記事のポイント

  • ジャーナリストで自称UFO研究家のハイメ・マウサン(Jaime Maussan)氏は、政府関係者の前で2体の遺体を持ち出し、「これらの遺体には、地球上の生物進化の歴史に見られる特徴がありません」と主張しました。
  • 法医学の専門家であり海軍軍医の免許も持つホセ・デ・ヘスス・サルチェ・ベニテス(José de Jesús Zalce Benítez )氏はスキャン画像を提示し、「大きな目と脳を持ち、歯がありませんでした」と主張しました。
  • マウサン氏に関して言えば、2015年にメキシコシティで開催したイベントで、「宇宙人のミイラ」とするピンぼけした写真を公開。ところが数時間後、この写真は実は何十年も前に博物館で展示されていた、アメリカ大陸の先住民の子どものミイラであることが発覚している。さらにベニテス氏とともに、意識の進化に力を与える真実の探求者と信者(ある者からすれば、疑似科学と陰謀論を広める者たちの)の会員制メディアネットワーク「Gaia.com」が制作したプロジェクトにも関与しています。

宇宙人と主張する理由

アメリカ議会で2022年5月17日、およそ50年ぶりにUFO(Unidentified Flying Object=未確認飛行物体)に関する公聴会が開かれました。そこで国防総省の高官は、「アメリカ兵たちが未確認の航空現象に遭遇していることを把握しており、飛行の安全性へのリスクとなるため起源の特定に取り組んでいる」と説明。また公聴会では、飛行物体を撮影した映像がいくつか公開され、最終的には「収集した情報から物体が何かを理解するには多大な努力が必要になる」で終わっています。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

また、2023年7月26日に開かれたアメリカ下院の公聴会では、アメリカ海軍の元パイロットであるライアン・グリーブス氏ら3人が出席し、「UFOを目撃することは日常茶飯事だ」と述べ、政府によって情報が隠されていると訴えました。

さらに情報機関に勤務していたデビット・グラシ氏は、「墜落した未確認飛行物体の回収や、その構造を分析する計画を業務上聞いている…」と証言すると、幹部から報復を受けたことも述べていました。

この公聴会の開催を告知した「アメリカ合衆国下院監視・政府改革委員会」のプレスリリースには、これまで「UFO」と呼んでいたものをUnidentified Anomalous Phenomenaを略して「UAP」と呼んでいます。これを訳すなら「未確認航空現象」…つまり政府は、これを「物体」ではなく「現象」として扱っている(もらいたい)ことがうかがえます。

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このように、アメリカの議会や政府ではUFO(未確認飛行物体)情報が次々と公表されています。そんなムードをこうした動きに触発されたのでしょうか、メキシコの議会でもこのほどUFO(以降、この記事内でUFOとします)に関する公聴会が開かれ、宇宙人の遺体とされるものが公開されました。

そう、誰かがまたこう叫び出したのです。

「私たちの周りにはすでに
宇宙人たちがいる。
そのことを示す証拠がある…」

そう言うのは、ジャーナリストで自称UFO研究家のハイメ・マウサン(Jaime Maussan)氏。彼はメキシコシティにあるメキシコ議会に「宇宙人だ」と自信たっぷりに言うミイラ化した遺体を2体持ってきたのです…。そして、こうも言います。

"we are not alone"

「われわれは(宇宙において)
孤独な存在ではない」

※それではこれ以降は、この音楽を聴きながらお読みください…。

これはThird partyの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

この公聴会で彼らはメキシコとアメリカ両国の政府関係者に対し、「これらの遺体は2017年にペルーで発見され、およそ1000年前のものと推定されます」と伝えています。イギリスのニュースチャンネル「スカイニュース」によると、マウサン氏は宣誓し「これらの遺体は人間ではありません」と語ったそうです。また、マウサン氏はプレゼンテーションの中で次のようにも主張しています。

ufo expert presents 'alien' bodies to mexican congress
Anadolu Agency//Getty Images
現地時間2023年9月13日(水)にメキシコ議会の公聴会で、ジャーナリストのハイメ・マウサン氏が「人間ではない」生物の遺体とされるものを提示しました。

これらの遺体には、地球上の生物進化の歴史に見られる特徴がありません。また、UFOの墜落事故現場から回収されたものではなく、(植物性プラントンの1つである珪藻<ケイソウ>が化石となり、堆積した)珪藻土鉱山で発見され、その後に化石化したものです。

この遺体は、メキシコ国立自治大学の研究者たちによって調査されました。科学者たちは放射性炭素年代測定法とX線写真を用いて遺体を分析し、その調査の結果、片方の遺体の中に“卵”が見つかっています」

