• 2019年9月から続いているオーストラリアの森林火災で2020年1月9日までの発表によれば、少なくとも29人が死亡し、数千棟を超える建造物が焼失。約600万ヘクタール(東京ドーム128万3285個分、東京都の面積の28.5倍、日本全部の面積となると、0.16倍ほど)が炎に包まれました。そして、なおも拡大中です。
  • 数えきれないほどの(絶滅危惧種を含む)動物たちが命を落とし、残された動物たちは生き延びる術を必死で探しています。
  • 焼け野原にニンジンとサツマイモを投げ入れ、生息数が激減しているオグロイワワラビーを始めとした動物たちを救うための取り組みが進行中です。

 オーストラリアで猛威を振るう森林火災は、自然破壊に大きな爪痕を残しています。火事と戦う2人のボランティア消防士を含む29人が死亡し、数千棟を超える建造物が焼失したと、2020年1月11日時点で伝えられています。

 この大きな災害を現時点で数値化することは、もはや困難となっています。そんな中、ある専門家は「この山火事で10億匹以上の動物が命を落とした」と示唆している人もいます。その上、さらに生き残った動物たちにも辛い現実が待ち構えているのです…。それは、そんな動物たちの食糧も同様に焼け焦げており、しかも水も灰で汚染されているわけです…。


ニンジンとサツマイモの食糧補給

 「荒廃した中で、生き残った命を少しでも救おう」と、2020年1月11日にある取り組みが行われました。

 ニューサウスウェールズ州のエネルギーと環境大臣を務めるマット・キーン氏は、この取り組みを「ロックワラビー作戦」と呼び、ニューサウスウェールズ州のオグロイワワラビーが生息していると思われる地域にニンジンやサツマイモを中心とした約1800キロもの食糧を飛行機より投下したことをTwitterで報告しています。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 この取り組みに関して、キーン氏はこう述べています。

 「この食糧補給の取り組みは、オグロイワワラビーなどの絶滅危惧種の動物の生存と回復を促進するために展開した、重要な作戦です」「ワラビーは通常、こういった自然災害を生き延びるのに長けていますが、このような大規模な火災により、生息地周辺の植生がすべて焼け払ってしまい、限られた自然の食糧では生存が難しいと懸念したのです」

 オグロイワワラビーは、カンガルーやコアラのような有袋類の一種で、オーストラリア奥地にある岩だらけの露頭に生息しています。小さな身体で飛び跳ねる彼らの主食は、在来草・果物・根菜類などになります。

 この作戦で投下されたニンジンを、あるワラビーが食す瞬間をキーン氏は捉えることができました。

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 実に様々な動物種が生息するオーストラリアでは、国の貴重な種を救うために多くの救助活動が進行中です。政府や団体だけでなく個人での活動も多く、火災に見舞われた地域のコアラ、カンガルー他の動物たちを救助し、回復させるために危険を顧みず災害地に向かう人々も増えているようです。


困難な避難と生存後の試練

オーストラリアの森林火災で生き残った動物
Getty Images

 突風により炎はすぐに燃え広がり、動物たちには逃げる道がほとんどありませんでした。一見、生存率が高いと思われる鳥でさえ、濃い煙と強風に圧倒され、多くの命が絶たれています。

 逃げ延びた動物にも、何カ月も生き残るためには様々な試練が立ちはだかります。それは…食糧が見つけられず、猫のような日和見的で侵襲的な捕食者からの脅威に耐えなければならないのです。その上、灰で汚染された水によって、生態系の回復はより困難な状況にもあるのです。

 オーストラリアのアデレード沖にある野生動物保護区であるカンガルー島では、近年、保全の成功例として賞賛されていました。光沢のある黒いオウムやダンナートなどの肉食性有袋類は、絶滅危惧種リストから外されるほど回復していたのです。

 しかし現在は、その島の1/3が炎に包まれているのです…。

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 この島のコアラに関しては、特に悲惨な状況に直面しています。カンガルー島のコアラはクラミジアの感染のない、オーストラリアでも数少ない場所の一つなのです。有袋類は伝染性の細菌感染に特に敏感で、感染した場合には失明や不妊、最悪の場合死に至る場合もあります。

 そのためカンガルー島の動物群は、本土に連れて治療することができず、炭化した島でしかケアすることができません。現在、当局は島のコアラ人口の半分以上が失われたと推定しています。

 しかし、そればかりがオーストラリアで最も象徴的な生き物たちではありません。専門家の間では、この国で最も小さな住民である蝶やクモ類、またその他の昆虫類の喪失にも大きな悲しみの声があがっているのです。

 なぜなら…アデレードにある南オーストラリア博物館の生物学者マイク・リー氏は、「動物バイオマス(一定の空間にある生物)の大半を占める無脊椎動物は、動物種の95%以上を占めます」と「サイエンスニュース」紙に語っているのです。つまり、ニュースとなっているのは、ほとんどが脊椎動物への被害となっています。ですが、これを動物バイオマスで割り出せば5%に属する動物たちとなります。

Richmond birdwing butterfly
Auscape//Getty Images

 つまりは現状、ニュースになっている動物たちの被害数の95÷5=19倍もの数で、無脊椎動物も被害がもたらされていることが推測できるわけです…。したがって、その損失は数兆に達する可能性もあるというわけです。

 そんなリー氏は特に、オーストラリアだけにしか生息していない美しい輝きを放つ蝶「リッチモンドトリバネチョウ(Ornithoptera richmondia)」や、宝石のように小さく艶やかな孔雀グモ(peacock spiders)への多大なる被害を恐れています。

 このように地球上で他に類を見ないほど、無数の動物種が生息することで知られているこの国で、この森林火災はなおも続いているのです。今後は全世界へ、壊滅的な影響を与えることも予想されています…。


 この森林火災の危機を目前に、多くの人が金銭的な援助を申し出ています。オーストラリア火災の募金を募っているのは、オーストラリア赤十字社やオーストラリア農家の団体、売り上げの100%を募金に使いたいとしているショップなどがあります。

 最後に、いくつかの寄付先をご紹介します。

オーストラリア赤十字社

ポートマッコーリーコアラ病院

農家支援団体「Buy aBALE」

 また、ファッションブランド「バレンシアガ」より、公式サイト限定で復興支援アイテムが発売されています。収益の100%が「ケリング」グループと「バレンシアガ」のサステナビリティ専門家により選定された現地の保護団体へと寄付されます。他にも様々なファッションブランドがこの緊急事態を深刻に受けとめ、続々と支援を表明しています。

Source / POPULAR MECHANICS