2020年2月、ドイツの自動車メーカー「オペル」が、2021年中に日本市場に再参入をするという発表会が開催されました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や世界的な半導体不足などの影響を受けて、販売開始ならびにディーラーオープンは2022年上半期に延期されることに…。

 とは言え、日本市場進出への準備は着々と進んでいます。先駆けて先日(2021年8月4日)、オペルの日本語サイトがオープンしました。

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OPEL

 初期導入モデルとして、まず日本市場で発売が予定されているのはコンパクトハッチバックの「コルサ」、コンパクトSUVの「モッカ」、フラッグシップSUVの「グランドランド」という3車種とのことです。

2019 opel corsa
Axel Wierdemann
コンパクトハッチバックの「コルサ」。1982年の初代デビュー以来、約40年で累計販売台数は1400万台以上。ブランドのオリジナリティやDNAを体現する1台です。
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Yumi Yoshida
近未来感あふれるデザインの「モッカ」。オペルの新たなデザインコンセプトである、“BOLD & PURE(ボールド・アンド・ピュア)”を採用したファーストモデルとなります。
opel grandland hybrid4 2021
OPEL
フラッグシップSUVとされる「グランドランド」。OPEL VISOR(オペルバイザー)と呼ばれる、新しいオペルブランドの象徴である力強く精悍(せいかん)なフロントデザインを採用しています。

 2006年に一度日本市場から撤退したオペルですが、「オペルはドイツブランドとして高い評価を受けていること」「企業の経営状況が好調なこと」「日本の自動車市場は大きい市場であること(世界第3位の規模!)」「 日本のユーザーは製品やサービスに厳しいため、日本でビジネス展開することは将来的に見て効果が高い」ことを、日本市場への再参入する理由に挙げています。

ヨシダのオペルの記憶

 オペルが「再参入」と謳(うた)うように、以前も日本で販売されていましたが、2006年に撤退。私がオペルに持つイメージは、質実剛健なドイツ車で、しっかりがっしりとつくられている印象。

 とは言え、乗るといいクルマなのに、どこか少し華に欠ける点も否定できないと言うか、なんと言いますか…。私が特に鮮明に記憶しているのは、木村拓哉さんと常盤貴子さんが主演するドラマ「ビューティフルライフ」で、常盤さんの愛車として真っ赤な「ヴィータ」が登場したこと。それ以降、知名度が上がり、クルマも売れたとか…。それは2000年のことです。

 日本で発売されていたときは、「アストラ」や「ベクトラ」もラインナップされていましたが、日本での認知度はクルマの実力や海外での評価とは比例していないように感じられていました。もったいない! そう、海外ではなかなかの人気だったのです。

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 海外で「オペル」と言えば、私が初めてF1グランプリの取材でモナコに行ったとき(たぶん2004年ぐらい)、ニースの空港までお友だちが迎えに来てくれたときのことを思い出します、そのとき、その友人が乗っていたのがオペルでした。

 たぶん、フラッグシップモデルの「オメガ」だったと思いますが(もはや情報が古すぎて細かなことは憶えていませんが…)、空港からニースの駅の近くのホテルまで送ってもらうなど、初めての一人旅のモナコだったこともあり、とても心強かったことを覚えています。「オメガ」も乗り心地が良く、運転もしやすそうな、いいクルマだなと好印象を抱きました。

 残念ながら、私は自分ではオペル車を購入する機会には恵まれませんでした。ですが、メルセデスベンツの「Cクラススポーツクーペ」が愛車だったとき、「アベンチュリン・オレンジ」という、オレンジがかった赤のボディカラーとリアの丸みが「オペルっぽい!」と友人からよく言われていましたっけ。自分でもそう思っていたので、(勝手に)オペル車も運転しているような気分になっていたことを思い出します。

オペルは「ステランティス」傘下に

 私は2000年からカーライフエッセイストとして活動を始めたので、2006年の日本撤退までにオペル車には国内では数えるぐらいしか試乗できていません。ですが、その後は海外モーターショーに行くようになったので、そこでオペルはよく見ていました。

 中でも注目は、2012年のパリモーターショー(モンディアル・ド・ロトモビル:パリで偶数年の9月末から10月半ばに掛けて開催される大規模な国際自動車見本市)でワールドプレミアされた「アダム」です。そのとき、オペルのブースはほとんど「アダム」が占領。いろいろなボディカラー、いろいろな仕様の「アダム」が勢ぞろいで、まさにアダム祭といった状態。

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Antoine Antoniol//Getty Images
2012年のプレスデーに見かけたのが「アダム」。コチラは、斬新なカラーリングが施されたモデルでした。
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Antoine Antoniol//Getty Images
コチラはイエローの「アダム」。

 それまでのオペル車とイメージが大きく変わり、例えるなら、日産「マーチ」やルノー「トゥインゴ」のようなお洒落でポップな印象でしょうか? オペルの創業者アダム・オペルの名前をつけたモデルということで、かなりの気合いが入っていたことを覚えています(そして実際、今も記憶に強く残っている1台です)。

【「モッカ」のyoutube動画】

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Less Normal. More Mokka. This is Opel!
Less Normal. More Mokka. This is Opel! thumnail
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 もうひとつ、「オペル」が変わったことと言えば、会社です。前回、日本に参入していたときはGM傘下でしたが、その後グループPSAの傘下に。さらにその後、グループPSAがFCAグループ(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)と折半出資で合併して「ステランティス」を設立したため、現在のオペルはその多国籍自動車製造会社の傘下となっています。

 ホームページには、次のように記されています。

今後は、先進技術や機能美あふれるデザインをいち早くお届けできるよう、多彩なモデルを展開していきますので、どうぞご期待ください。また、サステナビリティを大切にするドイツブランドとして、日本でも電気自動車やハイブリッドモデルを段階的に導入していきます。

 さまざまな国の自動車文化を持つ企業の傘下となり、今後のオペルにはどんな相乗効果が生まれるのでしょうか? その動きにも今から注目しましょう。


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TATSU YUASA

カーライフ・エッセイスト
吉田由美

2月23日、岩手県生まれ。短大在学中に「ミス渋谷」、「ミス・チェッカーモータース」、「準ミス・エチュード」など、10個以上のミスコンタイトルを受賞。卒業後、本格的にモデル活動をはじめる。1998年より、モデル業とともに日産ドライビングパークで、セーフティ・ドライビング(安全運転講習)のインストラクターに。3年間務めた後、現在は「カーライフ・エッセイスト」として、著書、雑誌、ブログなどの執筆活動を行っている。