中国製のヒューマノイドがロボットの速度記録を更新。時間との勝負が始まっています

人間はまだ機械に対して優位性を持っています。しかし、その優位性はいつまで続くでしょうか？

By Darren Orf公開日:2024/04/11

koyu//Getty Images

記事のポイント

人間の二足歩行を再現することは、ロボットエンジニアにとって難しい課題ですが、ロボットや人工知能の能力や性能は日々向上し、より高度なタスクをこなせるようになっています。
中国のユニツリー・ロボティクス社（Unitree Robotics）が開発した新しいロボット「Unitree H1」（以降、H1）が、ヒューマノイドロボットの速度記録を更新したことが発表されました。H1は秒速3.3メートル、つまり時速約7.4マイル（時速11.9キロメートル。一部の情報では、時速11マイル<時速17.7キロメートル>に達したとも）を記録しています。
これはまだ人間の平均的な走行速度には及びませんが、かつては競争するまでもなかった数値が、いまや勝負が微妙になるほどに接近してきています。

ロボットのスピードが
人間のレベルに
近づいてきている

人間の身体は、ロボットにとって理想的なテンプレートとは言えません。霊長類の中で、ほとんどの時間を二本足で過ごすのはホモ・サピエンスだけ。これは生物学的な異例で、人工的に再現するのは必ずしも容易ではありません。過去10年間、多くの企業が印象的な模造品、つまり実際の少年のように走ったり、ジャンプしたり、つまずいたりできるロボットをつくってきました。そして、どれも人間のようなスピードを再現することができませんでしたが、それは変わり始めています。

3月初め、中国のロボット企業ユニツリー・ロボティクス社は、同社のヒューマノイドロボットH1の素晴らしい特性*1を強調した画期的なビデオをYouTubeにアップしました。その特徴の中で最も印象的と言えるのは、このロボットの驚異的な速さです。

その速度は秒速3.3 メートル、つまり時速約 7.4 マイル（時速11.9キロ）をたたき出しました。これは以前の記録保持者である、ボストン・ダイナミクス社の二足歩行ロボット「アトラス」の記録、時速5.59マイル（時速8.94キロ）をはるかに上回ります。ユニツリー・ロボティクス社は「自社のロボットが最大時速11マイル（時速17.7キロメートル）に達することさえ可能である」と主張しています。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

Unitree H1 Breaking humanoid robot speed world record [full-size humanoid] Evolution V3.0

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2017年に上海郊外の杭州で設立されたユニツリー・ロボティクス社のミッションは、「スマートフォンやドローンと同じくらい手頃な価格の、二足歩行ロボットを開発すること」です。You Tubeで紹介された90秒のビデオでは、H1のジャンプ能力と階段を上り下りする能力も紹介されています。これらのタスクを人間と同じように完璧にこなすことはできませんが、それでもかなりうまく動けています。

H1は重量が約110ポンド（約50キログラム）で、身長は約5フィート11インチ（約180センチ）。ビデオで紹介されたバージョン3モデルは、864Whのバッテリー容量と、“ヘッド”に搭載された一連のナビゲーションセンサーを備えています。そして、ここがH1の超人的な能力で際立っているところなのですが、3D LiDAR（レーザー光を利用して物体までの距離や方向を測定する技術）と深度カメラがリアルタイムで空間データを提供することで、H1は360度の視野で周囲の環境を把握することができるとのこと。

H1は他のヒューマノイドロボットに比べると速いですが、それでも人間のピーク時のパフォーマンスには遠く及びません。ウサイン・ボルトは100 メートルのレースで時速27.33マイル（時速43.98キロメートル）*2を記録していますし、人間の平均的なスプリント速度もH1の2倍以上ということ。

さらにH1には、他にも競合するロボットが存在しています。オレゴン州立大学工学部が2022年に設計した「キャシー」という名前の二足歩行ロボットは、100 メートル走を 24.73 秒で完走しました。これはウサイン・ボルトのレベルには及ばないものの、時速9マイル（時速約15キロメートル）*3の走行速度を達成しています。ですが、「キャシー」は実際にはH1やアトラスのような完全なヒューマノイドロボットではなく、脚に小さな駆動モーターを装備したロボットなので、比較にならないかもしれません。

走るという面では人間がまだまだ優位ですが、ロボットも徐々にその速度に追いついてきていることを知っておきましょう。