サプリメントとの付き合い方
こんな人には不要かも?

 皆さんの周りには、サプリメント好きな人はいらっしゃいますか?実は、筆者(栄養士)の夫は、「サプリ好き」です。サプリが収納されている棚は「圧巻!」の一言。

 妻である栄養士の立場なしですが、知り合う前からずっと飲んでいるので、あえて口出しはしないでおこう、とも思っています。というのも、効用の話とは別に、サプリを飲むことで安心感を得たり、生活にリズムをつけている方を多く見てきたからです。

 でも、普段、食事相談にのっている栄養士としては、サプリメントとは上手に付き合ってほしいもの。クライアントさんにとって優先順位が高いものに口を出すことはあまりありませんが、もしも「サプリメントストップ」をかけることがあるとしたら、以下の点をクリアできていないときです。

栄養素だけでなく
「食べる」行為そのものが大切


attractive female doctor presenting about healthy eating using food pyramid   stock photo
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A:食事をちゃんと食べた上でサプリメントも飲んでいる
B:健康診断で何も問題がない

 Aに関していえば、サプリメントありきの食生活になっていないかが判断基準。サプリメントに過剰な安心感を得て、依存しきって、食事をおざなりにしてしまうのが心配です。「食事で栄養がとれないからサプリメントをとるんだ」という意見は当然あると思います。でも、「サプリさえとっていれば大丈夫」と思うのと「足りない分をサプリで補おう」と思う方の食生活は大きく違います。

 また、「食事」「食べる」という行為には、サプリメントでは得られない次のようなメリットがあります。

  • 他の栄養素も期待できる!
  • 重量感があってお腹が満たされるので間食が減る!

 加えて、食事にたどりつくまでのプロセスにも注目しましょう。たとえば、「風邪にはビタミンC」という話をきいてただサプリメントをとるのと、食卓の上をちゃんと片付けて、ビタミンC豊富な季節の果物をお気に入りのお皿にのせるのとでは、気持ちが少し違うと思うのです。心身の健康には、食事によって得られる心の栄養も欠かせません。もちろん、何もここまでしなくても良いのですが、サプリメントと食事では得られるものが異なることを認識していただけるといいな、と思います。

健康問題はサプリに頼らず
大元の食生活から改善する

 さて、Bの「健康診断で何も問題がない」点がクリアされていないと「サプリメントストップ」を出したいことについて。

 これも「問題があって気になるからサプリメントに手を出すんだ」というご意見もあるかもしれません。というより、そのケースの方が多いくらいかもしれません。でも、その問題を引き起こした、大元の食生活上の問題に目を向けた方が良いのも事実です。

low carb food pyramid
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 たとえば、「脂肪をカット」など魅力的なキャッチコピーのサプリがあるとします。でも、このサプリに頼る前に、そもそも脂肪を摂りすぎないように気をつけなくてはいけませんよね。

「それができないからサプリ買ってるんだよ」というご意見も当然ですが、「食べる」ことにお金をかけ「それを取り消す」ことにお金をかけるって、なんだか不毛な投資ではないですか?同じお金をかけるのならその分、少量でも満足する良いお肉を食べる!という投資だって良いかもしれません。

 根本的原因を改善していかないと、ずっと追加投資をし続けることになりかねません。

サプリの過剰摂取は体に負担
定期的に断捨離を

 また、現実的な投資、コスパの面から考えても、摂取しているサプリメントは時折、整理しましょう。またしても私事で恐縮ですが、私が夫のサプリメントに唯一口を出すのも、「○○と△△って同じじゃない?」と時折整理を促すことです。

close up of a young man taking nutritional supplement pills
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 気になった栄養素やおすすめされたものなど、どんどんサプリメントの種類を増やしていくと、重複するものも出てくるはず。そうなると、特定の栄養素の過剰症に注意しなければなりません。不足だけでなく、摂りすぎだって体にはよくないのです。サプリメントにも、断捨離は必要です。

 断捨離するには、「なんでこれを摂ろうと思ったんだっけ?」ということを自分に問いかけてみてください。思い出せないようなら次回の購入はなし。思い出して、「今、その問題はないな」と思ったらそれももちろん次回の購入はなし。明確に理由が思い出せて、そのサプリが役に立っているように感じたら継続というように、自分なりの目安を決めてみてください。

サプリで感じた「良い変化」は
日々の食事にも反映させよう

 ただ、こうしてサプリメントを摂取して、何かしら良い変化があったとしたならば「このサプリメントが良い!」と終わらせるのではなく「この栄養素が不足しているから、足すと良いらしい」という意識をもって、食事からもとるようにしましょう。

 方法は簡単で、「気になる栄養素名」、スペース、「食材」でネット検索するだけ。その中から、自分が「食べやすい食材」をいくつかピックアップして、日頃から意識してみてください。その時に注意したいのは、「食べる量」です。

grapefruit and medicine
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 たとえば、しそのビタミンCの含有量が多かったとしても、実際に1食で口にできるしそは1,2枚…つまり、1、2gくらい。100gあたりの含有量で比較されている事が多いので、しそはビタミンCが多いけれど、実食したときに摂取が期待できる量はそう多くありません。「食べやすい食材」「食べる量」はセットで考えると良いでしょう。

 だからといって、一度に多くの量を摂取できるものを食べてください、という話ではありません。「摂っているつもりだったのに不足していた」ということを避けるために、あわせて意識してくださいね。

 2020年は働き方の変化にともない、食生活も変わった方が少なくないはず。これまで自炊ができずにサプリを摂っていた方の中にも、食生活が変わって今は不要になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。サプリメントは用量を守ってコンスタントにとる習慣を貫いた方が良いでしょう。でも、だからといって、今後の人生ずっと続けるべき習慣にしなくても良いのかもしれません。

「野菜は高い」という言われ方もしますが、サプリメントだって決して安くはありません。逆に、野菜主体の菜食生活も、タンパク質や脂質が不足しやすく、体力が落ちたり、免疫力も弱まります。

 つまり、特定のものが免疫力をあげるということは、サプリメントでも食品でもありません。栄養のバランスを欠き、栄養不良の状態になるのは避けましょう。健康が気になる昨今ですが、応急処置のための支出を増やすのではなく、生活全体が豊かになるよう、食事全般への投資を考えられたら良いですね。

ダイヤモンド・オンライン