日本に比べて、はるかにEVが普及しているヨーロッパ。特にEVのフロントグループを走るアウディは予約制の大型EV充電施設「アウディ・チャージングハブ」を展開し、成功を収めています。その充電ハブは今年2023年中に、日本でも展開予定とのこと。アウディのEVユーザー、さらには同じグループのつながりを生かした「プレミアムチャージングアライアンス」で使用できるフォルクスワーゲンやポルシェのEVオーナーでなくとも、気になるところかもしれません。

ヨーロッパにおけるアウディの充電ハブの成功を受けて、同じフォルクスワーゲングループ傘下の他ブランドが同様のサービスを提供するであろうことは既定路線でもありました。7月に入り、「ポルシェがドイツ西部の地方都市ビンゲン・アム・ラインに、EV充電ラウンジをオープンした」というニュースも舞い込んできました。しかも、そこはポルシェらしさが光ります。ブランドの名にふさわしく、そこはバリアフリーであり、持続可能を実践するラグジュアリー感に満ちた高級EV充電ラウンジなのです。

快適な滞在を約束するため、ラウンジエリアにはモダンなサニタリーを設け、ソフトドリンクやスナックも豊富に取りそろえているとのこと。支払いに関しては、デビットカードやクレジットカードのほか、Apple PayやGoogle Payも利用可能です。高性能WiFiネットワークも利用でき、さらには等身大の鏡の前でアプリによってワークアウトが楽しめるスマートミラーも。ドライバーはこれからの旅に備えて、体調を整えることができるのです。

交通量の多いジャンクションからわずか数分という場所にあり、営業は年中無休。ラグジュアリーで広々とした施設内での充実したサービスが注目を集めています。肝心の充電器はというと、300kWのDC高速充電器を6基、22kWのAC充電器が4基という布陣になります。

ポルシェの高級充電ステーション
Porsche
EV充電ラウンジの内装は航空会社のラウンジのようで、軽食やドリンクが用意されています。
ポルシェの高級充電ステーション
Porsche
屋根にある太陽電池から電力の一部が供給されていますが、急速充電器にはアウディの充電ハブ同様に送電網接続が必要です。

今後さらなる高速充電も視野に

ラウンジを使用するにはポルシェIDが必要となりますが、ポルシェのナンバープレートが登録済みであれば、自動ナンバープレート認証システムが作動し、車を施設内へと招き入れてくれます。仮にナンバープレートが未登録の場合であったとしても、マイポルシェアプリ(MyPorsche app)やQRコード、ポルシェチャージングカード(Porsche Charging Card)などを使えば、ステーションの利用ができる仕組みになっています。

屋上部分にはソーラーパネルによる自家発電を備え、電力の大部分は充電ポイント専用のグリッドシステムから供給されます。電力について補足すれば、イタリアの電子機器メーカー、アルピトロニック(Alpitronic)社製の300kWの充電器がステーションに設置されています。将来的にはそれを400kWにまで引き上げ、さらなる高速充電を可能にする計画とのこと。

果たして日本での展開は?

このような空港ラウンジスタイルの充電ネットワークは、EV黎明(れいめい)期から多くの自動車メーカーが採り入れてきたアイデアであり、特に目新しいものではないことも事実です。しかし、このタイプのラウンジを各地に設置することを決定したのは、ポルシェが初となります。

折しも「タイカン」は、2021年に全世界での販売台数を4万台超となり、「911」を上回る記録を叩き出しています。そうした流れとともに、ポルシェオーナーにふさわしい特別な充電スポットの必要性をリアルに感じ取ったのでしょう。すでに同コンセプトのEV充電ラウンジのヨーロッパ圏での展開を決めていて、オーストリアとスイスでもすでに準備が進められています。

そこで、果たして今後日本にも設置される日は訪れるのでしょうか?

BEV仕様のポルシェがまだ「タイカン」の1種類だけという現時点では、そこはなんとも言えないかもしれません。まずはこれから数年のうちに、ヨーロッパにおけるEV充電ラウンジの普及がどの程度進むかを注目すべきかと思います。

しかしながらポルシェジャパンでは2021年より、ポルシェのEVオーナー向けに開発された急速充電施設「ターボチャージングステーション」を各地に開設しています。そのうちのいずれかが進化する形で、ラウンジスタイルになることも考えられるでしょう。

Source / CAR AND DRIVER
Translation / Kazuki Kimura
Edit / Ryutaro Hayashi
※この翻訳は抄訳です