2024年のオスカー候補と呼び声も高い『異人たちとの夏』(新潮社文庫刊)を、舞台を英国に変え映画化した『異人たち(原題:All of Us Strangers)』。原作者である山田太一氏の訃報に、アンドリュー・ヘイ監督がメッセージを残しています。

「⼭⽥太⼀さんのご家族に⼼からのお悔やみを申し上げます。⼭⽥さんの作品には、多くの⼈々にとってそうであったように、私に語りかけてくる、優しく思慮深い⼈間性がありました。それは⾔葉の背後にある、芸術家の魂の反映だと確信しています。今年、⼭⽥さんに映画『異⼈たち』をご覧いただくことができ、温かく受け⼊れていただけたことは私にとって多⼤な意味がありました。私の思いはご家族と共にあります」 

the 26th british independent film awards winners room
Lia Toby//Getty Images
2023年12月3日、英国インディペンデント映画賞受賞式。左から、プロデューサー=グラハム・ブロードベント、“父”役=ジェイミー・ベル、アダム役=アンドリュー・スコット、俳優=フィオナ・ショウ、プロデューサー=サラ・ハーヴェイ、監督=アンドリュー・ヘイ、“母”役クレア・フォイ。


一般公開前から高評価続出

夫婦仲がうまく行かず離婚した脚本家・原田が、謎めいた女性・桂、そして両親の幽霊との出逢いを通じ、新たな人生を歩き出すファンタジー・ホラー小説『異人たちとの夏』は第一回山本周五郎受賞作。幼少期のトラウマに囚われた中年男性が、過去の自分と抱えている闇と決別していく成長譚は高く評価されました。小説が出版された翌年の1988年に大林宣彦監督が発表した同名作品もまた、日本映画史において貴重な独自性を放っています。そして今回再映画化された『異人たち』も、現地時間12⽉3⽇(日)に発表された英国インディペンデント映画賞では作品賞・監督賞・脚本賞・助演男優賞(ポール・メスカル)を含む主要7部⾨を独占。映画批評サイト「RottenTomatoes(ロッテン・トマト)」 で 一般公開前にもかかわらず、12月5日時点で“97% fresh”の評価を獲得しています。

これはyouTubeの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。
All of Us Strangers | Official Trailer | Searchlight Pictures
All of Us Strangers | Official Trailer | Searchlight Pictures thumnail
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原田と桂の関係性をアダムとハリーという男性二人に置き直し、両親との邂逅(かいこう)をより複雑に重層的に構築し直した本作。北米公開は12月22日(金)、英国は2024年1月26日(金)、日本は2024年春の公開予定です。

a man kissing another man on the cheek
Courtesy of Searchlight Pictures

『異人たち』 (2024 年春公開予定)

(あらすじ)
ロンドンのマンションで暮らすアダムは、12歳のときに交通事故で両親を亡くした40代の脚本家。それ以来、孤独な人生を歩んできた彼は、在りし日の両親の思い出に基づく脚本に取り組んでいる。そして幼少期を過ごした郊外の家を訪ねると、そこには30年前に他界した父と母が当時のままの姿で住んでいた。その後、アダムは足繁く実家に通って心満たされるひとときに浸る一方、同じマンションの住人である謎めいた⻘年ハリーと恋に落ちていく。しかし、その夢のような愛おしい日々は永遠には続かなかった......。

監督:アンドリュー・ヘイ『WEEKEND ウィークエンド』『さざなみ』『荒野にて』
原作:「異人たちとの夏」山田太一著(新潮文庫刊)
出演:アンドリュー・スコット、ポール・メスカル、ジェイミー・ベル、クレア・フォイ

公式サイト