ブガッティが独自のオーダーメイド部門「シュール・ムジェール」を立ち上げたのは、2021年末のことでした。シュール・ムジェールとは、フランス語で「テーラーメイド」を意味します。時速200マイル(約322キロ)を超えるミサイルのようなハイパーカーを、クライアントの要望に極限まで応じてカスタマイズほ施すというのがこの「シュール・ムジュール」に課せられた使命です。

このプログラムの記念すべき最初の1台となったのは、赤いアクセントが施されたベビーブルーの「シロン ピュアスポーツ」でした。これは1931年のフランスGPでブガッティ「タイプ51」で見事優勝を果たしたレーシングドライバー、ルイ・シロン氏の栄誉を称えたデザインです。

そして今回、新たに「シロン ピュアスポーツ」と「シロン スーパースポーツ」、2台の「シュール・ムジュール」プログラム製のシロンがそのベールを脱ぐことに…。「緻密に設計されたハイパースポーツカーのボディパネルに反射する光を表した」というブガッティの説明通り、ハンドペイントが施されています。

image
BUGATTI
ポップで陽気な印象のペイントに仕上げられた「シロン スーパースポーツ」。
image
BUGATTI

ブガッティによって「Vagues de Lumière(ヴァーグ・ド・リュミエール)」と名づけられたペイントですが、これはフランス語で「光の波」を意味します。「シロン スーパースポーツ」そのものにとっても初の納車となりますが、ベースカラーにはカリフォルニア・ブルーが採用されています。その鮮やかなボディの上に走るのが、アランチャ・ミラ(オレンジ色)の光のラインです。

2000年代のポルシェ「911 GT3 RS」を彷彿とさせるマグネシウムホイール、そして、レザー製のインテリアも同じオレンジの色調で彩られています。蹄鉄型のグリルにはオーナーの希望によって、「38」のナンバーが記されています。ですが、こちらももちろんアランチャ・ミラです。

もう1台は、大きなリアウイングを持つ「シロン ピュアスポーツ」です。コチラはブルー・オン・ブルーの塗装が施され、より繊細な仕上がりとなっています。ブルーカーボンそのままの色調のボディの上を、明度を落としたノクターン・ブルーのラインが流れています。

image
BUGATTI
落ち着きと品のあるブルー・オン・ブルーに仕上げられた「シロン ピュアスポーツ」。
image
BUGATTI

リアウイングの両サイドのエンドプレートにはフランス国旗が描かれており、グリルには「9」のナンバーが添えられています。インテリアを覗けば、ベルーガ・ブラックとフレンチ・レーシングブルーのレザーを組み合わせた装飾が目をひきます。

この2台の塗装に費やされた時間は、それぞれ5週間ほどで全て手作業によるものです。「スーパースポーツ」のオレンジとブルーの配色を見れば、少々派手過ぎると感じる人もいるかもしれません。ですが、その塗装は見事という他ありません。「シュール・ムジュール」によって生み出される次の作品がどのようなデザインとなるのか? 期待はただ増すばかりです。

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
この翻訳は抄訳です。