私が英国の写真家デイビット・ヤーロー氏を、「少し深く知ることができたかなぁ」と思ったのは2014年のころでした。

 それ以前も、彼の存在を知ってはいたものの、手の届かないステージ(ヤグラ?)上の巨匠だ…と思いながら写真を見つめていました。そして2011年に写真集『Nowhere』、2013年には『Encounter』を購入。その美しくも凛々しい力強さを有する大自然の写真を初めて手にしたときの感触は、今でも鮮明に覚えています。

 そうして2014年になります。その年にヤーロー氏は、かの女優エリザベス・ハーレーとキスを交わすという、少々スキャンダルな写真で世間をにわかに騒がせました。そこで筆者である私は「目が覚める」と言いますか、妙な親近感をヤーロー氏に覚えることになるわけです…。

 自然との密なるコミュニケーションを交わす聖人は、人との密接なコミュニケーションも大切にする達人であることを知ったわけなのです(笑)。そんな彼の奥行きに、さらなる深みが増すも、それは私側の方向へと広がってきたわけです(勝手な筆者の思いこみでもあります)。

David Yarrow Photography: Americas Africa Antarctica Arctic Asia Europe

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 そんなヤーロー氏がこのたび、2019年8月ごろより多発化し、2020年2月においてもなおも継続中のオーストラリア森林火災において、これによって窮地に立たされた野生生物たちを救うためキャンペーン#KoalaComebackを開始しました。

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 彼のこのキャンペーンは、野生動物のリハビリテーションと生息地の保護・回復に取り組んでいる地元組織WildArkEarth Allianceを支援し、200万ドルの基金調達を目標としています。Earth Allianceはレオナルド・ディカプリオが共同議長を務め、地球上に存在する生命に脅威となるものに対処すべく立ち上げられた組織になります。

 このキャンペーンにため、ヤーロー氏はオーストラリア森林火災の直近の壊滅的な状況を写真に収め、多大なる救済の必要性を人々の目から強烈に訴えかけています。そして、多くの人々からの寄付を心待ちにしています。

 またこのキャンペーンは、俳優のクリス・ヘムワーズやカーラ・デルヴィーニュ、シンディ・クロフォードなど、多くのセレブからの支持も得ています。

 「オーストラリアで私が実際に目の当りにした500匹の亡くなった動物たちは、永遠に私とともにあるでしょう」と、ヤーロー氏は語ります。さらに、 「このキャンペーンは、『資金』という名の『武器』を収集するための呼びかけです。そして私たちは幸いにも、情熱的な環境保護論者という優秀な軍隊に恵まれています」とのこと。

 またさらに、彼はこう続けました。

 「私が見つけたある(私たちが『サバイバー』と呼んでいた、あの)コアラは、そのとき木の根元あたりでまさに唖然とした表情だったのです。このカットは、本当に深い悲しみに満ちた思いが表れている一枚と言っていいでしょう。こうした写真すべてを皆さんに観ていただき、「何かアクションを起こさなければ…」と思っていたただくことが『私が今できること』であり、『しなくてはいけないこと』と考え、実施にいたりました。このことが動物たちの救済資金集めの手助けになれば幸いです」とヤーロー氏。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
Car full of koalas rescued from Australia bushfires
Car full of koalas rescued from Australia bushfires thumnail
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 このキャンペーン#KoalaComebackで、1000ドル以上の寄付を行った寄付者には「サバイバー」の署名入りのポートレート写真が自宅に届けられます。また、10ドルから100ドルの寄付を行った方には、ダウンロード可能なファイルが送られるそうです。

 ヤーロー氏の代表的なモノクロプリントは、通常では50万ドル以上で販売されていることを考慮すれば、これは破格と言えるでしょう…。

 2019年9月にこの森林火災が始まり、2020年1月に至るまでの時点で計32人が死亡し、2000棟以上の建造物が破壊。さらに一説には、10億を超える動物たちが命を落としたと推定されています。

 また、この火災で焼失した面積は1070万ヘクタール(オーストラリアの面積は7億5947万ヘクタール)にも及ぶとのこと。つまりは、北海道と四国を足した面積(韓国の国土面積に相当し、日本の国土面積の約4分の1以上)に匹敵するほどの森林が、2020年1月までに消失しているということになります。

 2019年に起きた世界の大規模な火災と比べてみても…。カリフォルニア山火事とでは256倍(2019年11月に約4万ヘクタール消失)、アマゾン森林火災の1.5倍(2019年1月~11月間に約707万ヘクタール消失)と、その焼失規模の大きさは凄まじいのひと言です。

 「この事態を観て、我々は黙って見過ごすだけでいいのか?」、ヤーン氏はそう私たちに語りかけてきます。自然との密なるコミュニケーションを交わすのと同時に、人と人とも互いに密接なコミュニケーションを交わしていくことの大切さを、ここで再び考えるべきではないでしょうか。今こそ、「地球全体」という単位で物事を考え、行動すべきときなのだと…。

 いささか、増上慢な態度だったかもしれませんが、お許しください。

The #KoalaComeback Campaign