• 原子力発電所で使用されたグラファイト(黒鉛)を、最先端のダイヤモンド電池として利用できる可能性があります。
  • グラファイトは原子力発電の減速材として使用されたもので、これをダイヤモンドのカタチへと変えることで、低電流を生成します。
  • この電池は極めて長寿命で、ヘルスケア分野や航空宇宙分野、極限環境での研究などに活用できる可能性があります。

 イギリスの研究チームはこのたび、廃炉になった原子力発電所の廃棄物を最先端のダイヤモンド電池としてリサイクルしようとしています。この種の炭素を人工ダイヤモンドへと変える手法とは、原料となる物質をガス状態で供給し、これを固体表面で反応させることによって固体反応性生物(カプセル壁)を獲る手法である「Chemical vapor deposition(化学気相蒸着)」と呼ばれます。

 このプロジェクトに協力するのは、英グロスターシャー州(ロンドンから西に2時間ほど、カントリーハウスで有名なコッツウォルズを含む地域)のバークレー原子力発電所。イングランド歴史的建造物および記念物委員会「Historic England(ヒストリック・イングランド)によれば、バークレー原発はイギリス初の商用原子力発電所であり、1989年の運転停止後に廃止措置中だとのこと。

 運転停止から30年が経った今、研究チームはついにこの発電所の一部に安全に入れるようになりました。具体的には、原子炉ではなく発電所地下にある廃棄物置き場であり、ここには使用済みのグラファイトが保存されている場所になります。

 今回の研究を主導するブリストル大学のトム・スコット氏によれば、「放射性物質をダイヤモンド内部にカプセル化することで、このグラファイトは長寿命で極限環境に耐えうるダイヤモンド電池へと変えることができる」ということ。

 「この数年間私たちは、構成の不安定性を持つ原子核が放射線(α線、β線、γ線)を出すことによって他の安定する原子核へと変化する現象…つまり、放射性物質が放射線を出す原因である「放射性崩壊」からエネルギーを得る超低電力センサーの開発をしてきました」と、スコット氏は説明します。

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このプロジェクトに協力したバークレー原子力発電所。

 スコット氏によれば、グラファイト・カーボン(黒鉛炭素)を電池用ダイヤモンドへと変える工場は、廃炉になった発電所と同じ場所に建設すると述べています。「炭素14」の半減期は5000年以上であり、ダイヤモンド電池はその間ずっと電力を生み出すため、補聴器用バッテリーやリモコン用の単4電池の数千倍の寿命があるということ。また、放射能はダイヤモンドの中に閉じ込められているため、電池切れになる前に放射能が分解する可能性はありません。

 そうしてスコット氏の研究チームは、プロトタイプのダイヤモンド電池のテストを火山で行い、このバッテリーが極限環境でも役立つことを確認しました。とは言え、目下のところこのようなバッテリーは、まずはペースメーカーのような機器に組み込まれる可能性があります。そしてバッテリーを交換する必要がある場合には、外科的な手術が必要となるでしょう。

 また、極限環境での用途には、宇宙飛行も含まれます。ダイヤモンド電池は外部の補助や干渉なしに、5000年稼働する自己完結型の電池となりますので、重い使い捨て予備燃料に替わる可能性もここに浮上してきました。

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‘Diamond-age’ of power generation as nuclear batteries developed
‘Diamond-age’ of power generation as nuclear batteries developed thumnail
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 このように、小型で長持ちする電源には世界から大きな期待がかけられています。特に、小さなブースターロケットで国際宇宙ステーション(ISS)の向きを変える宇宙では、大いに役立つことでしょう。この電池は中間インターフェースや配線、導体も不要で、化学反応のみで継続的に低電流が生成されるのです。

 バークレー原子力発電所は、世界初の商用原子力発電所と言われています。ですが、この呼び名は誤解を招くかもしれません。と言うのも、この原子力発電所は、核兵器燃料の原料の生産拠点としても大いに役立っていたからです。

 世界初の増殖炉は、1951年に米国でつくられました。それはアイダホ州アルコから18マイル(29 km)南東に離れた砂漠の中に建設された高速増殖炉実験炉「EBR-I(Experimental Breeder Reactor No.1)」です。

 そしてこの原子炉は、核時代の夜明けとともに、すぐに世界中へと広がりました。増殖炉は、消費する核燃料より多くの核燃料を生成できる原子炉になります。これにかかる時間は倍増時間と呼ばれ、増殖炉は無限のエネルギーを生み出すはずでした…が、主要な商用電源として普及するには、十分な頑丈さを持つことはできなかったというのが現状だったわけです。


Source / Popular Mechanics
Translation / Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。