通勤や外回りによる毎日の運動がなく家で座って過ごしていると、1日の消費カロリーが少ないため太る原因に。とはいえ、外で飲んでストレス解消ができない今だからこそ、「おうち晩酌」が心のオアシスという方も多いだろう。今回はコンビニで買えるダイエットに最適なおつまみや、おうちでの上手な晩酌の方法を管理栄養士である安達春香さんに伺った。
コロナ太りを解消したい。しかし、晩酌は続けたい。そんなわがままを両立する秘訣はあるのだろうか。今回は管理栄養士であり食品会社での研究開発経験もある安達春香さんにインタビューを行った。
「お酒を飲んでいる間の食べ物は全て丸ごと吸収されるから、太りやすくなる」。そんな話を飲み会の席などで耳にしたことはないだろうか。であれば、晩酌はダイエットの大敵となるはずだ。まずは晩酌で太るメカニズムを聞いてみた。
「お酒を飲むと、肝臓を含む体全体がアルコールの分解に忙しくなります。そのため、一緒に食べたおつまみのエネルギーも代謝されずに残ってしまい、脂肪へ蓄えられやすくなってしまいます。
さらに、アルコールの分解にエネルギーを使用することから急激に血糖値が下がるため、体は炭水化物を欲するようになります。アルコールには血中濃度が高くなると食欲が増す効果もあるため、満腹でもさらに食べたくなってしまうのです」
しかし、そうはいっても毎日のささやかなオアシスである晩酌をすぐさま“自粛”することは難しい。晩酌を続けながらもダイエットするための手がかりはないのだろうか。
「アルコールの分解を助けたり、緩やかにしたりするように心がけるのがいいでしょう。まずは、お酒と水を交互に同じ量飲むこと。アルコールの分解にはたくさんの水が必要ですし、アルコール自体に利尿作用もあるので水分不足になりがちです。二日酔いの症状は脱水症状と似ているともいわれているんですよ。
割り物をお茶や水などの無糖のものにするのもいいですね。さらに、お湯割りにすれば自然とゆっくり飲めるようになって、飲み過ぎを防ぐことができます」
お酒を飲んだ後に同量の水を飲むことなら、家でも簡単に始めることができそうだ。取り入れやすいところから段階的に始めていくのがいいだろう。
「運動しないでお酒を飲むと、健康被害のリスクが上がるといわれています。週150分(30分×週5)のウオーキング程度の運動でアルコールのダメージを相殺できるので、意識的に体を動かすのもおすすめです」
週5回30分のウオーキングであれば、帰宅時に一駅前で降りるなど、工夫してみることもできそうだ。そもそもダイエットには運動が必要不可欠。自粛生活で体もなまり続けるばかりなので、今後の健康のためにも習慣化したいところである。
コンビニのラインナップを眺めてみると、最近は「低糖質高タンパク」など体に気を使った総菜も多い。それらを選ぶことでダイエットすることは可能なのだろうか。
「結論から言うと、可能です。脂質や糖質を控え、野菜やタンパク質中心のおつまみをバランス良く選ぶのがいいでしょう。ビタミンやミネラルを多く含む野菜や海藻、キノコ類や良質なタンパク質である卵、肉、魚、大豆を使った総菜がおすすめです」
特に安達さんのおすすめは「枝豆」と「青魚」だ。
「枝豆は良質なタンパク質を含みますし、糖質を分解するビタミンB1と脂質の代謝に使われるビタミンB2が豊富。さらにカリウムが入っているので、おつまみでたくさん取りがちな塩分を効率よく排出してくれて、次の日もむくみの予防につながります。サバやサンマなどの青魚もエネルギーの代謝に欠かせないビタミンB群が豊富です。ダイエットにおすすめな低糖質高タンパクの食品ですし、脂肪燃焼を助けてくれる良質な油が入っています。肝臓の働きをよくするタウリンが入っているのもいいですね」
枝豆がお通しの定番として長く親しまれているのにも、理由があるというわけだ。
「糖質オフ」「脂質カット」「カロリーゼロ」……。いかにもダイエットに効きそうな文句が並ぶ店内で「結局どれを選べばいいの?」と途方に暮れた経験はないだろうか。素人にも分かりやすい指標を聞いてみた。
「最近はやりの『糖質オフ』ですが、専門家の中でも議論されていて明確な答えが出ていないのが実情です。そのため、私は『カロリー』を見て選ぶのをおすすめします。1日に必要なエネルギー量の目安は、女性だと1400~2000kcal(1食460~660kcal)、男性が2200±200kcal(1食730kcal前後)といわれています。お酒のカロリーを踏まえ、おつまみは600kcal以下になるように選ぶといいでしょう」
短期的で分かりやすい効果が見られる糖質制限だが、長期的なダイエットへの効果は現在賛否が別れるところ。まずは分かりやすい「カロリー」を見て、「600kcal以内」に収められるようチョイスしよう。
反対に「絶対に食べてはいけない」というNGおつまみはあるのだろうか。
「ポテトチップスなどのスナック菓子は糖質と脂質の過剰摂取になりがちです。塩分も高いので、どうしても食べたい場合は量を少なめにして、ピリ辛きゅうりなどの野菜を一緒に取るなどの工夫が必要です。また、〆(しめ)のスイーツはカロリーが高くなりがちなので避けたほうがいいでしょう。基本的に総菜系であれば食べる量にさえ気を付ければNGはありません。血糖値を上げるご飯や麺類、いも類は1品までに抑え、揚げ物ばかりにならないようにトータルバランスに気を配ることが大切です」
