今回は、ブランド総合研究所が行った「市区町村『観光意欲度ランキング』2020」を見ていこう。

 このランキングは、47都道府県と国内1000の市区町村を対象に、認知度や魅力度、イメージなど全84項目からなる「地域ブランド調査2020」によるもので、今年で実施は15回目。「市区町村『観光意欲度』ランキング」は、「今後、各自治体に観光や旅行に行きたいと思いますか?」という問いに対して、「ぜひ行ってみたい」を100点、「機会があれば行ってみたい」を50点、「どちらもいえない」「あまり行きたいとは思わない」を0点として、加重平均した数値を算出した。全国の消費者3万1734人から有効回答を得た。調査期間は、2020年6月24日~7月20日。

札幌市&函館市が再び1位に
市区町村「観光意欲度」ランキング発表!

 2020年版の市区町村「観光意欲度」ランキングは、前年に引き続き札幌市、函館市が同点(56.6点)で1位となった。函館市は3年連続、札幌市は2年連続で1位になっている。

 3位は僅差で京都市(56.2点)、4位は小樽市(53.0点)となった。4位までは前年と同じ顔ぶれになったが、5位は前年11位の富良野市(49.9点)がランクインした。

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ダイヤモンド・オンライン編集部
高まる域内観光への期待
「中核的な観光地」の連携が重要

 今回の調査では、例年ならばランクインしている東京23区からはどの区もベスト50に入っていない。例えば、前年43位の新宿区は100位に、前年69位の港区は163位にまでランクダウンした。唯一ベスト100入りしたのが、前年の91位の渋谷区で95位だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大の温床となっている「夜の街」としてのイメージが強い新宿区や港区が、大きな影響を受けた結果といっていいだろう。

 その一方で、順位を上げているのが、自然豊かな場所や温泉地、歴史の感じられる観光地がある市町村だ。前年11位から5位になった富良野市、前年9位から6位になった鎌倉市、前年17位から7位の那覇市などが例として挙げられる。

yasaka pagoda in gion at sunset, kyoto, japan
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3位の京都市より。東山区にある法観寺五重塔、通称「八坂の塔」の夜景。京都市街の洛東のあちこちから見ることができる。

 こうしてコロナ禍で観光産業が厳しくなる中、盛り上げるべく提唱されているのが「域内観光」と呼ばれる、都道府県内や隣県を日帰り、または1泊程度の短い期間で巡る旅行だ。各自治体や関連団体が活性化に動いているが、今回の調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長はその内容について以下のように指摘する。

hakodate city view from mountain hakodate, winter season, hokkai
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2位の函館市より。市内南西にあり、「世界三大夜景」のひとつ言われる「函館山」からの景色。山頂へと続くロープウェイは125人乗りの大きなゴンドラであり、支柱がないつくりによって、その街並みをガラス越しにゆったりと眺めることができます。

 「自治体などを中心に地域の魅力づくりをしようと取り組んでいるが、あまり知られていない場所を連携させるような活性化策が多い。しかし、そうしたマイナーな場所を集めたところで注目を集めることは難しい。多くの人に以前から知られている『中核的』な施設や観光地をつなげるような連携こそ、ブランド構築に何より重要で、域内観光の魅力になる」

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1位の札幌市より。豊平区にあるさっぽろ羊ヶ丘展望台の風景。南東方向から札幌市街を展望でき、それを背景に腕を伸ばしたウィリアム・スミス・クラーク博士の全身像。台座に刻まれる名言、札幌農学校1期生との別れの際に発したとされる「BOYS BE AMBITIOUS」は、ポジティブな気持ちをさらに前進させるだろう。

 現在、新型コロナウイルスの感染拡大の第3波が発生している中で、域内観光を通して身近な観光地の魅力に気づくチャンスとなっている。しかし、もともと知られていないような観光地をただ羅列するだけでは、いくらコロナ禍とはいえ人々を引きつけるのは難しい。施策を行う自治体は、このことを改めて理解して検討し直す必要がありそうだ。

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