私たちの支援を必要としている絶滅危惧種の海洋生物20
巨大なジンベエザメから食卓でもおなじみのマグロまで、絶滅の危機にある海洋生物は乱獲、汚染、生息環境の悪化などの犠牲となっています。
絶滅の危機に瀕している海洋生物の数が増え続けている現在、その原因となっている生息環境の悪化、汚染、乱獲などは「人間の行動が大きな一因となっている」ことを認識する必要があります。そのためには、絶滅の危機にある海洋生物について勉強して情報発信したり、うっかり捕まえてしまったときにどうすればいいかも学んだりするなど、保全活動に少しでも関わっていくことが欠かせないこととなるしょう。
アメリカの「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(種の保存法)」では、「約2270種の海洋生物が世界的に絶滅の危機に瀕している」とされています。そこでこの記事では、その中でも特に興味深い20の生物について、絶滅に瀕している理由や支援方法などをご紹介します。
スモールトゥース・ソーフィッシュ
スモールトゥース・ソーフィッシュは、全身の骨が弾力性のある軟骨からなる軟骨魚類。細長い鼻を持ち、ワニとサメの交配種のように見える奇妙な姿をしていますがエイの一種です。
フロリダ沖に生息し、暖かい熱帯の海水を好む回遊魚です。アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、昔はテキサス州からフロリダ州、東海岸からノースカロライナ州までメキシコ湾全域に生息していたそうです。
- 状況:絶滅寸前
- 絶滅に瀕している理由:スモールトゥース・ソーフィッシュの個体数は、「生息地の消失」と「混獲(目的以外の海洋生物を意図せず漁獲すること)」という2つの主な要因によって、20世紀後半に激減しました。
フロリダ州の沿岸で建設が盛んになったことでスモールトゥース・ソーフィッシュの幼魚が育つ浅い入り江が姿を消し始め、また誤って網にかけた漁師が逃がすことなく、処分してしまうことも多かったのです。 - 支援のためにできること: 趣味で釣りをする人は、 NOAA Fisheries(アメリカの海洋資源・海洋生物の管理、保全、保護を目的とした、米国商務省が管轄する機関)が作成した、スモールトゥース・ソーフィッシュを安全に扱い、放流するためのガイドラインをよく読んでおきましょう
白アワビ
「白アワビ」と言うと、美しい貝殻の中に入っているおいしい食べ物を思い浮かべるかもしれません。NOAAによると、この軟体動物は実は草食性の海生巻貝の一種で、先住民が何千年も前から食べてきたものなのだそうです。
白アワビはオレンジ色の筋肉質な足を使って岩に付着し、藻類や漂流海藻を食べます。2001年に海洋無脊椎動物として初めて絶滅危惧種に指定されました。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:1970年代にカリフォルニア沿岸で行われた商業・娯楽目的の乱獲が白アワビの減少の主な原因で、4~6歳になるまで性成熟しないという特殊な交尾習性もその生息数の減少に大きな影響を与えています。
また、消化器官に悪影響を及ぼす「ウィザリング症候群」という病気にも悩まされています。 - 支援のためにできること:白アワビを見つけたり捕まえたりした場合は、安全に海に逃がしてください。白アワビの個体数を増やすための研究に取り組んでいる、アメリカ・カリフォルニア州ロングビーチにある太平洋水族館(Aquarium of the Pacific)に寄付することもできます。
アオウミガメ
野生のアオウミガメとの遭遇は、息をのむような感動を与えてくれます。ですが、保護活動を続けていかなければ、そのような経験はできなくなってしまうかもしれません。
アオウミガメは、藻類や海草を食べるために甲羅の色が緑色をしていることから、その名がつけられました。世界80カ国以上で産卵し、140カ国以上の沿岸域に生息しているこのウミガメには、絶滅の危機に瀕している11の個体群がいることがわかっています。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:漁具による混獲、卵の捕獲、産卵地の環境破壊、船舶衝突、海洋汚染、気候の温暖化、病気など、多くの地域で生息するアオウミガメはさまざまな脅威にさらされています。
