クルーズ船嫌いを自認する旅行会社「Original Travel」の創業者、トム・バーバー氏がまったく新しいクルーズ旅行に注目しているのでした…。

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 Why Going On A Cruise Is No Longer Incredibly Tragic

「船旅をしたことがありますか?」という質問に対しての答えは、5年前なら即答で「ありません」でした。そう、もう少し長く答えるなら、「ありません。実際、船旅するぐらいなら死んだほうがましです」とでも答えていたかもしれません。

 私にとってのクルーズバケーションは「これさえなければ旅行業界は完璧なのに」と言いたくなるほど、化膿したニキビのようなものです。あるいは、世界中の素晴らしい観光地を煮詰めた美味しいブイヤーベースに入った、クロバエのようなものとも言えるかもしれません。

 ハエといえば、「数十億のハエがたかるものなら、悪いものであるはずはない」という考え方もありますが、私に言わせれば、世界中の2700万人は大きな間違いを犯していたと思っていたのでした。そう、クルーズバケーションはとにかく最悪なのですから…。 

  
 「なぜ、これほどクルーズをこきおろすのか?」とお思いでしょうか?

 クルーズ船が入港してきたばかりの港にいたことがある人なら、その後に、どんな恐ろしいことが起こるかおわかりかと思います。こういった巨大船は、ものによっては18階建てにもなり、入港と同時に数千人もの日焼けした不機嫌な乗船者たちを港に吐き出します。彼らは土産店に群がり、観光地以外の現地の魅力的な場所には見向きもしません。また、突然現れたかと思えば、排気ガスを吐き出しながら、あっと言う間に去っていくのです。クルーズ船という安易な金儲けに依存する、次の気の毒な港町に押し寄せるためです。

 悲しい現実ですが、クルーズ船が寄港する港町というのは、その乗客を2時間ほどの間だけもてなすために経済構造が変化してしまい、ほとんど必ずと言っていいほど、悪い方向に向かってしまうのです。

 そんな港町の典型的な例が、今年始めに訪れたグレナダの首都であるセントジョージズです。

 1950年代には偉大な旅行作家のパトリック・リー・ファーマーに「カリブ海でもっとも美しい街」と評されたこともあるこの街は、バルコニーがブーゲンビリアに覆われた上品なパステルカラーの家々が並ぶ景色を現在も残しています。ですが、クルーズ船が訪れるようになったことで、街は小さく見えるようになり、様々な悪影響が及んでいます。本当に残念と言わざるを得ません。 

 いままでずっと悪い話ばかりでしたが、まだ船上での生活については触れていないことに気づきましたか? では皆さん、乗船の時間がきました…。

 クルーズ船は巨大化するにつれて、ラスベガスのように乗客を楽しませるための突飛で余計なものをどんどん増やしてきました。船上シアターやプラネタリウムなどは、その一例です。ですが、1つ忘れられていることがあります。それは、どんなエンターテインメントがあろうと、そこは船の上なのです。次の寄港地に到着するまでは、どこにも行けないということを忘れないでください。 

 
 過去20年間において、クルーズ船で行方不明になった人の数は200人以上います。

 おそらく、このほとんどは酔っ払って不運な事故で船から落ちた人でしょうが、なかには卑劣な殺人の被害者となった人も多少はいるかもしれません。ですが、そんな不運な酔っぱらいの中には、「もう船の上はうんざり」と思った人もいたのではないでしょうか。
  

動画は、「PURE GRENADA」が公開しているグラナダに入稿するクルーズ船の様子。
  

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2014/2015 Cruise Season
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 私のクルーズ嫌いは単なる俗物根性に基づくものでしょうか? そう、確かにそうかもしれません。ですが、クルーズ旅行はどう考えても、確実に「リーズナブルなバケーションの過ごし方」ではないということも確かなのです。なにせ、この不思議な「特権」に、想像以上の大金をつぎ込むこともできますから…。 

 
 とはいえ、最近のクルーズが変化していることを認めなければならないのも事実です。正直に言えば、現在、私が間違いなく注目しているクルーズ旅行があります。それも1つではなのです。

 何より重要なのは船のサイズです。

 この場合、より小さな船を選ぶのがベターであり、探すべきは「冒険クルーズ」です。このようなクルーズツアーでは、ヘリコプター以外ではたどり着けないような、大自然のなかのエキゾチックな場所を訪れることができます。浅喫水船と呼ばれる船を見つけてください。ちなみに「喫水」とは、船体の一番下から水面までの垂直距離のことであり、それが浅い船のことを「浅喫水船」と言います。これは大型船では到達できない沿岸近くや河川など、より水深の浅い場所を航行できる船というわけです。 

 そんな冒険クルーズ船の1つが、客室数わずか18室の「トゥルーノース」号になります。新造の巨大クルーズ船「シンフォニー・オブ・ザ・シー」が10階建てで2759室もの客室をもつことを考えれば、いかに小さな船かがわかるかと思います。
 

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Photograph / True North  

それでは「トゥルーノース」号での旅を、動画でお楽しみください。  

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
TRUE NORTH TV - The Adventure Difference
TRUE NORTH TV - The Adventure Difference thumnail
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 この 「トゥルーノース」号では、オーストラリア西部の美しいキンバリー海岸やパプアニューギニア、ジンベイザメとのシュノーケリングが楽しめるインドネシアのチェンデラワシ湾など、世界中のディープでクールな場所を冒険することができます。

 乗客は、ゾディアック社の複合艇や船に搭載されたヘリコプターで陸に上がることができます。まさに「サンダーバード」号のようではありませんか(笑)。 

最近のクルーズは、良い方向へ変化している

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Photograph / Nomads 

   
 また、南米の向こうにある太平洋に目を向ければ、「ノーマッド・オブ・ザ・シー」号ではパタゴニアの感動的な大自然を巡ったり、フライフィッシングやヘリスキーといったアクティビティを楽しむことできます。この船は2台のヘリコプターを搭載し、2名用の船室がわずか14室とさらに小さなものです。 

 これらの船は、ますます成長する新たなクルーズ市場を牽引する存在であり、その料金も一部の人には手の届くレベルに下がってきました。近い将来には、地球上のもっともクールな海岸線の知られざる水中を進む水上ブティックホテルのような船団が登場するかもしれません。 

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Nomads of the Seas 2010
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 その船なら、私も乗っているかもしれません。が、もし遭遇しても、トム・クルーズと呼ぶのはやめてくださいね(笑)。 

 本記事の著者トム・バーバーは、これまでに数々の賞を受賞した旅行会社「Original Travel」の創業者です。

By Tom Barber on July 11, 2018
Photos by Getty Images, True North and Nomads
ESQUIRE UK 原文(English)
TRANSLATION BY Wataru Nakamura
※この翻訳は抄訳です。 
編集者:山野井 俊