今年もあっという間に、
東京モーターショーが閉幕し、
クルマ好きのみなさんもとりあえず、
一段落したことかと思います。

電気自動車(EV)が注目された、
今年の東京モーターショーですが、
海の向こうでは画期的なクルマが
存在しているとのこと。

『エスクァイア US』のエディターは独自に
世界初の3Dプリント自動車の存在を発見し、 
実際に試乗。その様子をレポートしてくれました。

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荒削りだけどルパン3世で登場したサンドバギーにも似て、カッコいい! 安全性が気になりますね。

世界初の3Dプリント自動車

 今春、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)のCEO(最高経営責任者)セルジオ・マルキオンネ氏は、自動車業界が設計と製造に莫大な費用を費やしているとして、業界を非難しました。 

 彼の解決策は、統合し重複をなくすという古典的なビジネス原則に基づいているのです。ローカルモーターズ社CEOジェイ・ロジャーズ氏も同じ問題を抱えていますが、まったく別の角度からこれに立ち向かっています。 

 ロジャーズ氏が問題視したのは、事業組織に由来するものではありませんでした。車を作るそもそもの工程に着眼した画期的なものだったのです。数千もの工業部品を組み立てラインで組み立てるという、1915年以来同じ手法で自動車を製造しているという壁をぶち破ることだったのです。この工程を、闇雲なまでに守る必要があるのかという姿勢です。 

 そうして、そのことが正しい着眼点であったことを証明する車が、テネシー州ノックスビルのガレージに格納されていたのでした。充電満タン準備完了の状態で、いつ走ろうかとタイミングを見計らっていたのでした。

  
 コスト削減問題に対するローカルモーターズ社の解答が、世界初の3Dプリント自動車「ストラティ」だったのです。「ストラティ」は、(見た目は格好いいと感じる方も少なくないかと…)どちらかと言えば地味な車と言えるでしょう。テネシー州オークリッジ国立研究所と協力し、印刷による製造はデトロイトで行われました。「ストラティ」は2人乗りの小型電気自動車で、ローカルモーターズ社は他にも数多くのモデルを製造しようとプロジェクトを進めるなかの初のモデルになります。 

 現在2つの工場が建設中で、年末には完成する予定。その各々で、新たに従業員を100名ずつ雇用することになっているそうです。この工場でローカルモーターズ社は、自社の自動車を製造する計画で現在進めていますが、最終的には相手先商標製造会社(OEM)のサプライヤー事業も実施しよういう計画だそうです。すでに、ロジャーズは複数企業と接触中とのこと。「『これはプロトタイプとしては素晴らしい』と言ってくれた企業もある」と、ロジャーズ氏は語っています。また、「『プロトタイプということは忘れてください!これが車の作り方なんです』と私は言ったよ」と、ロジャーズはさらに饒舌に語ったそうです。まさに革新的なアイデアであり、自信をもって推進してることが理解できると思います!

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 皆さん、いかがですか? ここで披露している上の世界初3Dプリント自動車は、デザイン面では荒削りなことは一目瞭然です。ダッシュボードはコーキングガン(シーリング材注入器)でシリコンビーズを重ねたように見えますね。でも一方で、その側面は滑らかでBMWi3のマットカーボンタブの露出部に似ているのです。「どう見えるかを示すため、サイドに刻みを入れた」とロジャーズ氏は語っています。「他の部品は、プリントアウトしたままなので、その作りは見ればわかる。だが、我々は思いのままに見せることができる。上にビニールラップをかけることもできるし、車は完全にリサイクル可能だ」とのこと。
 

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写真:タイヤの直径は大きいですが、 
高い空気圧や低い転がり抵抗に合わせるため、 
非常に細くなっていることが特長の一つと言えます。

 
 「ストラティ」は、カーボンファイバーで強化したプラスチックを使用しており、これは汎用性があり、強度も高く、比較的安価な素材なので、安全性に対する新たなアプローチを可能にしています。3D印刷の特性により、巨大プリンターのノズルから射出された層で車を製造した場合、衝突エネルギー吸収構造や超強力シートベルトマウントを、車体深くに固定して組み込むことができるのです。歩行者との衝突を緩和するために弾力性のあるバンパーを取り付けることも可能です(ローカルモーターズ社はまさに現在、ニンジャフレックスと称するプリンターで使用できる弾性ポリウレタン素材で実験を行っている)。 

 思いがけず車体に非常に激しい損傷を受けた場合でも、モーターとサスペンションを取り外し、車を溶かして新たにプリントアウトすることが可能なのです。もちろん、ノックスビルに停まっている「ストラティ」にはシートベルトすら取り付けられていませんが……、これこそコンセプトを証明しているのでした。

気になるその乗り心地は!?

 私が運転した試作車は、ローカルモーターズ社が3番目にプリントしたもので、40時間かけて制作されたものとのこと。 ローカルモーターズ社は現在、エレクトリックパワートレインのサプライヤーを求めており、今のところ「ストラティ」はパワフルなゴルフカート用のモーターで代用しています。後輪駆動の「ストラティ」は、シティカーを想定しています。ロジャーズ氏は、パフォーマンスの可能性も視野に入れているように思えます。「ここに150馬力や200馬力のモーターを入れた場合、とても面白くなるだろうね…」と、ロジャーズ氏は述べていまた。

 「ストラティ」は、すでに面白い車であることは間違いありません。リアサスペンションがアルミのサブフレームに取り付けられ、ボディとシャーシの区別がつかない。車は並外れて頑丈でしっかりしています。代用モーターからはガチャガチャ音がしますが、車のボディ自体は静かなのです。三菱i-MiEVのモーターを後ろに取り付けたら、非常に面白いでしょうね。
 

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写真:まさか3Dプリンターでここまで丁寧に 
デザインすることが可能に!? 衝撃的な事実です。

 
  最近、私が試乗したカーボンタブ一つでできた車は、「マクラーレン650S」です。そして、その価格は30万ドルを超えています。この「ストラティ」は、現状のモーター はパッとしないものの、5000ドル程度で購入が可能とのこと!! ですが、(ロジャーズ氏が先ごろインド旅行中、実際に目撃したという)1台のバイクに家族5人で無理やり乗り込むのなら、こちらのほうが良いと言えるでしょうね(笑)。

 
 開発途上国では低価格の移動手段として、この技術を歓迎することでしょう。逆に富裕層であるなら自らボディをデザインし、それをプリンターで製造したのち1000馬力のエンジンを積んだ車を作ろう!…とか思うことでしょうね。あるいは、24時間かけて製造するより、 わずかな部品で10時間で完成した車を大量生産したいという自動車メーカーには好都合なシステムだと思います。 

 現代の自動車は複雑になっていますが、3Dプリンターと電気推進エンジンの組み合わせは(モーターが単なる動く部品であるならば)実に画期的である、もはやそれが既定の事実となる未来もそう遠くはない気がしてしょうがありません。 

 現在我々は自動車が複雑化され、高価であることが当たり前だと思っています。でも「ストラティ」に乗れば、これら自動車を取り巻く既成概念が音をたてて崩れることでしょう。皆さんも、その日をイメージしてみてください。
 

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写真:ストラティは軽いため、 
ステアリングはアシストされていません。

By Ezra Dyer on August 9, 2015
Photos by ESQUIRE US
ESQUIRE US 原文(English)
TRANSLATION BY Spring Hill, MEN'S +
※この翻訳は抄訳です。 編集者:山野井 俊