繁殖しているようだ」と国立人類学歴史学研究所が声明を発表したのです。

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The Mummies of Guanajuato [Inside the Museum, Cemetery, and More]
The Mummies of Guanajuato [Inside the Museum, Cemetery, and More] thumnail
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そしてメキシコ・シティで展示を例に、メキシコ国立人類学歴史学研究所は一般市民に警告を発しました。皆さんもガラスケースに入ったミイラたちの展示ケースを、このページやその他の報道写真などで確認してみてください。このガラスケースの気密性がどの程度なのか? それが確認できなければ、観覧などしたくなくなるでしょう。

AP通信によると、同研究所は声明の中で次のように述べています。

「バイオハザードから市民を守るための安全措置がないまま、ミイラの展示が続けられていることは一層の憂慮が必要なことです。公開された写真の一部から、2021年11月に研究所が検査したミイラの少なくとも1体には、菌のコロニーが増殖している可能性がある兆候が確認できました」

ミイラからの致命的な菌による感染は、確かによくあることではありません。ですが、前代未聞というわけでもなのです。『IFL Science』誌によれば、1970年にポーランドでカジミェシュ4世の墓が公開された際、その場にいた12人の科学者のうち10人が数週間以内に死亡したということ。これは恐らく菌によるものとされています。そして記録に残っている例は、これだけではありません。

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今回フォーカスしているこのメキシコのミイラ群は、前述していますが「ミイラ化しようとしてできたものではない」とされています。専門家は「19世紀か20世紀のミイラは、意図せずにミイラ化した」と考えており、鉱物の豊富な環境、気密性の高い乾燥した地下埋葬庫、あるいはその他の環境的な原因による可能性があるということ。ミイラの中には髪の毛や皮膚、衣服が残っているものもありますが、(遺体の腐敗を防ぐために外科的処置を加え、血管を通じて全身に薬品を循環させる施術)エンバーミングのような一般的なミイラ化の痕跡がないのは明らかだそうです。

「ミイラ」にすることは、1860年代から続くメキシコ文化の一部でした。遺族が埋葬料を支払うことができなくなったため、遺体は解体されることになります。そのとき埃まみれの骨を取り除く予定だった作業員たちが、無傷の遺体があることを発見します。

その保存状態の良さと、「これにお金を支払って観に来るお客は少なくないだろう」という期待から展示されることになりました。『ナショナルジオグラフィック』誌によれば、「大昔はミイラをわざわざ観るため、地下にあるミイラ置き場まで足を運ぶ人も多かった」ということ。そして1969年以来、そのミイラたちはグアナファトのミイラ博物館に展示されているというわけです。

1900年代初頭には、ミイラ展示のポーズと売り出し方が独特のホラー要素を帯びるようになりました。ミイラが悲鳴をあげているように見せるために、両腕を胸で組み、顎を開いた状態で展示されたものもありました。

これらのミイラの展示スタイルは、長い間、社会的批判を浴びてきています。クイニピアック大学のジェラルド・コンローグ名誉教授は、『ナショナルジオグラフィック』誌に次のように語っています。

「彼らはこの通りを歩き、古い市場に行った。見世物小屋にするべきではありません」。2022年2月、ミイラの身元確認作業が始まった。

「彼らは普通の人々です。普通にこの通りを歩き、普通の当時のマーケットで買い物をしてきた人々。そんな彼らを見世物のしていいのかとも思います」

そして2022年2月、ミイラの身元確認作業が始まりました。 ですが現在、社会的批判に健康への懸念も加わり、「(菌の増殖は)この文化遺産にとって危険な兆候なのかどうか、慎重に調査されるべきです。それを扱う人たちや観に来る人たちにとっても…」と研究所は述べています

Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です

From: Popular Mechanics