ラルフ ローレンの世界最大の実店舗であるシカゴ店の2階にある仕立て室に入っていくと、世界各国の男子トップゴルファーが集う「PGAツアー」のベテランであるザック・ジョンソン(Zach Johnson)はすでに、色とりどりのポロシャツやボタンダウンが並べられたテーブルの前にいました。ラルフ ローレンのスタッフがシャツを選んでおり、あれこれ質問をして、前とは別の色合いのブルーを持って戻ってきます。

しかしながらジョンソンは、ここへシャツを求めに来たわけではありません。彼は米国選抜のキャプテン(主将)として参加する「2023 ライダーカップ」のため、スーツを仕立てに来たというわけです。

「ライダーカップ」とは、1927年にイングランドの大富豪サムエル・ライダー氏が提唱したことから始まった、ゴルフのアメリカンツアー(アメリカ国内生まれのUSPGAツアー選手登録をしているプロたち)とヨーロピアンツアー(ヨーロッパ各国生まれのPGAヨーロッパツアー登録をしているプロたち)の代表選手による、2年に1度行われている対抗戦。2023年の「ライダーズカップ」は9月29日(金)から10月1日(日)の期間、イタリアのローマにあるマルコ シモーネ ゴルフ&カントリークラブで開催されます。

一方ラルフ ローレンは、2018年から続いている全米プロゴルフ協会との契約を継続し、今年で第44回を迎える「2023 ライダーズカップ」でもオフィシャルアウトフィッターを務めることとなっています。そこでジョンソンは、PGAツアーのプレーオフ・スケジュールの最終戦であるBMW選手権(2023年8月17~20日)に出席するためシカゴに滞在しているところ、ここに立ち寄ったというわけです。

なぜなら、ジョンソンはライダーカップ出場5回目にして、今回初めてチームキャプテンを務めることとなったから。「ライダーズカップ」キャプテンに課せられる仕事は、実は多数あります。一番頭をひねるのは、独自ランキングにより自動選出された6人に加えるべき推薦選手6人を選ぶことかもしれません。ほかにも、キャプテンとしてやらなけばならないことはいくつかあります…が、その中で最初にすべきことが、ここでスーツを仕立てることだったというわけです。

ゴルフ業界およびマスコミの間では、ジョンソンが米国選抜チームに誰を選び、また誰を選ばないか?という議論が、ツアーのプレーオフを通じてずっと交わされていました。それがゴルフに関するいちばんの話題でした。

とりわけ話題になっていたのが、自動的に選出される資格が得られなかったジャスティン・トーマス(Justin Thomas)が、「マッチプレーにおける戦績を考慮して選ばれるかどうか?」という点です。それからもちろん、LIVゴルフ(2021年に設立したゴルフ組織)のこともあります。LIV参戦ゴルファーのブルックス・ケプカ(Brooks Koepka)は今年の全米プロゴルフ選手権で優勝したことで、自動的に選出される位置にまできましたが、最終的にはあと一歩及びませんでした。所属の違うケプカの仲間の多くは、彼がキャプテン推薦でメンバー入りするのを支持すると言っています。

【ラルフ ローレンを着こなす】ザック・ジョンソンはキャプテンにふさわしい人間
WESTON WELLS

その夜に店舗の1階で開かれたカクテルパーティーでは、シカゴの人々が大勢詰めかけてマルガリータやオールドファッションドを飲みながら、トーマスの話題に花を咲かせていました。話を2階の仕立て室に戻すと、ジョンソンはローマのマルコシモーネ・ゴルフクラブで開催されるライダーカップのオープニングセレモニーで米国選抜チームが着用する、ネイビーブルーのリネンスーツの最終的な採寸を終えようとしていました。

2023年の装いは、9月のイタリアでの大会を意識したものです。2ボタン、ノッチラペルのスーツで、ナチュラルショルダー、ハーフキャンバス、生地にはラルフローレン専用の軽量リネンが使用されています。スーツに合わせるのは、今年のライダーカップ米国選抜チームのコース外でのオフィシャルシューズになっているイタリアのシューズブランド、デルトロのミラノローファーです。

