『エスクァイア』US版のクリエイティブ・ディレクターであるニック・サリバンが、お届けするコラム「Dialed In」へようこそ！ 時計業界で起きているさまざまな出来事や最重要ニュースをお届けしています。
時計業界におけるコラボの流行と危うさ
ミッキーマウスが誕生した5年後の1933年に、カタログ通信販売を手掛ける「インガーソル・ウォーターベリー」社のミッキーマウス腕時計が登場して以来、時計ブランドにとって「子どもたちに人気のキャラクターとのコラボレーションは、手堅い定番商品になっている」と私（筆者サリバン）は感じています。
このコラボの契約によって「インガーソル・ウォーターベリー」社は倒産の危機を脱し、同時にディズニーとその若きスターを後押して、まだそれほど有名ではなかったミッキーの名を広く世に知らしめることになりました。
現代においては、このようなコラボ企画は莫大な利益を生み出す可能性がありますが、リスクがないわけではありません。認知度の高いアイコン的なキャラクターを使うことは――よほど上手にやらない限り――あざとい（あるいは単に安易なだけの）マーケティング戦略と見られてしまう恐れがあります。また、うるさがたも少なくない腕時計マニアの間で信頼性を確保するのは、決して容易なことではありません。
大人の余裕と
遊び心が効いた
楽しい腕時計「プロパイロットXカーミットエディション」
そのような状況下、（1904年ヘルシュタインにて創業された）スイスの腕時計ブランドであるオリス（Oris）がDisney＋で配信されているマペット作家ジム・ヘンソン原案による『The Muppet Show/マペット・ショー』に登場するマペットとコラボレーションしたことに関し驚く必要はないでしょう。
スイス・ジュネーブで開催された時計業界の新作見本市「Watches & Wonders 2023」（2023年3月27日～同年4月2日まで開催）に出品された中でも、“最もキュートな腕時計”という称号を非公式で獲得しました（つまり、少なくとも私たちはそう呼んでいるので）。
そんなわけでこの「プロパイロットX キャリバー400」のスペシャルエディションは、有名なマペットのカエルキャラクターに敬意を表して明るいグリーンが採用されています。しかしながら、これまでのキャラクターウォッチではオリジナルのミッキーマウス腕時計のように、そのキャラクターの両腕によって時針と分針の代わりをするのが普通でした。ですがこのカエル、“カーミット”自身は美しい文字盤の表面上には登場しません。ただし、毎月1日は例外となります…。
なんと6時位置にある小さな日付窓の中に、数字の「1」の代わりに彼の顔が浮かび上がるのです。オリスはこの日を "カーミットデー "と名づけ、着用者はパブでこの時計を見せるとき、日付調整の設定を延々といじりたくなるかもしれません。
さらにオリスは、われわれの財布のために工夫を凝（こ）らしてくれています。古いラインナップのモデルから選ぶのではなく、スマートでクリーンなラインの39mmプロパイロットXにして、加えて非常に実用的なチタンを採用しました。
内部は、同じく実績のある自社製の自動巻きムーブメント、キャリバー400で、120時間（5日間）のパワーリザーブを有しています。4600ドルという価格（日本円では、66万円日本公式サイトで確認）は決して簡単に手を出せる値段ではありませんが、極めてウェアラブルな中に遊び心と本気度が絶妙のバランスで実現されているため、売り切れた後は入手困難なアイテムとして二次流通市場で長く人気を呼ぶことになるはずです。
実際、私の住むアメリカでは初回出荷分のオリス「プロパイロットXカーミットエディション」は予想どおり、わずか数日で完売となってしまいました。ですがこの時計の場合は、現在オンラインではさらに在庫が用意されているようです。これなら、カーミットの日であろうとなかろうと関係なく、気にせず喜んで手に入れることのできる（あざとさの感じない）いいニュースです。
《spec.》
- Ref：01 400 7778 7157
- ケース径：39mm
- ケース素材：マルチピースチタン（サテン&サンドブラスト仕上げ）
- 防水性：10気圧（100m）
- ストラップ：チタン、オリスが特許を所有するリフトシステムのクラスプ
- ムーブメント：自動巻き、Cal.400、120時間パワーリザーブ
- 仕様：時・分・秒・日付表示、デイトコレクター、ファインタイミングデバイス、ストップセコンド、グリーンダイアル、インデックスとセンター針にスーパールミノバ塗布、サファイアクリスタルケースバック、高度な耐磁性、マイオリス登録によりムーブメントの保証を10年間に延長
- 価格：66万円（税込）
●お問い合わせ先
オリスジャパン株式会社
TEL 03-6260-6876
公式サイト
Source / Esquire US
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。
Edit / Hikaru Sato
