ブロックバスター(大成功を収めた映画への形容)なアクション映画でスーツ姿…と聞いたなら、ジェームズ・ボンドと比較せずにはいられません。デスクで始末書を書く時間などより、悪者の手下・手先たちと銃撃戦を繰り広げる時間のほうが当然長い…ということを考えるとボンドは、非実用的なスーツを着せられた被害者第1号と言ってもいいでしょう…。よくぞそれを我慢して、重要な任務を次々とこなしてきたものだと、密かに感動すら感じています…。

 そしてこのたび、クリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』の予告編がついに公開されました。スーツ+爆発+ロバート・パティンソンのイギリス訛(なま)りという組み合わせからすれば、一瞬頭によぎるのは「これはボンドと同じ種類の映画かもしれない…」という予感です。がしかし、この映画の内容そしてスーツも、『007』シリーズとは大きく異なるものでした…。

 主演のジョン・デヴィッド・ワシントン(ちなみにデンゼル・ワシントンの長男)と共演者たちは、未来に起こりうる脅威から世界を救う(ノーラン監督らしい複雑な設定です)という難しい任務に対し、スマートな服装で次々に起こる事態に対処していかなければなりません。彼らの仕事には当然、ボンド以上とも言えるさまざまな危険が伴います。が、反射ヴェストや安全ゴーグルなどを身につけていては野暮になってしまいます。…というわけで衣装には、実用性とクールさの中間点を目指す必要があったわけです。

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映画『TENET テネット』予告
映画『TENET テネット』予告 thumnail
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 そこで登場するのが、実用性も兼ね備えたスーツです。

 ワシントンが着こなすカバーオール風のブレザーは、オフィシャルな雰囲気を有したかっちりとしたルックスです。が、その上、動きやすさも感じられることでしょう。なので会議室で着ることもできますし、暗殺者に肘打ちしても縫い目が裂けることはありません。ポケットも広くて大きいので当然、家の鍵や銃、たばこなど、攻撃態勢のCIA職員や彼が所属する怪しげな組織(詳細はまだ明かされていません)が持っていそうなアイテムだって入るのも納得できます。

 また、ノーネクタイということにも注目すべきです。風でネクタイがはためき、敵だと思って撃ったら仲間だった…ということがこのような仕事では起こり得るでしょうし…(これは勝手な妄想ですが)。ご時世的にも、ネクタイは外しておいたほうが懸命なので、これにはバッチリ納得でした。

 そしてロバート・パティンソンも、ロンドン訛りで登場します。『ハイ・ライフ 』の主演を務めた彼が着るのは、サザビーズの競売人のような堅苦しいスタイルではありません。少しダラっとしたオーバーサイズのスーツで(演劇の役者が身につけそうなスカーフを選んでいるわりには、最新の流行スタイルです)、彼の仕事にも実用性が求められることがうかがえます。彼らはこれまでのアクション映画のヒーローたちのような洗練さを残しながらも、自由に動き回れることをスタイリングからも想像させてくれるのです。

 もちろん見た目も、かなり重要です(映画ですし…)。スーツのカタチが絶え間なく変化しているこの時代、『TENET テネット』の衣装チームは複数の要素を絶妙に組み合わせ、とてもハンサムなスーツをつくり上げています。これは絶賛すべき、この映画の大きな魅力のひとつです。

 本作は2020年7月17日に米国公開、9月18日に日本公開と告知されていましたが、新予告編およびウェブサイトから公開日の記述は削除されています。この映画の公開がいつになるかは現在わかっていませんが、結末のどんでん返しに「そう来たか!」と声を上げると同時に、ぜひ作中のスタイリングにも拍手をおくってください。

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日本公式サイト

Source / ESQUIRE UK
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。