そのスーツをジョンソンが店のスタッフに返した後、われわれはその階の片隅にあった、ドレスシャツでいっぱいの棚にはさまれた古い革張りのカウチに腰を下ろして、会話を交わしました。

以下のインタビューは、それを簡潔に要約したものです。


エスクァイア:あなたの役割にかかるプレッシャーが、新たな段階に入る時期になりましたね。現時点におけるストレスについて、少し話を聞かせていただけますか。シカゴにやってきてBMW選手権に参加するわけですが、あなたとしては、「よし、これから、チームのメンバーになるかならないか決まっていない6人の選手を見に行くぞ」、という感じでしょうね。

ザック・ジョンソン:現時点では、すごくシンプルだと思うよ。とにかく、幅広いコミュニケーションのラインを(完全な透明性をもって)キープして、全ての選手をこれから選出されるチームのメンバー候補と考えるんだ。

私が初めてライダーカップのメンバーになったときの資格を得るプロセスは、いまとは少し違っていたのを覚えている。私は候補圏内で全米プロゴルフ選手権を迎えて、7番か8番か9番あたりでメディナ・カントリークラブへ行ったんだけど、予選落ちしちゃって気が動転したもんだよ。つまり、自分で自分をコントロールできないような状態だったんだ。幸い、それでもなんとかメンバーに入ったわけだけれど、頑張りすぎるくらいの努力をした。だから、彼らに対する私のいまの気持ちは、「これは難しいぞ」ってところだね。

エスクァイア:つまり、メンバーが発表になっても誰も驚いたりはしないと…。

ザック・ジョンソン:透明性ということで、チームづくりに関して現時点での情報を出したところで、驚くようなものはなにもないね。つまり、みんな知ってるってことさ。それに例の賞金額の大きいやつの存在で、今年は少しユニークな状態にあることもわかっているだろう。だから、ポイントシステムの変動率が極めて重要になってくる。そんなわけで、みんなまだチャンスがあるってことはわかっているんだ。私らが検討すらしていない選手も、ひとりかふたりか3人くらいはいるかもしれない――つまり、ポイントリストのはるか圏外で、まだ代表チームのユニフォームにはふさわしくないという選手も最終的に加わるかもしれないということさ。これって間違っているかい?

ザック・ジョンソン
WESTON WELLS

エスクァイア:つまり、「2週間後の発表を待て」ということ?

ザック・ジョンソン:ぴったりの例を挙げよう。私の親愛なる友人ルーカス・グローバー(Lucas Glover)のような選手のいる。だから多くのプロに、そのチャンスはまだあるっていうことさ。

エスクァイア:時計を少し巻き戻してみたいと思います。あなたのところに電話がかかってきて、ライダーカップのキャプテンになってほしいと初めて頼まれました。その電話を受けたとき、あなたはどんな気分でしたか?

ザック・ジョンソン:キャプテンになるために必要なキャリアが、自分の経歴の中にあるかなんて思ってもないところだったよ、全くね。私はただ頑張って、自分のゴルフをプレイしようと思っていただけだし、それは今も同じさ。でも2022年の2月初め、家族と一緒にコロラドへスキーに行っていたときにeメールが届いて、それから電話がかかってきて、「ズームで話したいことがある」と言われたんだ。私はそのとき、多かれ少なかれこの話はライダーカップの新たな委員会にそのバトンを戻そうと考えているんだけど、とにかく、私はその話し合いに参加した全員から、「きみにぜひこのバトンを引き継いでもらいたい」と言われたんだ。あれはシュールな瞬間だったね。

エスクァイア:いま、あなたはそのバトンを持ってここにいるわけです。ズームでの話し合いがあって・・・あなたはどんなことを考えましたか? そのとき、あなたの心の中にどんな思いが去来したか、覚えていたら聞かせてください。

ザック・ジョンソン:私が何を考えてたかって? 私がイエスと答えて、彼らがそれを大いに感謝したっていう感じではなかったよ。彼らのほうは、「まあ、きみが引き受けてくれるとは期待していないけどね」って感じだった。でも、私は強い励ましを受けて、引き受けることになったのかもしれないね、「みんな、これは素晴らしい仕事だ」って。

