人気タレントの発言で
「Yakult1000」がブームに

今年上半期のヒット商品といえば、ヤクルト本社が製造・販売する「Yakult1000」は外せないだろう。同商品は、今年4月にタレントのマツコ・デラックス氏が「Yakult1000を飲み始めてから眠りが良くなった」とテレビで話したのを機に、ブームに火がついたといわれている。その情報が口コミで広まり、たちまち売り切れが続出するほどの人気を博したのだ。

マツコ・デラックス氏も言うように、「Yakult1000」は「睡眠の質向上」機能を持つ飲料である。こうした効果が期待できる商品が品薄になるほど売れるというのは、「睡眠の質が悪い」と感じている人が多い証拠であろう。

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コンビニエンスストアの棚では、未だに売り切れ状態となっている確率は高い。

「当社が行ったアンケートのデータによると、回答者のうち8割ほどの方は何らかの睡眠に関するお悩みを抱えていることが分かりました。その結果を受け、睡眠の質向上に着目した商品を開発しようと考えたのです」

そう話すのは、カネカで「わたしのチカラ Q10ヨーグルト」という製品を開発した、販促企画チームの天川隼人氏。同商品は「Yakult1000」と同様、睡眠の質を上げる手助けをしてくれるヨーグルトだ。今年8月に関東エリアのファミリーマートで先行販売を開始すると、直後から予想を大きく上回る売り上げとなり、前倒しで販売エリアの拡大が進められたという。

「一般的に、(1)夜中に目が覚める、(2)寝付きが悪い、(3)起きた瞬間から疲労感がある、という3点が、『睡眠の質が悪い状態』と呼ばれています。『わたしのチカラ Q10ヨーグルト』を食べることで、これらの状態を改善し睡眠の質を上げる『還元型コエンザイムQ10』を摂取できるのです」(天川氏)

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化学メーカー「カネカ」 機能性ヨーグルト販売へ(2021年1月18日)
化学メーカー「カネカ」 機能性ヨーグルト販売へ(2021年1月18日) thumnail
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さらにカネカは、健康総合企業のタニタが手掛ける「タニタカフェ」に声をかけた。東京・日本橋にあるタニタカフェコレド室町店では、2022年9月2日から1カ月間、「わたしのチカラ Q10ヨーグルト」を使ったメニューが販売された。タニタカフェの商品企画担当者である島田晴夫氏は「『わたしのチカラ Q10ヨーグルト』を使用するだけでなく、そのほかにも、疲労回復や睡眠の質向上に役立つ食材を選びました」と、開発の裏側を教えてくれた。

「疲労回復に役立つといわれるバナナやヨーグルト、味噌などの大豆製品に含まれるトリプトファンやビタミンB1を多く含む食材を使用し、より質の高い睡眠が取れるようなメニューを考案しました」(島田氏)

睡眠についての悩みを抱えている人は多いが、薬で対応するのには抵抗がある人も多いそうだ。まずは普段の生活でも取り組みやすい食事を通して、睡眠の質の改善に興味を持つのも手であろう。

「至福の睡眠ヨガ」で
レッスン中に寝る人も

食事と並び、普段の生活で「睡眠の質」を左右する要素が運動だ。全国に450店舗以上のスタジオを開設するホットヨガスタジオLAVAでは、ヨガのポーズと呼吸法により、睡眠に理想的な心身状態へと導く「至福の睡眠ヨガ」というプログラムを、全国200近い店舗で提供している。LAVAのプログラム開発トレーナーの植木清佳氏に、プログラムの内容を聞いた。

「多くのヨガレッスンでは、ゆったりとした動きからスタートし、少しずつ運動量を上げ、中盤にアクティブなポーズが入り、最後はクールダウンで終わるという構成となることがよくあります。しかし『至福の睡眠ヨガ』は前半に運動量の高いポーズを行い、そのあとは運動量を徐々に落としていくという特徴的な構成になっています」(植木氏)

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「至福の睡眠ヨガ」はコロナ禍の21年12月、LAVAのオンラインサービス「UCHIYOGA+」でスタートした。

