この表現を許してほしいのですが、昨今の「ワシントン・ポスト」紙はこのところ、「アメリカの一部地域では水が少なく、また別の地域では多くなるように中国が巧妙に何かしている…」といった気候変動のデマの真相を追うことに熱中しているようです。

2023年4月、米国内務省はコロラド川流域の主要な貯水池の運用方法に関する新たな環境声明を発表します。そこで、20年にわたる干ばつと慢性的な水の過剰使用によってアメリカ西部が直面している痛ましい窮地について述べました。また内務省の関係者は、「例え100年以上前から農村が守ってきた水の利権に反していても、緊急時には水の使用量の削減を行う」というデブ・ハーランド内務長官の権利を擁護しています。

この1年間、コロラド川流域の7つの州は「貯水池の水が枯渇しないよう、水の使用量を大幅に削減する」という合意を州間で結ぶことができませんでした。ですがアメリカ連邦政府は、2023年8月までに削減分の分配について決定する方針です。――「ワシントン・ポスト」紙

人々は何年も前から、水不足について警鐘を鳴らしてきました。そして今、その危機はひっ迫しており、深刻な状況にあるコロラド川をめぐって大規模農家、先住民族、水の利権、財産権、生存権などが複雑に絡み合い、さまざまな政治的問題を引き起こそうとしています。

そしてこの問題は、今後どの政権にとっても火種となるでしょう。今のところバイデン政権は、「大都市への給水量を減らし、農業利用を優先する」「長年の削減システムを変更し、水の使用削減量をコロラド川流域の利用者へ同じ割合で割り当てる」「何もしない」というホブソンの選択(選択の余地がない状況)を迫られています。

連邦政府も州政府も、「何もしない」という第3の選択肢は最悪だとしています。気候変動と西部地域の干ばつによって、数千万人にとっての水源であるパウエル湖とミード湖の貯水池はダムの水力発電ができなくなり、さらには南部の州に水が行き届かなくなる状態に陥る可能性があるためです。

4月11日、米国開拓局のカミール・カリム・トゥートン長官は「何の対策も講じなければ水位が下がり続け、システムの運用や4000万人への水の供給が脅かされることが予想される」と、フーバーダムの会議室で発言しました。――「ワシントン・ポスト」紙

この影響を受ける州は、水の使用量削減に向けて独自に動いています。ですが、もしそれが実現できなかった場合、連邦政府が介入することになるでしょう。また州が連邦政府に対して起こす訴訟が後を絶たず、州の中や州と連邦政府との間に大規模な政治的分裂が生じる可能性もあります。

連邦政府の2番目の選択肢にある比例削減は、水の供給システムを保護するためのハーランド内務長官の法的権限に基づくものです。「『適切な提示は、人々の健康と安全を提供し、緊急時のシステムを管理し、有効利用できるだけの水を提供をするための長官の権限に基づく』というのが私たちの考えになります。供給システムを守るのは長官の責任であり、同時にそのための権限も持っているのです」と、ボードロー内務次官は述べています。

連邦政府の決定に対して各州が訴訟を起こすことになれば、ハーランド長官の権限が問題になる可能性があります。こうした訴訟による脅威は最初から懸念されており、多くの人が「訴訟が長引けば対策が遅れて貯水池が減り続けるのではないか」と不安視しています。

アリゾナ州水資源局のトム・ブシャツキー局長は、「そのような事態は避けなければならない」と言います。「10年、15年、20年かかるかもしれない訴訟が、システムと貯水池が崩壊していく間に起こることになるのです」――「ワシントン・ポスト」紙

一方、アメリカのもう半分の地域では、海面上昇の危機にさらされています

海面上昇の加速度はハイペースで、かつては保護されていた湿地帯やマングローブ、海岸線を縮小し大規模な開発を行ってきた広い範囲の地域に影響を及ぼす可能性があります。何百万人もの人々が暮らしているもののすでに危機が迫っている地域は、より深刻化するとともに急速に拡大し、アメリカの広範囲で激しい嵐や洪水による危険にさらされる可能性があります。…

...「急速な海面上昇は、海洋の大きな変化が原因と考えられる」というこの発見は注目に値します。というのも、「テキサス州とルイジアナ州の一部地域では地盤沈下が続いており、そのために相対的に海面の方が高くなる」ということが長い間言われてきたのです。

しかし最新の研究によると、ルイジアナ州のグランド・アイルやテキサス州のガルベストンのような場所ほど急速に土地が沈んでいないにもかかわらず、フロリダ州のペンサコラやシダー・キーといった場所で、海面が急速に上昇していることが科学者によって示されています。

一般に、「メキシコ湾とフロリダ周辺は海面が上昇したことにより、アメリカの中でも特にハリケーンが威力を増して多発するといったリスクがより一層深刻になる」とされています。――「ワシントン・ポスト」紙

海面上昇の加速の原因については、科学者の間でも意見が分かれています。が、それは良いことであると言えます。政治家をできるだけ巻き込まず科学者の間で正直に議論することが、本来とるべき方法なのです。また海面が上昇し続ける中で、適切な議論を続けるための最良の方法でもあります。

メキシコ湾やアメリカ南東部で現在起きている海面上昇の原因について、科学的な議論が重ねられてはいます。地域に与える影響は、今後ますます大きくなっていくと思われます。

NASAの海面上昇に関する専門チームに所属し、スタインバーグの研究の共著者でもあるベン・ハムリントン氏は、次のように述べています。

「近い将来に起こることを言うのは、非常に難しいです。状況がすぐに好転するわけでもありません」――「ワシントン・ポスト」紙

コロラドの深刻な水不足も湾岸地域の海面上昇も、政治的な問題ではありません。それに対して、私たちが関心を持って行動を起こしていくことが重要であると言えます。

Source / ESQUIRE US
※この翻訳は抄訳です