- 支援のためにできること:多くの脅威にさらされ絶滅の危機に瀕しているアオウミガメですが、清掃活動に参加して海のゴミを減らしたり、産卵地に近寄らないようにしたり、他にも砂浜を車で走らないようにする、ふ化したばかりの子ガメの邪魔にならないように砂浜の近くでは電気を消す、遭難したカメを見かけたら報告するなど、さまざまな方法で助けることができます。
コガシラネズミイルカ
残念ながら、このイルカはリストの中で最も絶滅の危機に瀕していて、現在は約20頭のコガシラネズミイルカが野生で生きていると推定されています。
コガシラネズミイルカは、大人になると体長約120〜150cm、体重約30〜55キログラムほどに成長します。NOAAによると、わずかに残っている個体群は、カリフォルニア湾の北部にのみ生息しているそうです。
- 状況:絶滅寸前
- 絶滅に瀕している理由:現在わかっているコガシラネズミイルカにとっての脅威は、漁具に絡まってしまうことです。ブイ(浮き)とブイの間に帯状の網を垂らして魚を絡めとる刺し網漁が主な原因となっています。
- 支援のためにできること:違法な漁、特にコガシラネズミイルカが混獲されていることに気づいたら、NOAA Fisheries のホットライン (800) 853-1964に電話して報告してください。
ジンベエザメ
ジンベエザメは、記録に残っている最大の個体が全長18.8mと、世界最大の魚であることが確認されています。その大きさとは裏腹に、大きな口でプランクトンや小魚をえらでこすようにして食べる、ろ過摂食動物です。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:ジンベエザメの主な脅威は漁業、網での混獲、船舶の衝突ですが、石油やガスの掘削のような脅威も一部地域では発生しています。
- 支援のためにできること:世界自然保護基金(WWF)の野生動物アドプト制度(絶滅の恐れがある野生動物と、その生息環境を保全するプロジェクト)を通じて、ジンベエザメの里親(スポンサー)となり保全活動を支援することができます。
ウミイグアナ
ウミイグアナは、ガラパゴス諸島の固有種です。他のイグアナとは異なり、水中に潜って藻類を採食することができるトカゲです。
- 状況:危急
- 絶滅に瀕している理由:エルニーニョ現象による海洋循環(海水温の上昇により、藻類がダメージを受けて減少すると知られています)、石油の流出、外来捕食者
- 支援のためにできること:WWFを通じてウミイグアナの里親となって保全活動を支援することができます。
スナメリ
スナメリは長江をはじめとする東南アジアや東アジアの湖や川に生息し、高い知能を持つことで知られています。WWFの推計によると、野生のスナメリは約1000〜1800頭しかおらず、その数は減少の一途をたどっているそうです。
- 状況:絶滅寸前
- 絶滅に瀕している理由:違法密猟、生息地の環境破壊
- 支援のためにできること:長江沿いの湿地帯の回復と汚染の軽減に取り組むWWFに寄付しましょう。
ジュゴン
マナティーに似ていますが、ジュゴンはまったく別の動物です(ただし、ジュゴンもマナティーも海牛目に属しています)。ジュゴンは草食性の人懐っこい穏やかな海獣で、大人になると体重が約300kgにもなります。
- 状況:危急
- 絶滅に瀕している理由:海岸開発、生息地や餌(海草)の減少、水質汚染
- 支援のためにできること:WWFを通じてジュゴンの保全活動を支援することができます。
インドガビアル
ワニ目の動物であるインドガビアルは、単にガビアルとも呼ばれ、細長い鼻が特徴です。淡水域に生息し、「ナショナル ジオグラフィック」によると、かつてはパキスタンからミャンマーまで生息していましたが、現在はインドとネパールにしか生息していないそうです。
- 状況:絶滅寸前
- 絶滅に瀕している理由:乱獲や生息地の変化(人工ダムの建設といったことが原因)などに脅かされています。インドガビアは生きていくために水を必要としますが、ダムが建設されるといったようなことで環境が変わると水量が減り、苦しむことになります。