「元々“国民課題”ともいわれている日本人の睡眠の質の低さをヨガで解決できないか、という想いがありました。加えて、体験レッスン受講者の方とのカウンセリングの中で、『睡眠の質を改善したい』というお声をいただくこともあったのです。眠りのためのヨガプログラムはニーズが高く、生活の質を高めるためにも大切だと考え、最先端の睡眠研究を行っているブレインスリープ社と共同で、睡眠に特化したヨガプログラムを開発しました」(植木氏)

予想通り「至福の睡眠ヨガ」の反響はかなり大きく、導入当初は同時間帯の他のレッスンに比べ、予約者が約2倍に達したという。このニーズの高さを受け、今年3月には、実店舗でも同プログラムの提供を始めた。

「レッスンを担当するインストラクターによれば、レッスン中に早くも眠気を感じたり、レッスン最後には寝落ちしてしまったりする人も多いそうです」(植木氏)

LAVAでは同プログラムによる「睡眠の質が高い状態」を、(1)スムーズに入眠できる、(2)中途覚醒をしない、と定義している。

「これらの状態に導くために重視しているのが姿勢と呼吸です。日中頑張った体をほぐしてリラックスできる姿勢へと導き、体の緊張がほぐれて姿勢が整うことで深い呼吸が行えるようになります。眠りのためのレッスンなので、通常のレッスンではあまり見かけない動きや呼吸法も多いです」(植木氏)

オリジナル寝具と
遮光空間で安眠へ導く

体は良質な睡眠を得るのに最適な状態に持っていけたとしても、“睡眠環境”が悪ければ意味がない。寝具を含む寝室全体を寝心地の良い空間にしなければ「睡眠の質」は上げられないのだ。

1984年の1号店開業以来、「安全・安心・安眠」をブランドコンセプトにホテル運営を続ける「アパホテル」は、現在、睡眠の質向上にアプローチした客室づくりに注力している。アパホテル〈浅草 蔵前駅前〉で支配人を務める太田葉月氏は、こだわりのオリジナル寝具についてこう話す。

「オリジナルベッドの『Cloud fit』は『雲の上のような寝心地』をスローガンに、体圧を感知してサポートバランスを調整する機能を持たせ、体の凹凸にフィットして包み込まれるような感覚が味わえるマットレスに仕上げました。横たわると、体が寝に入りやすい状態になるのです。こちらはお客様から『購入したい』というお声を頂戴するほど好評をいただいております」(太田氏)

続けて、もう一つのアパホテル自慢の寝具が「枕」だという。

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「今年9月7日に開業した当ホテルから、1部屋につき2種類の枕を常備しており、順次全店で導入予定です。一つは、3Dメッシュ構造で首のサポートに優れた『Pride Fit』。もう一つが、好みや体調に合わせて、高いか低いか、硬いか柔らかいかを選べる4WAY枕の『Adjust Fit』です」

枕は、寝心地を大きく左右する。部屋にいろいろなタイプの枕が置いてあれば、旅先や出張先でも自分好みのものを見つけやすいだろう。

「寝具以外に力を入れているのが、客室内の『光』です。睡眠中に光を感じるとメラトニンの分泌が抑制されてしまい、良質な睡眠を得づらくなるといわれています。そのため、寝るときは室内を可能な限り暗くできるよう、カーテンは完全遮光のカーテンにしました。また、今年の7月1日に開業したアパホテル〈浅草 新御徒町駅前〉から、『おやすみスイッチ』を導入しています」

「おやすみスイッチ」とは、これまで個々に分かれていた客室内のあらゆる照明をヘッドボードのボタン一つで一括消灯できるシステムだ。これにより、入り口、デスクライト、客室、枕元……と一つひとつ消していかずとも、ワンタッチで部屋を真っ暗にできるという。

コロナ禍の今、生活スタイルの変化やストレスが原因で、元々感じていた睡眠の不調がより深刻化している人は少なくないはずだ。今後もさまざまな企業から、睡眠の質向上にまつわるサービスや商品が打ち出されていくことだろう。

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