皮肉なことかもしれませんが、それが人生というものです。子どもころは汚れることも気にすることなく、毎日履いていたスニーカーは今、投資の対象になっているわけです。少なくとも、今のところはですが…。

 Dior × Nike Air Jordanのコラボスニーカーは数分で完売し、その後、元の価格の5倍で再販市場に出回るようになりました。Casablanca x New Balance「327」のコラボスニーカーは2020年11月には第2弾が発売され、コレクターの利益を最大化する確実な方法のひとつになっています。

 2020年、コロナ禍でアパレル業界が苦境を強いられる中、多くの専門家の予言にもかかわらず、この「ハイプカルチャー(イケてる最先端のカルチャーといった意味でしょう)」は急上昇してきました。そして現在、アディダスは、落札予想額$100万ドル(約1億円)とうたわれる古典的な「ZX8000」をオークションルームに格納したようです。

 しかし、そのスニーカーは単なるスニーカーではありません。それはその背景だけでなく、その素材自体も…。モデル名は「ZX8000 Porcelain」であり、Porcelain=磁器製のスニーカー。デザインは、「マイセン」とコラボレーションのよってリリースされました。

 「マイセン」とは、国立マイセン磁器製作所で製造される陶器ブランド。1708年にヨーロッパで最初に、硬質磁器を販売した老舗中の老舗です。経済的困難(世界戦争、共産主義政権下)時にも良質な陶器の製造と輸出を続け、世界で最も知られる陶器ブランドのひとつとなっています。また、磁器と中心とした陶器づくりばかりでなく、人形も名品として愛され続け、300年近い歴史を誇るマイセン磁器の中でも重要なジャンルのひとつとして、「宮廷の光景」「羊飼いシーン」「イタリア・コメディ」があります。

 そんな世界屈指の陶器ブランドとのコラボレーションと聞くと、そのイメージだけで処理するなら、アディダス オリジナルスにぴったりとは思えません。

アディダスがリリースする100万ドルのスニーカー「porcelain」
SOTHEBY'S

 しかし、実際にデザインを見てみると、芸術的で彫刻的な仕上がりになっていることが確認でき、そこに親和性を感じざるを得ないこととなるでしょう。

 2020年12月7日から「サザビーズ」に出品され(オンラインのみなのでご注意ください)、収益金は地元の若者のアートプログラムのためにブルックリン博物館に寄付されます。

 レザーの柄は手描きで、マイセンの花瓶に見られる15種類の模様が描かれた極薄の磁器単板の上に重ねられています。この花瓶は年に2本という限定生産で、ブランドの主力商品です。このプロジェクトのためにマイセンのさまざまな部門から4人の画家が採用され、スニーカーの制作には半年以上、デザインには1年以上が費やされました。つまり、これは外に履いて行って、究極のファッションスナップのために見せびらかすためのものではありません。そもそも足を通すべきですらないのです…。

これはxの内容です。詳細はそちらでご確認いただけます。

 現在は、多くのスニーカーが収集可能な投資品となっていますが、「マイセン × アディダス オリジナルス」の磁器スニーカーはこれとは異なります。このスニーカーには、ハイプカルチャーとしての価値はありません。これは芸術なのです。この一足には古典的な芸術のすべての特徴が備わっており、芸術作品として生まれてきたのです。

 この結果はある意味、スニーカーの投資としての価値の方向性を見定めるヒントにもなりうるでしょう。もし皆さんの中に、「芸術としてのスニーカーこそ欲しい!」という方がいれば、入札してはいかがでしょうか。入札はsothebys.comで、~日本標準時間2020年12月17日(木)AM2:01まで受け付けています。

入札する

※なお日本国内では2020年12月18日(金)に、市販用バージョンとして「マイセン × アディダス オリジナルス ZX 10000 C “メイド イン ジャーマニー”」が発売される予定となっています。

Source / ESQUIRE UK
Translation / Yuka Ogasawara
※この翻訳は抄訳です。