- 支援のためにできること:3つの生物多様性保全団体からなる「Conservation Leadership Program (CLP) 」のプログラムから、ガビアルやその保全のために行われている研究について学びましょう。
クロマグロ
私たちにとってもなじみ深い魚が、大きな危機にさらされています。海洋保護にフォーカスして取り組む国際的な擁護団体であるOceanaによると、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の推定では、現存する成熟したクロマグロは2万5000体ほどしか残っていないそうです。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:クロマグロの大きな敵は、乱獲、畜養(マグロを生きたまま捕獲し、数カ月間餌を与えて太らせてから輸出すること)、そして餌となる獲物の減少です。
- 支援のためにできること:クロマグロについて学び、絶滅の危機に瀕している動植物の保護のために活動をしているCenter for Biological Diversityに寄付しましょう。
ケープペンギン
ケープペンギンは、ロバに似た鳴き声と足の色から「ジャッカスペンギン」「足黒ペンギン」とも呼ばれており、アフリカでのみ繁殖しています。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:繁殖地の破壊、石油の流出、餌となる魚の乱獲などがケープペンギンにとって、大きな脅威となっています。
- 支援のためにできること:アメリカ・カリフォルニア州にあるモントレーベイ水族館によると、Southern African Foundation for the Conservation of Coastal Birds(SAANCOB)のようなペンギン保護団体を支援すること、そしてシーフード・ウォッチのウェブサイトを利用してレストランや食料品店で持続可能なシーフードを選択することが手助けになるそうです。
サンゴ
サンゴも海の動物であり、海の生態系の重要な一部であることを忘れてはいけません。サンゴは他の海の生き物を守り、繁殖や産卵の場にもなっています。
コククジラ
クジラの中では珍しく、ヒレの代わりに背面に隆起があり、うめき声、うなり声、ノックのような音など、独特の発声で知られています。メキシコ西部のバハ・カリフォルニアに生息するコククジラは人懐っこいイメージがありますが、子クジラを守る母親の獰猛さは世界的に有名です。
- 状況:北太平洋西部の地域に生息する個体群は絶滅危惧種に登録され、東部では指定を解除されています。
- 絶滅に瀕している理由:何世紀にもわたる乱獲の結果、北大西洋の個体群は絶滅し、北太平洋西部の個体群は絶滅寸前となっています。ですが漁獲制限により、北太平洋東部の個体群は回復し、1994年にアメリカの絶滅危惧種リストから除外されました。
- 支援のためにできること:WWFのウェブサイトでコククジラについて学んだり、寄付をしたりすることができます。
セッパリイルカ
ニュージーランド沖の沿岸海域で生存しているとされる個体は、わずか7400頭。国際自然保護連合(IUCN)はセッパリイルカを絶滅危惧種に位置づけています。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:混獲、汚染物質、船との衝突
- 支援のためにできること:WWFのウェブサイトでセッパリイルカについて学び、保護活動のために寄付しましょう。
メガネモチウオ
眼鏡をかけているような模様からその名がつけられた、メガネモチウオ。成長すると前頭部がコブのように大きく張り出し、それがナポレオンのかぶっていた帽子にも見えることから、ナポレオンフィッシュとも呼ばれます。
太平洋の島々やインド洋の岩礁に生息し、サンゴ礁に生息する魚の中では最大級の魚です。また雌雄同体で、成熟の過程で性別が変わります。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:成魚になるまでに時間がかかること、もともと数が少ない珍しい魚であること、漁師が産卵場所を予測しやすいことなどから乱獲が問題になってきました。