ダイエットでは「揚げ物はNG」というイメージが強いが、安達さんによると「複数の中の1品」であればOKとのこと。我慢ばかりで挫折するのに比べれば、上手に取り入れて長く続けることが重要のようだ。
体はアルコール分解に多くのエネルギーを消費することで血糖値が下がり、炭水化物を欲するようになってしまう。私たちが〆にラーメンやらお茶漬けやらを欲するのは、あらがいようもない現象というわけだ。どうしても〆がほしいとき、どのようなものをチョイスするべきなのだろうか。
「おみそ汁やスープなどで済ませるのがベストです。体を温める作用もありますし、満足感もあります。お米を食べたいときはかみ応えもあって満腹感の出る焼きおにぎりがいいでしょう。さらに、最近は糖質オフのラーメンなども豊富にありますよね。他のおつまみとのカロリーを計算しつつ、たまには糖質オフのラーメンや春雨ヌードルを食べるのもいいですよ」
雑炊やお茶漬けだとサラサラ食べられるため満腹感が減ってしまい、さらにもう一杯、もう一品…と進んでしまう恐れがある。〆を米や麺などの炭水化物にする場合は、かみ応えや味付けに満足感のあるものを少量つまむのがいいだろう。
最近ではコンビニでも健康面に気を使ったおつまみが増えている。前述のように、カロリーや栄養素に気を付けながら選ぶことで晩酌とダイエットの両立を続ける助けとなるはずだ。
今回はコンビニで手軽に購入できるおすすめのおつまみを安達さんに聞いた。「1日30分」のウオーキングをしながら、コンビニに立ち寄って今夜のお供を選ぶといいだろう。
イカの一夜干し
「イカに含まれるタウリンはコレステロール値を下げる働きと肝機能向上の効果があり、お酒との相性が抜群です。普段の食事で不足しがちなミネラルも多く入っているので、糖質や脂質の代謝もサポート。低カロリー高タンパク、かみ応えもあって満腹感も得られるのでダイエットにおすすめのおつまみです」
枝豆
「アルコールの分解を促し、肝臓の働きを助けてくれるメチオニンという成分が野菜の中でもダントツなのが枝豆。糖質の代謝に必要なビタミンB1と脂質の代謝に欠かせないビタミンB2が豊富です。カリウムもむくみ防止になるので、晩酌に必要な栄養が全て入ったおつまみと言ってもいいでしょう」
煮卵
「卵に含まれるコリンは脂質の代謝をサポートする働きがあり、アルコールの飲み過ぎで起こる脂肪肝の予防が期待されています。卵は完全栄養食ともいわれていて、良質なタンパク質も豊富なので、ダイエットにおすすめですよ」
もずく酢
「もずくやオクラなどのねばねば系の食べ物には胃の粘膜に膜を張ってアルコールの吸収を穏やかにする水溶性食物繊維が豊富に含まれています。特にもずくの水溶性食物繊維であるフコイダンは余分な塩分やコレステロールを排出して血圧や血糖値の上昇を抑える効果があります。さらにお酢にもエネルギー代謝を上げ、糖質の吸収を緩やかにする働きがあるので、組み合わせの相性が良いおつまみです」
熟成キムチ
「アルコールを分解するときに生まれるアセトアルデヒド。これをさらに分解するときにキムチに含まれるナイアシンの作用が働くため、二日酔いの予防になります。乳酸菌と食物繊維も豊富で腸内環境を整える効果も。塩分が少々多いのが気になりますが、エビなどのうま味成分が入っているので、単に漬物をつまみにするよりも塩分を抑えられますよ」
ミックスナッツ
「ミックスナッツはどんなお酒にも合いますし、ビタミン、ミネラルが豊富なスーパーフードです。若返りのビタミンとよばれるビタミンEが豊富で強い抗酸化作用もあります。良い油や食物繊維が含まれているのでアルコールの吸収を遅らせる効果があり、二日酔いの予防になりますよ。悪玉コレステロールを減らす働きも注目です。
できれば素焼きのものを選ぶのがいいですが、おつまみはスナック派!という方はまず手に取りやすい塩分ありのミックスナッツから始めてみましょう」
サバの塩焼き
「青魚に含まれるDHA、EPAには脂肪燃焼効果があります。特にサバにはDHA、EPAが多いのでダイエットにもぴったりです。良質なタンパク質で糖質、脂質の消化を促すビタミンBも豊富。肝臓の働きを助けるタウリンも入っています。まさにお酒を飲みながらダイエットするために必要な栄養を補うおつまみといえるでしょう」
何かとストレスの多い自粛生活。晩酌しながらダイエットは難しいと思いがちだが、カロリーや栄養面を気にしながら適切なおつまみを選べば両立も不可能ではない。今回話を伺った安達さんいわく「まず続けることが大事」。
シビアな制限をしてリバウンドを繰り返すよりも、自分のできる範囲で長く楽しく続けるのが肝である。栄養バランスとカロリーにさえ気を付ければ、〆だって我慢しなくていいのだ(飲み過ぎにはくれぐれもご注意を)。
このご時世だからこそ、上手におつまみを選んで晩酌をたしなみつつ、コロナ太りに打ち勝とう。
(監修/管理栄養士 安達春香氏)
安達春香/管理栄養士。大阪府出身。大阪国際大学短期大学部を卒業後、栄養士免許を取得。3年間栄養士として実務経験を積んだ後、管理栄養士免許を取得。食品会社で研究開発などに携わり、現在はウェブライターに。モットーは「おいしいものは我慢しない」。