アメリカの公共ラジオ放送「NPR」によれば、法医学の専門家であり海軍軍医の免許を持つホセ・デ・ヘスス・サルチェ・ベニテス氏はスキャン画像を提示し、「大きな目と脳を持ち、歯がありませんでした」と主張したということ。またこの公聴会には、2023年初めにアメリカ議会でUFOについて証言した退役軍人の一人、ライアン・グレイブス(Ryan Graves)氏も同席していました。

alien corpses with three fingered hands presented at hearing in mexico city
Future Publishing//Getty Images
2023年9月12日、公聴会に出席した元米空軍パイロットのライアン・グレイブス氏(写真左)。そして、その右がハイメ・マウサン氏。

しかし、このニュースはあくまで“主張”や“報告”として捉えるべきかもしれません。メキシコ政府の公聴会ではありますが、ここでの発言はマウサン氏個人の主張に基づいたものです。そして過去の記録からすれば、彼らの言葉は「よどみなく信頼できる」ものとは言いきれませんので…。

エイリアン
Anadolu Agency//Getty Images
公聴会で公開された2体の「人間ではない」存在のうちの1体。ケースに展示された遺体の両手の指は、3本でした。

過去には嘘の「宇宙人」写真で
イベントを開催したこともある…

ファクトチェックを行うアメリカのウェブサイト「Snopes」に2017年に掲載された記事によると、2015年にマウサン氏とベニテス氏は「Be Witness」というイベントで、宇宙人とされるミイラ化した遺体を公開しました。マウサン氏はこのイベントを主導しており、ベニテス氏はミイラを調査する主任研究者の一人でしたが、この発見は後に否定され、ミイラは人間の子どもの遺体であることが明らかになったのです。

マウサン氏とベニテス氏は、意識の進化に力を与える真実の探求者と信者の会員制メディアネットワーク「Gaia.com」のビデオプロジェクトにも参加しており、ペルーのナスカ郊外で発見されたミイラ化した遺体に焦点を当て、それが「宇宙人である証拠ではないか?」という仮説を立てました。とは言え「Gaia.com」に対して多くの人は、「長年、疑似科学や陰謀論を宣伝してきた」という印象を持っています…。

今回公開された宇宙人の遺体について、SNSのRadditには「既に2021年に嘘が暴かれている」という動画が9月14日(木)に投稿されました。動画は、宇宙人の遺体とされるものは、ラマなどの哺乳類を使ってつくられたものだと主張しています。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Jaime Maussan muestra en exclusiva restos extraterrestres y asegura son verdaderos | Programa Hoy
Jaime Maussan muestra en exclusiva restos extraterrestres y asegura son verdaderos | Programa Hoy thumnail
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9月20日(水)にマウサン氏は、メキシコの放送局Las Estrellas(ラス・エストレージャス)の情報番組『hoy』に出演。ペルーのナスカで発見されたミイラをスタジオに持ち込み、それが何であるか? どのようにして彼の手に渡ったかを説明。公証人の署名入りの証明書を添えて、それが本物であることを保証し、自らの威信をかけた主張を行っています。

大手各紙もまた、マウサンの公聴会での発表や主張について否定の論調です。

ニューヨークタイムズ」紙は、「メキシコ国立自治大学が声明の中には、『クライアントから提供された皮膚の検体を、炭素年代測定法を使って調べただけ』と主張している」と報じています。さらにマウサン氏の過去に触れ、「これまでもテレビやYouTubeで聞きかじりの疑似科学をもとにした主張をしながら、自分が販売している健康サプリメントを売り込むことで有名な人物」ともつづっています。

宇宙に関する情報に特化したサイトspace.comも、「マウサンは以前、偽のエイリアンの遺体をエイリアンと主張した事例がある」としています。それは前出の「Be Witness」のこと。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

そして9月14日(木)には、アメリカ航空宇宙局(NASA)もUAP研究に関する報告書を発表する会見を行っています。そこで英BBCの記者が、「宇宙人の遺体について、メキシコ当局と連絡を取り合っているか?」と質問したところ…、NASAのUAP研究会を率いるデビッド・スパーゲル(David Spergel)氏は「メキシコ政府に提言するとしたら、『何か変わったものがあるなら、それを世界中の科学者が研究できるよう公開すべきだ』ということですね」と述べています。

このことに関しては、間違いなくさらなる調査が必要となります。最近では、「骨が組み立てられるなどした形跡はない」とも報じられています。つまりは、今のところ宇宙人である可能性は低いと言うしかないでしょう。とは言え、「これは宇宙人だ」と断言することも、そう簡単にはできないことも皆さんご存じのことでしょう…。

source / POPULAR MECHANICS
Translation & Edit / Satomi Tanioka
※この翻訳は抄訳です