- 支援のためにできること:WWFのウェブサイトで、メガネモチウオをはじめとした絶滅の危機に瀕している海の生き物について学びましょう。
アカウミガメ
NOAAによると、「アカウミガメは大きな頭部と硬い殻を持つ軟体動物を食べるための巨大な顎の筋肉が特徴」と言います。アメリカで多くの巣をつくっているというウミガメです。
- 状況:絶滅のおそれのある状態(地域による)
- 絶滅に瀕している理由:ウミガメの大敵は漁具ですが、生息地の減少や気候変動もウミガメを絶滅の危機に陥れる一因となっています。
- 支援のためにできること:海に流れ着くゴミの量を減らすことが重要です。また、アカウミガメやその他の野生の海洋生物を見かけても距離を保ち、もし苦しんでいる生き物を見つけたら通報しましょう。
マナティー
陸上に住む哺乳類に似ているマナティーは、体は大きいですが草食で穏やかです。マナティーの生息地にはアメリカ・フロリダ州~ブラジル、アマゾン川流域、アフリカの西海岸・河川がありますが、フロリダ州で現存する個体は3000頭以下と言われています。
- 状況:絶滅危惧
- 絶滅に瀕している理由:フロリダで2010年冬に異常なほどに冷え込んだことにより個体数が減少し、さらに有毒藻類(人間による汚染が原因)の発生、生息地の減少、船との衝突などがマナティーの脅威となっています。
- 支援のためにできること:北米の絶滅危惧種に関する保護団体であるDefenders of Wildlifeのウェブサイトで、マナティーやその他の絶滅の危機に瀕している海洋生物について学ぶことができます。
チチュウカイモンクアザラシ
WWFによると、世界で特に絶滅の危機に瀕している6種の哺乳類の1つであるチチュウカイモンクアザラシは、かつてポルトガルからセネガルにまで広く生息していたそうです。現在では、わずか500頭がいくつかの群れで残っているだけと言います。
- 状況:絶滅寸前
- 絶滅に瀕している理由:チチュウカイモンクアザラシは乱獲、生息地の破壊、汚染、餌となる魚の減少、漁業の妨げになると駆除されたことなどが原因で減少しました。
北極や南極の環境が急速に変化する中、他のアザラシも地球温暖化の脅威にさらされている可能性があります。 - 支援のためにできること:WWFのウェブサイトで、アザラシやその他の絶滅の危機に瀕している海洋生物について学ぶことができます。
マスノスケ
世界で人気の高いシーフードであり、スポーツフィッシングでも楽しまれているサケが、いま危機に瀕しています。野生のサーモンの販売による売上は世界中の多くの地域を支えていますが、サケが生きていくためにはきれいな川と海が不可欠です。
- 状況:2種が絶滅危惧、7種が絶滅危機に指定されています。
- 絶滅に瀕している理由:アラスカからカリフォルニアにかけてマスノスケ(別名:キングサーモン)の数が減少しており、汚染、地球温暖化、混獲が原因であると言われています。
- 支援のためにできること:生息地の保全と規制措置について学びましょう。
ラッコ
地球上でも特に密度の高い毛皮を持つラッコは、他の海洋哺乳類にとって断熱材のような役割を担っている脂肪の層がなくても、寒い海を生き抜くことができます。また、体を温めるためにたくさん食べる必要があり、1日に体重の4分の1もの量を食べます。
アメリカ西海岸のアラスカ州からワシントン州にかけて生息する種類のラッコの個体数は約7万7000頭ですが、カリフォルニア州沿岸に生息する種類は3000頭以下と少なくなっています。
- 状況:絶滅危機
- 絶滅に瀕している理由:ラッコにとって最大の脅威となったのは、過去に毛皮貿易によって100万頭以上いたラッコの数が2000頭未満に減少したことです。
現在も石油の流出、生息地の減少、餌の減少、病気、漁具への巻き込み、貝類漁業との競合(ラッコはムール貝、アサリ、カニなど人間も好む魚介類を好むため)などが脅威となっています。 - 支援のためにできること: Defenders of Wildlifeのウェブサイトでラッコについて学んだり、寄付することができます。
Source / POPULAR MECHANICS
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。