それを断る理由がわからなかったんだ。私の仲間たちはそれ以前からも、「いいことを教えてやろうか。あのね、きみはきっとうまくやってのけるよ。もしその機会があれば、ぜひやるべきだ。そうすれば、その後はそういうことがもっと増えるはずだよ」って調子だった。だから、自分がずっと尊敬したり憧れたり、アドバイスまでしてくれてた人たちからの信任を受けたからには、たぶんそうするのがベストなんだろうと思ったんだ。彼らはゴルフというゲームで多くのことを成し遂げ、またライダーカップの米国選抜チームのためにも大きな貢献をしてきた人たちなので、彼らの言うことに全幅の信頼を置く必要がある。だから、私はそのことをすごく感謝しているんだ。

エスクァイア:つまり、デービス・ラブ3世(Davis Love IIIジョンソンの副キャプテン)のような人たちですね。

ザック・ジョンソン:そのとおり。タイガー・ウッズ、ジミー・フューリク、フィル・ミケルソン、スティーブ・ストリッカー、それからもっと若い選手たちもだ。「いいかい? もし、そういう機会が与えられたら絶対に飛びつくべきだよ」って言ってくれた人がたくさんいたんだ。自分ではわからないんだけど、きっと、そう言われるような何かを、少なりともやってるんだろうね。

ザック・ジョンソン
WESTON WELLS

エスクァイア:ところで、オープニングセレモニーについてです。これはプロゴルファーが最もドレスアップした姿を見る機会だと思います。あなたはゴルフウェアを着ていることが多いのですが、ゴルフウェアというのはゲームをより上手にプレイするためにつくられた専用ウェアであって、必ずしも人に見せるためのものではありませんよね?

ザック・ジョンソン:参考までにひとこと言っておくと、もっと若い選手はゴルフウェアに限らず、着るものすべてに気をつけていて(選抜チームにもそういうのがいるのを知っている)、ほんとうにすごいと思う。私は彼らのそういうところが大好きだよ。

ライダーカップに初めて参加したとき、私はオープニングセレモニーでネクタイを着用しなければならないことを知らなかった。知ってるわけがないよね? それはともかく、きみの質問に答えると、あれがライダーカップを特別なものにしているんだ。いつものプレイヤーたちとは打って変わって、少し違った姿を見せてくれる。人間らしい姿にしてくれていると思うんだ。なぜなら、ほかの仲間と一緒に、いつもとは違った光を浴びている姿を見せているわけだから…。試合のときとは違う装いでね。それがクールに見せているんだ。私らもカッコよく見えるはずさ。そこが肝心なところだからね。これは素晴らしいスーツだ、リネンだし、向こうは暑いだろうから。いまからワクワクしているよ。

エスクァイア:欧州選抜チームについて、いちばん気になることは何ですか?

ザック・ジョンソン:対戦する顔ぶれは関係ない。みんな優秀なプレイヤーだよ。トッププロばかりだし…。それにベガスが言ってるような、「誰が勝つべきで、誰が勝つべきでないか」ということも気にしていない。そんなのはどうでもいいことさ。これは試合なんだ。2年前の結果は、私らにとっては素晴らしいものだったけれど、それだってほとんど関係ないことだ。そこから学べることは確かにあるけれど、新しいチームで戦うわけだからね。これはひとつの新しい機会というだけさ。

◆出場予定選手<米国選抜>◆

  • 主将ザック・ジョンソン
  • スコッティ・シェフラー
  • ウィンダム・クラーク
  • ブライアン・ハーマン
  • パトリック・キャントレー
  • マックス・ホーマ
  • ザンダー・シャウフェレ
  • ブルックス・ケプカ
  • リッキー・ファウラー
  • サム・バーンズ
  • コリン・モリカワ
  • ジョーダン・スピース
  • ジャスティン・トーマス

Source / Esquire US
Translation / Satoru Imada
※この翻訳は抄訳です。